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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Overflow ~Side Tifa~ 1

ACC前、シリアスです。大人描写はラストのみになります。

裏度数【★★☆☆☆】




Overflow 〜Tifa〜 1


巨大な倉庫内に続く薄暗い通路をクラウドの半歩後ろから付いていく。埃っぽい空間が目新しく、一面に積まれた荷物を首を上げ見回した。奥で何かしらの作業をしていた人物がこちらに気付き軽く手を上げるが、クラウドの背後にティファの存在を認めるとその目はまん丸に見開かれていく。

「おい、クラウド。聞いてねぇぞ!」

罵声を浴びせられたクラウドは彼を無視してスタスタと奥へ進んでいく。すれ違いで男は足早にティファの正面へとやって来た。

「あのぉ...クラウドとのご関係は?」

片手で後頭部をしきりに掻くおちゃらけた態度にティファは緊張を解き口元に手を当て肩を揺らす。「そうだなぁ、戦友ってとこかな」聞くなり男は目を輝かせ、ふざけた素振りでクラウドの首根っこを後ろから締め上げた。

「可哀想になぁ、クラウド。オ・ト・モ・ダ・チ、だってよ」
「黙れ。さっさと案内しろ」

二人が足を踏み入れた先はコンドルフォート近辺に位置する倉庫街で、クラウドがその出掛けの誘いを持ちかけたのはつい昨日のことだった。



おつかいを終え裏口から姿を現した彼が恐る恐るカウンターに置いた物を見て、ティファは逆に申し訳ない気分になる。ヒントが足りなかったかな?う~ん、惜しい...

「クラウド、これレタス」

だがクラウドは「だ、だよな。コッチだと思ったんだ」と慌てて背中に隠していたキャベツを即座に差し出してくる。予想外のコミカルな切り返しに瞳を一度パチクリと瞬いたティファは、次の瞬間せきを切ったように笑いだした。

「そんなにおかしかったか?」

お腹を抱えたまま会話もままならないティファにクラウドはおさまりが悪そうにするが、すぐに碧い瞳は柔らかなものへと変わっていく。

「反則だ」
「...え?」

目尻に浮かんだ涙を人差し指で拭いながらティファはようやく体勢を立て直す。クラウドは長らく胸につっかえていた懸念事項に話題を移した。

「で、いつ休む気だ」
「あ...」

開店の日から休み返上でがむしゃらに働き続け、いつを定休日にするかも考えていなかった。ティファは少しの間頭を巡らせ早々に決断を下す。

「じゃあ、水曜かな。お客さん一番少ないから...」
「よし、なら明日だな。ちょっと付き合ってくれ」

その発言が意味するところを読み解けずティファは首を傾げる。見つめた先のクラウドの口角は、珍しく高い位置にあった。

「連れて行きたいところがある」



「釘を打ち直して塗装すれば見れた感じになるだろ」

元々はそこそこ値打ちのありそうなダイニングテーブルとチェアは、年月を経てなかなか趣きのあるアンティーク調に仕上がっている。拾ってきたパイプ椅子だのひっくり返したビールケースだのを調度として使用している新生セブンスヘブンには余りある贅沢品だ。「誰がやるの?」そう言いティファはグルリと周囲を見回す。

「だってすごい数だよ、コレ。運ぶのだって一苦労...」
「俺」
「...悪いよ」
「なんでだ?時間なら腐るほどある」

ティファの反応を悪くないと解釈したクラウドは、早速売主との交渉に入る。

「どうせ拾い物のガラクタだろ。格安で譲れ」

ナイフでも突きつけかねない横柄な態度にティファは冷や汗をかくが、彼の交友範囲内であるこの場は任せることにした。



ライフストリームによる被害が比較的少なかったのであろう。そのダイナーはメテオ厄災前とさほど変わらない営業を再開させていて、ティファはチョコボの手綱を引くため酒の飲めないクラウドを差し置き一杯だけカクテルを嗜んでいる。洗練されたグラスに注がれた色鮮やかなアルコール飲料に気分は上がり、食材だけでなく店の家具まで探してきてくれた彼に丁重に礼を伝えた。

「あんな素敵なお友達まで作っちゃって」
「奴は友達じゃない。ただの取引先だ」

あの気さくな男からクラウドは車などの移動手段をレンタルしているらしい。金銭の授受が生じる限り関係性に一線を引こうとしているのかもしれない。今回の件は彼をつてに家財の棚卸商まで辿り着いた結果なのか、本日あの場にいた複数の人物の相関図は把握しきれないまま終わった。何にせよ、しっかりと自らの世界を広げ逞しい交渉力まで身につけつつある成長の軌跡にティファは頬杖を付き感慨深くため息をつく。

「なんだか息子の成長を見守る母親の気分」
「俺はティファの息子じゃないぞ」

もちろん冗談のつもりだったが運ばれてきた料理を腹に掻き込むクラウドは面白くは捉えなかったようだ。続けて彼は本気とも冗談とも取れない調子で言う。「今のところ友達はアイツぐらいだな」広場の房に繋がれ餌をついばむ黄色い怪鳥に向け、窓越しに顎をやる仕草にティファは呆れ顔だ。手塩にかけて育てあげたチョコボ達は戦いの終わりと共に野に放ち、今いるのは手元に残された最後の一匹だった。

「喋らないじゃない」
「そこがいいんだ」
「悪かったねぇ、やかましくて」

クラウドは口をモグモグさせ、咀嚼中の食べ物を飲み込むため間合いを取る。

「ティファは友達じゃないだろ」

瞬間、温度を変えた空気にティファは口をつぐみ神経を張り詰めさせる。それまでの軽口は止み、暫し沈黙が続いた。「そろそろ出るか」食事を終えてすぐ、余韻に浸る間もなくクラウドから帰途につく意向を言い渡される。先につれない態度を取ったのはこちらな癖に、寂しさを覚えた自分をティファはどうしようもなく嫌になった。店の出口をくぐったティファにクラウドは振り返る。

「もう少し一緒にいないか?」

思いも寄らない誘いにティファは目を瞬く。打って変わって明るさを取り戻しだす顔は、今度は素直に「うん!」とほころんだ。

「でも、どうする?もう一杯いく? あ、でもクラウドは飲めないのか...」

考えを巡らせ始めるティファを他所に、クラウドは咳払いで軽く喉を通すといつになく真っ直ぐにティファを見つめる。

「...ホテルじゃ駄目か?」
「.........え?」


「えぇぇえぇえっっっ!?」


目を白黒させ動転されクラウドはポリポリと頬を掻くが、むんずと彼女の手を掴むと返事も聞かずに歩きだす。そして飲食店で賑わう通りを抜け街の外れに向け迷うことなく進んで行った。辺りの雰囲気がガラリと変わったのを察し、ティファは堪らずギュっと瞳を瞑りなすがまま先導について行く。どこをどう歩いたかもわからないまま、夜の闇にひっそりと佇む建物の一室に通された。



意外と普通なんだな...
通常の宿とさほど変わらないこざっぱりとした内装にひとまず安堵をする。狭い空間にはベッドしかないことに気付き、居た堪れずに彼に背を向け外に漏れ出そうな鼓動を必死に宥めた。程なくして何か話さなければと振り返ると、その身体は思いの外近い所にいた。

(え...?)

唐突に絡みついてくる腕。鼻先に吐息を感じた直後に唇は塞がれた。途端に鼻腔に流れ込んでくる彼の香り。そのまま角度を変えて深められる口付けに逞しい両肩に置いた手の力が少しずつ抜け、徐々に彼に体重を預けだす。だが腰に回っていた手が下がりお尻に指を埋められた際に我に返り、「んっ、ちょっと!」と抵抗した。クラウドはティファを無視して腕力を緩めない。

「待って!!」

力任せに付き飛ばし、「シャワー浴びてくる!」と浴室へ逃げ込む。鍵をかけ、はぁ...と扉にもたれズルズルと床に座り込んだ。





Overflow ~Side Tifa~ 2、へ続きます。





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