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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Crimson Labyrinth 2

Crimson Labyrinth 1、の続きです。



Crimson Labyrinth 2


「くっそ〜、足場が悪いだけでこんなキツいなんて」

頬を伝う汗を手の甲で拭うユフィの顔が歪んできた。誰よりも軽い彼女の身のこなしを、今はぼってりと足裏に纏わりつく泥が妨げている。

「はぁ...」

靴底を岩に擦り付け、こびりついた厚みのある土を落とす。ミスリルマインやギ族の洞窟の方がまだ開放感があった気がする。低い天井と迫り来る壁。酸素の薄い籠もった空気。

“おい、君達。この先は足場が相当悪いぞ。あんたはともかく、その女の子達は...”

一時間ほど前、行手から現れた冒険者達から警告を受けた。

“この先に人はいたか?”
“いや、俺達はすぐに引き返して来たから...だが人気はなかった”

このまま奥に進むか、右に折れるか。これ以上右手に流されるとシド達の進路とぶつかる可能性があった。歩み易く人の気配がする道を探しても意味がない。かつ、現在捜索中の探検家は地元民であり、熟練度も高い。となると彼が取ったろう道は...

意見を仰ごうと背後の二人を振り返る。

“アタシはへーき”
“クラウド、行こう”

全会一致とわかり道なりに進んで行く。だが余裕を保っていられたのは三十分程度だった。体力には自信のあるクラウドも酸欠を起こしかけ視界が霞み始める。とその時、真後ろを歩いていた体が壁によろけた。

「エアリス!」
「ごめん、立ちくらみ」

肩を支えてやりながら決断する。ここから引き返すだけでも数時間。

「二人とも、今日はここまでにしておこう」

ポケットをまさぐりPHSを取り出した。何度見返してもそこに電波はない。

無事...だよな?
ふと脳裏に浮かんだ顔。だがそれはすぐに紅いマントに覆われ、心がザラリと嫌な感じに撫でられる。な、何考えてるんだ俺は。曲がりなりにもアイツは仲間だぞ。首を振り邪念を追い払おうとした時、地面に妙な物を発見した。

「...ん?」



ほぼ同時刻に限界を迎えたらしい残りの二チームとは入り口ですぐに落ち合うことが出来た。

「無茶じゃねぇか?道端に落っことした米粒探すようなモンだぜ」
「このまま闇雲に探しても...何か手掛かりがあれば...」

見るからにくたびれ肩を落とす彼らにはこれといった成果はなかったらしい。クラウドは自ら書き足した手書きの地図を広げ一点を睨み、指差した。

「この分岐点で血痕を見つけた」

モンスターに嗅ぎつけられるのを恐れてか、しばらく点々と続いていた血の跡はある地点でパタリと消える。

「声を上げたんだが返事はなかった。ただ相当な量で、まだ生乾きだ。そう遠くへは行っていないと思う」
「...いるかも知んねぇな、ここいらに」
「ああ。明日この周辺から三チーム総出で手分けしないか?」
「賛成!」
「酸素が必要だ、買って行こう。モンスターも相当の強さだ」

方針が前向きにまとまると疲れ果てていたメンバーの顔に希望の色が差し込んだ。ふと気付くとティファが物言いたげに視線を送ってくる。

「流石だね」
「...俺は暗がりでも目が利くからな」

照れ臭さをやり過ごそうと、気にかかっていたことを聞いてみた。

「...どうだ、上手くやれたか?」
「うん、全く問題なし!ねぇねぇ、聞いて。それどころか凄いのヴィンセントって!!」

突如揚がった名前にクラウドの胸は小さく跳ねる。

“ティファ”

何度か戦闘をこなした後、ヴィンセントはティファを呼び止める。

“見ていて思ったが...お前は蹴りの時、軸足が内に入るな。矯正しないと痛めるぞ”

専門的かつ的確な指摘に驚いた。それは過去にも師匠から再三注意され心していた点であったのに、日々の繰り返しの中でおざなりにしてしまっていたらしい。接近戦だと彼は武器も使わず体術で敵を薙ぎ倒す。その打撃も蹴りも、軸のブレない美しいものだった。今しがた受けた助言で確信を得たティファは心を決め、この五年間自分を苦しませ続ける伸び悩みを解消しようと試みる。

“あの...あのね。私、きちんとした修行を二年しか受けられてなくて...”

「今日この後、ちょっとだけなら稽古つけてくれるって!」

両手のひらを胸の前で合わせ破顔するティファに、何故かクラウドの口は乾きを覚える。

「へぇ...」
「それにとっつきにくいのかと思ったら、案外話しやすかったんだ、彼」
「ふぅん...」
「ティファ」

遠い薄暗がりに佇む男は面倒そうに「早くしろ。陽が沈むぞ」と顎をしゃくり指図する。「は、はい!」とティファはクラウドを置いて奴の元へ駆けて行った。

「お前は力がないが身体が柔らかい。しならせてタメを作れ。蹴ってみろ」

ヴィンセントが掲げた拳に向け上げられたハイキックに躊躇いもなく手が触れる。

「手前から順に...そうだ、膝からだ。鞭の様なイメージを持て」
「膝下はギリギリまで隠せ。伸びてくるように相手に錯覚させるからな」

二人の世界に入り込む両人を遠巻き眺めクラウドは内心毒づいた。軸足の向き...ね。どうせ俺は気付かなかったよ。ましてや手ほどきなんて出来っこない。稽古とはいえあんな風にベタベタ触る必要あるのか?やましいことなど一切ない筈のやりとりに無性に苛々する。

「ヴィンセント!オイラにも何か教えてよ!」
「......お前は本能のまま動け」
「ええ〜!?」

構って欲しいのかナナキはティファの膝下にじゃれつきだす。コイツとだったらなんとも思わないのに...
収まりの悪い感情を追い払おうと髪をグシャグシャやり、クラウドは体の向きを変え宿屋へ向けその場を後にする。



「ああ、もうヘトヘト」
「オイラもお腹減ったぁ!」

他の面子よりやや遅れ姿を現した彼らを、複数の鋭い眼光が待ち受ける。

「ヴィン様ぁ!」
「お帰りなさいませ!!」
「ヴィンス様、お疲れ様ですぅ!」

かれこれ三日目となった出迎えにヴィンセントは眉間をしかめ、失笑するティファはそそくさと宿の三姉妹に取り囲まれる男を置いて行く。

「ねぇ、ティファ。何でヴィンセントは女の子にモテモテなの?」

食事が給されるのを待つ間、ナナキが興味深そうにティファに聞いた。食堂のテーブルにつき、ティファは人差し指を顎に当て彼に伝わりやすい言葉を探す。

「ん〜〜......彼、とってもカッコいいのよ。人間の中では」
「どこが?」
「んっとねぇ。まず、背がとても高いでしょう?」

少し離れた斜向かいで先に食事を掻き込んでいたツンツン頭がピクリと揺れる。

「なるほど。確かにオイラ達にとっても雄の体の大きさは決定的だね」

“決定的” あたりで尖った金髪がまたピクピクと蠢いた。「あとは、こう...目元がキリっとしてるって言うか」と自らの目尻を指で釣り上げるティファ。

「そんなの、バレットだってクラウドだってキリっとしてるよ」
「ナナキには違いが難しいよねぇ」
「あの...」

肩越しに声をかけられ振り向くと、ティファの真後ろに例の三姉妹が思い詰めた顔で迫っている。

「ヴィンセント様とティファさんは...御兄妹なんでしょうか?」

それを聞き、言われてみればとティファは納得する。高身長に加え、黒いストレートの髪。そして赤みがかった瞳。偶然とはいえ装備品の色までお揃いの二人は他人の目にはそう映るのかもしれない。ティファが否定すると女達は顔面蒼白になりその場にヘナヘナとなだれ込んだ。

「やっぱり......恋人同士なんですね...」
「は?あ...え?   違う違う!!」
「そんなにムキになって否定して...」
「...怪しい」
「本当に違うんだってば...」

怨念めいた三つの視線が突き刺さりティファは居心地が悪そうだ。揉みくちゃにされたヴィンセントはウンザリしながらティファの隣の席につく。

「昨晩、風呂の間あの内の一人が背中を流しに来た」
「...へ?」
「もう一人はバスタオルを持って待ち構えていた」
「えぇえ!?」
「最後はベッ...「わわわ、もういいもういい!」

「大胆なんだね、あの子達...」ティファがまじまじと振り返ると恋する乙女達からキッと睨み返される。

「ああ、なんか変な誤解されてる...ごめん...」
「なに、ティファの様な美しい女性と恋人に間違われるとは光栄だ。如何わしい夜這いもおさまるかもしれんしな」
「う、美しいって...ヴィンセントってそういうこと言えちゃう人!?」
「事実を述べたまでだが...」

突如ズンと頭上にのしかかる重みに首が真下にカクッと折れた。夕食を食べ終えたユフィがクラウドの頭頂で腕組みをしてのしかかる。

「おろ〜、クラウド。両手に花の片方、奪われちゃった?」

グググと頭を元の位置に戻し「何言ってんだ?俺が普段ティファと組んでるのはパワーバランス以外の何でもないぞ」と淡々と返す。うわコイツ、首180度回転させたよ...ユフィは向けられた無表情にたじろいだ。

「ふむ。確かに絵になる二人ではある」

組んだ指に顎を乗せるエアリスが、ティファとヴィンセントを見つめ率直な感想を述べる。どことなく気の合いそうな男女はこの数日で誰の目にもわかるほど急接近していた。

「ああ、ビックリした」

パタパタと手のひらで顔を仰ぐティファ。なんで赤くなんかなってるんだよ。カッコいいなんて言って...アイツのこと、好きなのか?

終わりの見え始めたはずの冒険。それに反してドロドロと渦巻く黒い感情の出口は見えなくなる一方だ。





Crimson Labyrinth 3、に続きます。



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