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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Secret Frame lll

CC時代のザックスとクラウドで、クラティです。



Secret Frame lll


カードケースに忍ばせ肌身離さず持ち運んでいる光沢紙をクラウドは慣れた手付きで取り出した。ヨレヨレにくたびれたそれは破れないよう縁をセロハンテープで補強されている。見つめた先には五、六歳くらいの幼児が複数人写っているが、意識を払うのは左端にいる小柄な少年と右端で笑顔を見せる黒髪の女の子だけである。

記憶にも朧げなスナップショットはティファと写っている奇跡の一枚で、それ以外に彼女の写真は持っていない。同郷の男子達は村を経つ際に皆ティファにツーショットをせがんでいたが、自分がそんな事を言い出せる筈もなかった。端と端という距離に切なくなるが彼女の顔だけは忘れたくないクラウドにとってはこんなものでも宝物で、面影はあるものの別れた時よりふっくらとした丸顔や幼いおかっぱ頭はそれはそれで貴重である。

突然フッと指先を離れ宙に浮いた写真に一瞬何が起こったかわからなかったクラウドは、すぐさま「返せ!」とそれを奪った友人に牙を剥く。「お〜、年季入ってんなぁ!」身の上につき語らない少年の心の内を覗けるチャンスとばかりに興味津々のザックスは、彼より頭一つ大きな身長を盾に取りスナップを高く持ち上げまじまじと観察する。だが写っている対象のあまりの年齢の低さにすぐに幻滅した眼差しをよこした。

「...クラウドってば、ロリコン?」
「ち、が、う!」

むうと眉を顰めたザックスは改めて集合写真に連なる面々に目を這わせ一つの案にピンとくる。「ピ。  ピ。  ピ...」彼の指が一人一人を指差しルーレットの様に回る。「...ピ!」無骨な指が一番の美形である少女の所でピタリと止まった時、クラウドは動揺で顔がカッと染まった。ザックスは「ビンゴ?」と得意げに鼻を突き出してくる。クラウドは若干の抵抗を感じつつも「違う...」とブスっと答えた。

「えーじゃあ、こっち?」
「違う」
「おま、まさか男...「違う!」

ことごとく否定をされ暫し考え込んだザックスは、「そうかそうか、クラウド君はB専だったか。好感度高いなぁ。もしくは男好き!」とクラウドの肩を憐れむようにポンポン叩き写真もポイと放り返してくる。そのまま場を立ち去ろうとする背中に「...右端に決まってるだろ」と蚊の鳴くような小声が届き、ザックスはニンマリと振り返った。

「まったく、最初から素直に認めれば良いものをお前は...」

嬉しそうに背をバンバン叩かれクラウドはその場に崩れ落ちた。生まれて初めてこの想いを他人に明かしてしまった...十年超に渡り誰にも、母親にさえひた隠しにしてきた感情だったのに...
打ちひしがれるクラウドは、「ふぅん...まぁまぁ良いけど、俺の彼女には敵わないな」というザックスが発した聞き捨てならない一言にピクリと眉を傾ける。

「いや、それ十年も前の写真だぞ。今はもっとずっと...」

勢いに任せ言いかけたクラウドは一度思い止まった。しかしそこで発言を止めるのは不自然極まりなく、今はその先を口に出しても問題には繋がらない。「...ずっと可愛い」思い切って口に出してみると再び顔面にドッと血が昇った。そんな褒め台詞を舌に乗せたのも初めてである。ウブな反応に笑いを噛み締めるザックスは「まっ、そうであっても俺の勝ちだな!」と根拠もなく押し切ろうとする。

「なんでそうなるんだよ...ティファはスタイルだって抜群だし、料理もすごく上手くて、優しくて...」

あらら、今日は随分とお喋りだな。名前まで言っちゃってるよ、よっぽど悔しかったのね...
内心笑いの止まらないザックスは一歩も引かなそうな姿勢に根負けし、「しょうがないな。それじゃ俺の彼女とクラウドの彼女、おあいこな!」と折れてやる。“彼女” という単語に過敏反応するクラウドは、悪くない響きに真実がバレようもないためちゃっかり訂正をしない。

少々喋り過ぎたと思うが、「なぁ、飯行かないか?」と話題が終息しそうな流れにクラウドはホッと胸を撫で下ろす。と、その時メッセージの受信を知らせる音が二台のモバイルから同時に鳴り響いた。件名には『MISSION no.S-268-20XX』とあり週明け以降の配属であるとわかる。

     ◾️任務地:ニブルヘイム
     ◾️ソルジャークラス1st:セフィロス、ザックス・フェア
     ◾️一般兵:クラウド・ストライフ、...
          ※本日17時にミーティングのため本社ビル57階会議室に集合。以上

文面を一読した二人の内、一人が凍りついた。真っ青に青ざめるクラウドに、ザックスは「楽しみだな、クラウドの “彼女” の “ティファ” に会えるのが」と二箇所を殊更に強調する。先程までの威勢はどこに姿を消したのか、クラウドは一転弱々しく懇願した。

「頼む...忘れてくれ、今言ったこと全部...」

...あんな写真しか持ってない相手が彼女の訳がないだろ。
クラウドの見え透いた嘘など全てお見通しのザックスは、彼の面子を保つためにも近場で人気のステーキ定食大盛り一回分で口封じに応じてやろうと忍び笑うのだった。


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