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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Late Spring ~後編~

Late Spring 前編、の続きです。
※ヴィン×ユフィ前提です。


Late Spring ~後編~


今宵もダイナーセブンスヘブンは盛況で、幼い二人と店主との連携も絶好調だ。常連の集いに最近晴れて成人となり以前にも増し頻繁に顔を出すようになった旧友の来訪が重なり、料理を振舞う腕も鳴る。

「ねーねーなんかないのぉ?喧嘩してるとかさぁ」
「はぁ?」

リキュール、こっそり薄めてるんだけどな...一時間も経たずして絡み酒を発症させる忍者娘に嘆息が出る。金曜日だから気が緩んでるんだわ、これは早めにヴィンセントに連絡しておくべきね。

「新婚さんでしょ?結婚して初めて “こんなはずじゃなかった〜” みたいなサ」
「新婚って...もう随分経つじゃない。そもそも何年も一緒に暮らしてるんだし、普通よ普通」
「ちぇー...」

つまんないの!それじゃユフィちゃんの出番がないじゃんか...
声に出そうものなら張り倒されそうな不平はすんでのところで押し留める。こちらに背を向け巧みにフライパンを操るティファの左手に目をやると、薬指には鈍い光を放つシルバーのリング。それと同一のデザインのものを線の細いアクセサリーは好みではなさそうな男は意外にも律儀にはめ続けている。

「つまんないの...」

両手の頬杖が支える上向いた唇から放たれた呟きは、今夜の目玉料理が鉄板の上で踊る音にかき消された。
とうとう収まるところに収まっちゃったんだなぁ。無論本気でそれを嘆いている訳ではないが、手を焼いた二人が自分を置いて独り立ちしてしまったような、大人になってしまったような...家出だのなんだの、顔を出す度にトラブルだらけの一家にちょっかいを出すのはある種趣味であり、使命でもあると自負していた。

「しょうがないだろ、忙しい時間なんだから」

額に汗を滲ませあくせくオーダーを取るデンゼルが、ティファに相手をされないことが不満と勘違いをしたのか唇を尖らせる。

「ねぇ、アンタ。あの二人ってなんか問題ないの?」
「ええ!?なに、いきなり...」
「あ、ねぇ。デンゼル、アレは?」

てんてこ舞いにも関わらず首を突っ込んできたマリンの横やりにユフィは食らいつく。おっ、やっぱなんかあんじゃん!
深掘りをしようと身を乗り出したさなか、来客を知らせる鈴の音がカランと鳴り響き、その正体が判明するとユフィは心中激しく舌打ちをする。相変わらず血色の悪そうな男は帰宅したてに似つかわしくない深妙な面持ちで奥へと進んでくる。盛り付けのために脇の皿に視線を移したティファが主人の気配に気が付いた。

「お帰りなさい、クラウド」

“何年も一緒に住んでいる” そんな主張の割にいつまでも初々しい微笑み。もしも自分が男だったらこんな挨拶で出迎えられる生活は理想であろう。次元が違い過ぎて最早僻みなど一切沸かない程、この年上の友人はやはり美しい。

「あ...ああ、ただいま」

一瞬泳がせた目の焦点を強引に戻し口の端を吊り上げた笑みは奇抜この上ないが、性分を考慮に入れて盛大にオマケをつければギリギリ合格点。すぐ横で目を光らせアラ探しをしていたユフィはモスコミュールに刺さっていたストローを面白くなさそうに宙で弄ぶ。

一方のクラウドはファーストミッションを完遂した事に胸を撫で下ろす。長期で家を空けると途端によそよそしくなり雪解けまで長時間を要する自らの難点を克服しようと、内密に表情筋を鍛えた甲斐があった。振り返ったティファの姿に数日前のやりとりがフラッシュバックし、一瞬頭が白んだ際にはどうなることかと思ったが...

「ああ、クラウドさん。今回は長旅ご苦労だったね」

一仕事終え歩みを進めるクラウドを、カウンターに陣取っていた年輩の常連が引き止める。

「凄いよなぁ、本当に地球の裏側までひとっ飛びで行っちまうんだから。早速、配達先の知人が自分も依頼したいって言ってるんだが...」

会話に耳を傾けていたティファは、次は忘れずにハンカチを持たせないとね、と密やかに笑う。

「...あんまり頼んじゃ申し訳ないかな?」

女マスターをニヤニヤ伺いながら客から付け加えられた裏のある一言にティファが知らんぷりを決め込んでいると、意外にも寡黙な男が明瞭に応対した。

「そうですね。しょっちゅうは勘弁してもらいたいです」

酒を口に運ぼうとしていた中年男が面食らい、ティファとユフィもキョトンと首を傾げる。幾分失礼でもある返しに慌てて「...ちょっと、クラウド?」とティファが口を挟んだ。咎められたクラウドは心外だと言わんばかりに反論する。

「だって、遠出が入るとティファ拗ねるだろ?」

瞬間、少年ウェイターに皿を渡していた手が握力を失い、「ととっ」とデンゼルは手慣れた風にナイスキャッチをする。ユフィは咥えていたストローを空中に「ブっ!」と放った。仕事の依頼主は一拍置いた後、大口を開け「こりゃあいいや!」と豪快に腹を抱える。

「もう、変な事言ってないで早くお風呂入って来てよ!」

終いには目に涙まで浮かべ喘いでいる客に居た堪れず、ティファはクラウドの背を押し居住区へと追いやろうとする。

「先に飯でもいいか?」

ティファの誘導に従いつつも、クラウドは「俺の好物ばかり作ってくれたんだよな?」と余計な捨て台詞を残し上階へと去って行く。「そうだけど...」とティファは消え入りそうに言葉尻を濁す。二十代も半ばの男が織りなすにはこっ恥ずかし過ぎる茶番を見せつけられ、ユフィはストローを拾い上げるデンゼルに耳打ちする。

「...困ってるって、コレ?」
「まぁね」

コレはヤバいと蒼白になり、亭主の夕飯の支度に取り掛かり始めたティファに息巻いた。

「ちょっとぉ、ティファ!今のは流石にアタシが阿呆チョコボにピシャリと言ってやるよ!!愛妻の前とは言えホンネとタテマエは常識的に使い分けろってね!」

だがどこか惚けた感じのティファは「...へっ?」と手ごたえがない。

「でっ...でも、悪気があってやってるんじゃないし...」

モジモジと歯切れ悪くエプロンをいじる仕草からは嫌な予感しかしない。

「そんなところも可愛いかな、なんて」

いや、その照れまくった顔も確かにレベルが高いんだけどそんなことには誤魔化されない。なんか向かってる方向性がオカシイんだけど。同意を求めるよう子供達に耳打ちする。

「...結婚して、もう結構たったよね?」
「半年以上経つよ!」
「毎日この調子だぜ?いい加減普通の夫婦になって欲しいよな〜」



一方、ソードホルダーのベルトを緩めながら階段を昇る家の主は反省会に余念がない。

(ティファ、表情が硬かったな)

もっとだ...!グッと右手を握り締め、未来での成果を固く誓う。手早く荷物を置くと階下でスツールに着席したクラウドは隣を二度見した。

「...いたのか?」

マジで言ってんの?脇目も振らず厨房に真っしぐらだと思ったら、マジでティファしか見えてなかったワケ?益々虫唾が走ったユフィは歯を剥き食ってかかる。

「公然の場にキモいもの晒しやがって、人への迷惑も考えろー!!」
「迷惑?迷惑はお前の専売特許だろ。いつもいつも厄介事ばかり持ち込みやがって」
「ムッカー!!ユフィちゃんの天使のごとく献身に対して何を言うかぁ〜〜!!」

食事中も「どう?」と「ああ、凄く美味いよ」の応酬を散々見せ付けられて、「今日は泊まってく!絶対にティファと一緒に寝てやる!!」と半狂乱になるユフィを、珍しい男からの再三の着信を受けたヴィンセントが担いで帰ったのは夜半近くであった。


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ちょいと遅めの春が来た!


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