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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Beast Panic!

天然ヴィンセントによる迷惑なおせっかい。 本編、彼を仲間にした直後のギャグです。



Beast Panic!


眠りを必要としなくなってから、もう久しい。気づくと同室のもう一つのベッドももぬけの殻であった。気晴らしに夜風にでも当たろうかと宿屋の廊下を渡ると、ロビーから薄漏れた光の奥に声を潜め語り合う二人組を発見する。

...ほう?
両人の顔を盗み見、ヴィンセントは俗な好奇心にそそられる。

逢い引きか...
その組み合わせは意外であった。クラウドとエアリスが連れ立って歩く様はしばしば見受けられたが、ティファが彼と二人きりでいることはそうない。だが男女の本当のところなど、他人が知れるのは所詮氷山の一角である。真剣な面持ちで話し込む彼らの妨げをせぬよう静かに裏口に回り、場を後にした。

「まずは俺達に害がないことを確認してだな」
「どうやって?」
「...ティファ、奴があの状態の時に声かけてみろよ」
「ええ!?そういうのこそリーダーの役目なんじゃないの?」
「だってアイツ、女に対しての方が優しいっぽいし...」
「駄目...あのベヒーモスっぽいのはともかく、フランケンシュタインとジェイソンみたいなのは生理的に受け付けないわ!」

『13日の金曜日』を彷彿させるチェーンソー男と目が合った瞬間を思い出し、ティファは両手で二の腕をさすり身震いする。

「一番喋らなそうだけど...やっぱり紫色のに変身した時かな」

故郷の地下奥深くに仕舞われ古ぼけた棺桶から掘り当てた新たな旅の道づれは、本日の戦闘中モンスターの攻撃を受けると何の前触れもなく人らしからぬ咆哮を上げ、その身を怪物へと変化させる。

“あ...あ...”

その様相に腰を抜かすティファ。クラウドも人型ベヒーモスが野放図に吐き出す炎に危うく焼かれかけ、一旦後方へと退いた。敵を一掃し再び元の姿へと戻ったヴィンセントに何事もなかったかのように振る舞われ、稀有な特異体質につき追求する機会を逃したまま夜に至ってしまった。

「ティファ、ナナキはモフモフで可愛いねとかよく言ってるだろ」
「ナナキをあんなのと一緒にしないで!それより、男の子って皆ベヒーモスが大好きよね?」
「人とのハーフはちょっと...」

キザったらしく風に吹かれてはみたものの、する事など見当たらず暇を持て余した双眸(そうぼう)は窓硝子越しにじっと屋内の男女を観察し続ける。恋人達の深夜の逢瀬にしてはよそよそしい距離感と剣呑な雰囲気に思わず目元を顰(ひそ)めた。悲痛の面持ちでイヤイヤをするよう首を振ったティファにズキンと心臓が軋む。

ーーお腹の子供を実験に使うなんて...君は、君は本当にそれで...!
ーー違う、意味はある!!

女科学者の肩を揺さぶるスーツ姿のかつての自分が脳裏にありありと蘇り、目前の二人と重なり合った。ティファは彼の優柔不断さをそしっているのだろうか。なんであれ、このままでは彼女の要望は通らないに違いない。

沸々と鬱憤が燃えたぎるこめかみに、超音波を狂わせたコウモリがコツンと激突した。幸い、この窓はティファの視界にしか映らない。満月を背景に哮(たけ)り、仰け反るとヴィンセントは容貌をみるみると変えていき、羽とトサカを生やした姿で息荒く宿屋の窓を覗き込む。カタリと屋外で響いた物音に視線を上げると、ティファはそこにへばりついたものに目を疑い口をパクパクさせ、スーっと目一杯息を吸い込んだ。

「いやーーーーー!!!!!!」

突如パニックに陥りフっと気を失うティファ。慌てて彼女を抱きとめたクラウドの耳に知った声が届いた。

「クラウド、私だ。ヴィンセントだ」

窓辺に張り付く変質者さながらの怪物を見つけクラウドは後ずさるが、そこから発された知性ある声調に恐る恐る彼と意思疎通を試みる。

「...お前、その状態でも意識あるのか?」
「人体改造の結果、我が身に巣食う三種の魔獣とカオス...異形の者ではあるがお前達に危害を加えたりはしない」

そういう大事なことはもっと早く言えと文句をぶつけたくなるが、日中見た者達より一段と人離れした姿に尻込みする。怪物がチラリと目線を気絶したティファの身体に向け、クラウドは反射的に庇うよう失神したままの体を化物から遠ざけた。意識を失ってはいるが呼吸は穏やかで、首筋にかかる吐息に胸を撫で下ろす。一連の様子を見届け、ヴィンセントは鼻をフンと軽く鳴らした。

「感謝して貰いたいものだな」

...何にだ?
そう訝しむ青年を諭すよう、心中持論を展開させる。口論もいいが、時にはつべこべ考え込まずに頭を無にして抱き合った方が道が拓けることもある。

「私は明け方まで戻らない。部屋は好きなように使え」
「さっきから何の話だよ」

日々贖罪に明け暮れる己...今宵もまた、迷える子羊達を導いてしまった。しかしいつの間にか月明かりは厚い雲に覆われ、寒々しい秋雨まで混ざりだす晩秋の木枯しに晒され夜通し漆黒に息を潜める行為は、強がってはみたものの強靭な肉体にもややこたえたようだ。


******************


初のリミットブレイクにも気にすることなく伸び伸び勝利ポーズ。ティファー!隣見て、隣!!


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