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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

cement hands


本編直後。


まだまだぎこちない二人。
バレットが去り、更にぎこちなくなる二人。


マリン視点です。








私の前には、その間に少さな空間を置いた黒色と金色の背中。

私はその隙間めがけて走り二人の腕に飛びつくと、そこに思い切りぶら下がる。

「こら!またやったな?」
「もう、いきなりはダメって言ったじゃない!」

二人は怒るけど、私は懲りない。

だってその後、二人は決まって私の手を強く握ってくれるから...


cement hands


“マリン、‘おじゃま虫’ じゃないのかなぁ?”


“どこで覚えたんだ?そんな言葉”
そう顔に書いてギョッとする父ちゃん。
だけどすぐにニヤリとし、私の頭に手を乗せる。

“俺はむしろ、マリンがいなきゃダメだと思うんだ”

“あの二人は ‘不器用’ だからな”

“ぶきよう?”

そう繰り返す私には答えず、父ちゃんは声を張り上げる。

“あいつらの事、任せたぞ!!!”


頼りにされるとやる気が出る。
だから今、私は元気よく宣言した。

「ちゃんと、ここんちの子供になるからね!」

きょとんと顔を見合わせる、ティファとクラウド。





ティファはクラウドが好き。

ちゃんとは聞いてないけど、わかる。
だってクラウドがお店に来た日から、ティファはますます綺麗になった。

“そんなんじゃないさ。ティファ、あげる”

クラウドから渡された白いお花に、ティファは毎日挨拶する。

あの日お花を受け取ると、ティファはハサミで下の先っぽをチョキンと斜めに切った。
ビックリする私に、とっておきの魔法のように言う。

“こうすると、お水をいっぱい吸って長持ちするのよ”

そして一輪挿しに、おまじないのようにお砂糖を加えた。

“おさとう?”

また目を丸くする私。
私はお砂糖を料理以外に使うのを見た事がない。

“えっと、還元剤っていってね?
...って、それじゃわからないか。
お砂糖には、バイキンをやっつける力があるの”

先っぽチョキンも “カンゲンザイ” も、何が何だかわからないけど、これだけはわかる。
ティファはそのお花が大切だ。
それは、好きな人がくれたから...





「もうすぐ出来るから、そこ片付けよっか」

カウンターでおはじきを色ごとに並べていた私は「うん!」と頷く。
ティファはさっきから、鼻歌混じりでご機嫌だ。
丁寧にお鍋の中をかき混ぜる。

今日の夕ご飯は、ティファの特別。
前にそれを食べたクラウドが言ったから。

“これ、美味いな”

ティファは少しほっぺを赤くしクラウドに微笑む。

“また作るね”

クラウドは照れ臭そうにして何も言わなかったけど、その後何回もキッチンを往復し、沢山おかわりをした。
それを見て、私はあやふやだった二人の関係に自信を持つ。


「クラウドとティファは、“コイビト” 同士なんだよね?」


ティファは持っていたオタマを危うく落としそうになる。
そして目を真ん丸にして私を見つめた。

「誰から聞いたの、そんな言葉...」

父ちゃんとそっくりのその反応に、私はますます得意顔だ。

「きっとジェシーね」

ティファはもういないジェシーに文句を言い、冷蔵庫からサラダを取り出しながら寂しそうに、だけどハッキリと言った。

「違うよ」

私はショックで何も言えない。

そうなの?
それじゃクラウドはティファの事、好きじゃないの?
ティファの、“カタオモイ” なのかな...





「クラウド、遅いね...」

テーブルに座る二人の前には、ずっと静かなままの携帯電話。
もういつものご飯の時間をとっくに過ぎたのに、クラウドは帰って来ない。

「何か用事が出来ちゃったかな...
先に食べよう?マリン」

ティファは諦めてお鍋に向かう。
その背中を見て不思議に思う。
どうしてティファは、自分からクラウドに電話しないんだろう。





ティファと二人で食べる、クラウドの大好物。
ティファはいつもの半分の量を、ゆっくり食べた。
きっともう半分は、後でクラウドと食べるんだ。

クラウドが帰って来たのは、もうお風呂に入る頃だった。

「遅かったね」

お店のカウンターでティファが言うと、クラウドは小さく「え...?」と言い、慌ててポッケから携帯電話を取り出した。
そしてそれを開くと申し訳なさそうにティファを見る。

「ごめん...メール、送信ミスしてたみたいだ。
出先の道路が事故で混んでて、飯は外で済ませてきた...
もしかして用意してくれたのか?」

ティファは慌てて笑顔を作る。

「ううん!
遅いなぁと思って、すぐに二人で済ませたし、大丈夫!」

「そうか?ならいいけど...」と言いクラウドはスタスタ二階へ行ってしまった。
その背中にほっぺを膨らます。

ティファがクラウドの分を用意してないわけ、ないのに!
今日はあの “また作るね” の日だったんだよ?
ティファは頑張って作ったんだよ?
半分しか食べてないから、まだお腹が空いてるんだよ?


......クラウドの、バカ!!!





お風呂から上がり、喉が渇いてキッチンを目指す。
いつもティファと一緒に入るけど、ティファは顔にパシャパシャしたり髪を乾かしたりで、あと30分は忙しい。
台所へ行くと、冷蔵庫の隣にクラウドの背中があった。

「何してるの?」

そう聞くと、口に人差し指を立て “シーー” をする。

「ティファには内緒な」

私と、ティファが半分しか食べてない、ほぼ満タンのお鍋を開けると、クラウドはそれをお皿に並々とついだ。
カウンターで黙々とそれを食べる。
そしてお皿を綺麗に洗い、またさっさと二階に上がってしまった。





「マリン、ゆっくりでいいからね」

お皿を両手で受け取り、バランスをとって歩き出す。
行く先のおじさんはヒヤヒヤしてたけど、それを無事テーブルに置くと笑って頭を撫でてくれた。
“ちゃんと見てた?” そう思い振り返ると、クラウドも微笑んだ。

今も昔もお店は混んでいる。
昔と違ってティファに仲間はいないから、沢山お手伝いするって決めたんだ。

「クラウド、お風呂に入ってきたら?」

そう言いティファはクスクス笑う。
ご飯を終えたクラウドは泥だらけ。
今日はモンスター退治をして来たんだって。

「そうだな」

自分の体をチラッと見て、言われた通り立ち上がる。
「ご馳走様」そうシンクにお皿を置くと、クラウドはそこに立ち止まった。
ティファはお料理に夢中で気付かない。
クラウドはカウンターの外にグルリと目をやり、決心した様に二枚の紙を取り出した。

「なぁ、これ...今度の休みに行かないか?」

ティファはフライパンから目を離し、クラウドの手元を見る。

「...映画?」

「今日仕事を手伝った人がくれたんだ。
無駄にするのもなんだしさ」

だけどティファは戸惑った顔をして、すぐに料理に目を戻した。

「でも、マリンがいるし...」

5メートル先のティファを少しだけ睨んだ。
最近お友達が出来た私は、休みにしょっちゅう長い時間外へ行く。

「そっか。そうだよな...」

クラウドは手を引っ込め、それを頭にやった。
しばらくそこにいたけど、ティファの台詞でお風呂に向かう。

「せっかくだし、クラウドだけでも観てきたら?」


......ティファも、バカだ。


クラウドの机の端に置かれた二枚の紙切れは、1ミリも位置を変えずに転がされたまま。
やがて日に当たってカサカサになり、表にあった期限は切れた。





(ティファ、寝ちゃったかな?)

部屋を出て見上げると、真っ暗な階段。
だけど下の階段の先がぼんやり光るのを見て、安心して階段を降りる。

お手洗いを済ませ、なんとなくその光に向かった。
お店に続く扉の隙間には、見慣れた二人。

「そろそろ寝るかな」

クラウドが立ち上がる。
慌てる私。
けどクラウドの足はティファの声で止まった。

「? クラウド、何か落ちたよ?」

「ん?」

ティファはかがんでそれを拾う。
あれは.........レシート?
目を見開き「あ...」と小さく声を出すティファ。
クラウドは慌ててそれをティファの手から奪いとる。

「貰ったんじゃ、なかったんだ...」

クラウドは決まり悪そうな顔をして何も言わない。
ティファも下を向いたまま何も言わない。
二人はずっと黙ったままだ。

しばらくして、小さな声がした。


「............ありがとう...」


クラウドはゆっくりと一歩前に進む。
ティファの肩にそっと手を伸ばした。
そしてもう一方の手を背中に回す。
ティファは俯いたままだけど、そのおでこはノロノロとクラウドの肩に辿り着く。

二人は体をくっつけたまま、ピクリとも動かない。

「...ティファ?」

クラウドの声を合図に二人は少しずつ動き出す。
そしてほんの一瞬だったけど、クラウドの唇がティファの唇をかすめた。


(やったぁ!!)


私から見えるのはティファの顔だけ。
それは泣きそうだったけど、クラウドの肩にくっつけて幸せそうにも見えた。
きっとあの大きな背中も、今とっても幸せなんだ。

抜き足差し足で部屋に戻った。
ドキドキする心臓の音を隠すよう頭から布団を被る。
そしてあやふやだった二人の関係に、やっぱり自信を持った。

二人は “ぶきよう” なだけなんだ。

だってジェシーが言ってたもん。

“マリン、‘恋人’っていうのはね。
お互いの事が好きで、キスしたり抱きしめ合ったりする二人の事を言うのよ”





私の前には、その間に少さな空間を置いた黒色と金色の背中。

いつもの様に、その隙間を目指して駆け出した。
でも今日はぶら下がるんじゃない。
二人の手を取り、それを引っ張りくっつける。

「おっ、おい...!」
「ちょっと...マリン!」

顔を真っ赤にして慌てる二人。
必死に引っ込めようとするけど、私は目一杯の力を込め、ギュッと二人の手のひらを押し付けた。


くっついたまま、離れなくなっちゃえばいい。


ほっとくとすぐ離れてしまう、二人の “ぶきよう” な手。
でも本当は、触れていたい。
だからこれは私からのおまじない。


いつかは二人の手が、自分から素直にくっつきますように...


******************


cement hands=不器用な

何故 “セメント” な “手” なんでしょうね。
この度は文字通りマリンにセメントとなり、二人の手をくっつけてもらいました。

子供って、こういう風に言葉を覚えていくんでしょうか。
このケースは教育上よろしくないですが...

拙宅の二人は獣やら4歳児やらに、はっぱかけられまくりです。
とりあえずAC前までは。




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