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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

記憶の回廊

本編。ナンパ被害にあってしまったティファ。



記憶の回廊


道すがらこの地に通りかかったのみで、自分とて街並みに精通などしていない。だがティファはその道に迷った見知らぬ青年のために尽力する。

「えっと、確かここら辺に...あ、あった!」

来た道を戻り、記憶の片隅で見かけた気のする目当ての店を見つけ、清々しい気分で道案内を終えようとした時だった。青年は目的の店舗へ向かおうとせず、更に彼の発した台詞に目が点になる。

「その...もしよかったらお礼に一緒にお茶でも...」

時間がないながらも善意を込めた自らの行為はとんだ茶番だったとわかり、ティファの顔はみるみる怒りで満ちてくる。

「酷い...騙したのね!」
「ち、違うんだ!思い詰めた顔してたから気になっちゃって...」
「それはどうも。でもあなたに心配してもらう筋合いなんかないわ」

自分はこんな赤の他人の目にさえ止まるような顔をしていたのだろうか。表情に出やすい質とは言われるが、そんな自分にも腹が立つ。背を向け青年を冷たくあしらうが元々通りすがりの女性に声をかける手合いなだけあって太々しい。さすらいの旅人だと言う彼は下手したら明日以降もティファの後をついて来んばかりの勢いだ。いい加減にウンザリしてきたティファは効き目のありそうな言い回しを探りだす。

「私、好きな人がいるの。こういうの迷惑なだけだから」

それはいざ口に出してみると声は震え、言葉は胸にズシリとのしかかった。自分自身でさえ真っ向からは認めたことのない心情。「でも、片想いなんだろ?」と間髪入れずに飛んできた返しに心構えは出来ておらず、不覚にも目頭が熱くなる。

「ってぇ!!」

突如上がった声に俯いていた顔を上げた。男の腕を捻り上げるクラウドの表情にいつもの冷静さはない。青年の関節がよろしくない方向に曲がるのを見て我に返り声を張り上げる。

「クラウド!もうやめて!!」

痛めた筋に顔をしかめる男に思わず「大丈夫?」と声をかける。「良かったな。脈、あるじゃないか」と言い残し彼は笑顔で引き下がった。

「なんであんな奴のこと庇うんだよ...」

叱り飛ばされた子供のような顔をするクラウドには戸惑いを隠せない。彼はこんな顔をする人だっけ?いつだってクールで、他人には興味なさそうにして...

「誰なんだ?」
「え?」
「好きな奴って、誰だよ」

気づけばティファの手首を掴んでいた屈強な手は先程の勢いの余韻を留めていた。

「いっ...痛いよ、クラウド!」

ティファの上げた声にハッとし、「悪い」と小さく呟くと手を解放し顔を背け去っていく。取り残されたティファは高鳴る動悸を押さえようとするも頭は混乱する一方だ。今のは誰?クラウド?だって私の知ってるクラウドは...

ーー子供の頃はすぐ喧嘩だったのに...

私の知ってるクラウド...は...
赤く跡のついた手首をぼんやり眺める。忘れているのは、私の方?


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