忍者ブログ

Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

For my sake 5 (fin.)


For my sake 4、の続きです。
完結致しました。
ご閲覧ありがとうございます。






言われないと、わからない。

そんな私でごめんなさい。

それでも、たまには言って欲しい。

それだけで私は今日も、びっくりするぐらい頑張れるから...


For my sake 5 (fin.)


私は今、一人ウータイから程近い観光地にいる。
観光地といっても、景色を観て周るのがメインな場所。
宿にあった観光雑誌から、一番気に入ったここを選んだ。

心は決まっていた。
ここで一泊気分転換したら、潔く家へ帰ろう。
求められていようといまいと関係ない。
私はあそこを求めてる。
それだけで、十分立派な “帰る理由” だわ。

ただ、少しだけ寂しかった。
私だけが家の事で頭を一杯にしてるのが。
時には自らの欲望も自粛しつつ、皆を支えてるつもりだったけど...空回りだったのかしら。
だから今日だけは忘れたい。
二年ぶりに自分のためだけの時間を持とう。
清々しい青い空と緑に包まれて。
なのに...

う~ん、これは...

...つまんない。

開始二時間でそう言い切ってしまった。

「一人旅って、意外と難しいな...」

古びて腐りかけた木の柵にもたれかかり、目前に広がる牧草に向かい呟く。

「すみません、写真撮って貰えませんか?」

慌てて振り返ると、そこにはカメラを手にした若い女性。
やだ、もしかして今の...聞かれてた?

「え、ええ、もちろん」

平生を装いカメラを受け取る。

写真を撮り終えると、彼女は礼を言い背を向けた。
だが、そのままそこに立ち止まる。

(?)

「あの...もしよろしかったら、ご一緒してくれませんか?
私も一人で寂しくて...」

「ごめんなさい、さっきの写真...実は話しかける口実だったの。
あなたの独り言が聞こえてつい嬉しくなっちゃって」

そしてペロリと舌を出した。
返事はもちろん一つだ。
先程の台詞を、そっくりそのまま繰り返す。

「ええ、もちろん!」

思いがけず、旅仲間が出来た。



「...で、身一つ鞄一つで飛び出して来たって訳なのよ。思いっきり鬱憤(うっぷん)を発散してやる~!!そんな風に意気込んでた癖に、私ってば一人旅どころか一人暮らしもしたことないじゃない?あ、ないのね?みるみる寂しくなってきちゃったところにあなたの声が耳に飛び込んで来て、藁(ワラ)にもすがる思いで...」

...よく喋る人だった。

嫌ではない。
職業柄、人の話を聞くのは慣れてたし、芝生に話しかけてるよりずっといい。

だけど段々とくすぐられた様な気分になるのは、聞けば聞く程彼女の状況と自分のそれとが重なるからだろうか。

(そう、私はあなたの “藁” だったのね...)

文句は言えないわ。
私にとっても彼女はそうだった。

“私もあなたと同じ状況よ”

腹を割ってしまおうとも思ったが、私は先程ついうっかり言ってしまったのだ。

“あなたの彼、今頃大慌てね”

こんな慰め、同じく家出して迎えにも来て貰えない女に言われたって、嬉しくもなんともないに決まってる。
次の目的地へ足を伸ばすが、相変わらず景色はそっちのけで二人の話題は尽きなかった。



そこは生い茂った森の、不思議と水の色が青い池だった。
何かの金属が溶けてこういう色になるらしい。
透明に澄んだ青い液体の中を、素知らぬ顔で泳ぐ魚を見つめ考える。

話を聞く限り、彼女は家に戻る気はないらしい。

「でも、あなたまだ...」

「好きよ、まだ」

私を遮り即答する。

「じゃあ、なんで...」

大きく溜息をつき、彼女はたたみかけた。

「“愛してる” も、“好き” もない」

まぁ、ね?

「そのくせやることはやるし」

......

「口を開けば仕事の愚痴ばかり」

それはないわ。
そもそもあまり口を開かないし。

「休みの日も寝てばかり」

でも、午後は必ず子供達と遊んでくれる。

「タイミング良く暖めたご飯を、なんて事ない顔で食べる」

そうだけど、ちゃんと言ってくれるもの。
“ありがとう”って。

「毎日毎日、同じ事の繰り返し」

違うよ、同じだからいいんじゃない。

気付けば反論ばかりしてる自分に気付く。

「それを証拠に...ね?
追って来ないでしょ、私の事」

それについては何も言えなかった。

「とどのつまり、私の代わりなんていくらでもいるってところかな」

あ~あ、と空を仰ぐ。

「もう家政婦でも何でも雇えばいいのよ」
「おい」

突如太い声が飛んできた。
振り返ると不機嫌そうな男性がおり、彼女は「あっ」と声を漏らす。

「言いたい放題だな」

「何で...いるの?」

「迎えに来て欲しかったんだろ?」

「何で、わかったの...?」

「さすがにわかるよ、俺だって。」

手にした紙切れをぐしゃりとやり、突き出した。

「こんな行き先付きの置き手紙があったら...」

私も同じ。
ユフィの部屋の襖(ふすま)に貼り付けたメモに書いた連絡先。
あれは本当は、心配かけないためじゃなくって...

「悪かったよ。帰って来いよ...」

彼女は迷うことなく走り出した。
泣きじゃくる彼女をきつく抱き締める彼。

お邪魔...よね?
私は背を向け歩き出す。

あーあ、見せつけられちゃったなぁ。

...いいな。

でも...

(過剰に期待しない方がいいと思うよ)

いつだって的確なユフィの言葉。
人それぞれ...だもんね?
少なくとも、普段の生活においてはあの彼よりずっと優秀だったクラウド。

さぁ、帰ろうかな。

受け身で...
全くもって自分に自信のない...
人前であんな事は絶対にしない、恥ずかしがり屋な...

私のヒーローの元へ...





一日ぶりのウータイは騒がしかった。
パトカーと...消防車?
ずっと移動していたからニュースも見ていない。
何かあったのかしら?
しかしとりあえずのところユフィの家へ向かう。

「ただいま~、ユフィー?いるー?」

玄関をまたぐ。

「表、騒がしいね。何かあった......の?
って、クラウド!?マリン?デンゼル?
...と、バレット?」

見知った顔がズラリと並び、幽霊でも見るかの様な真ん丸な瞳で私を見つめてきた。

「「ティッ...」」


「「ティファ!!!!!!」」


次の瞬間、三方向から羽交い締めにされる。
前からデンゼル。
それに覆い被さってクラウド。
わきにはマリンがぶら下がった。

「マリン!?重たい!重たいよ~」

彼女は意地悪をするよう益々体を揺さぶった。

「痛い痛い痛い、デンゼルってば!」

彼も足に爪を食い込ませ、おでこを目一杯グリグリ押し付けてくる。

「クッ...クラウド!?
みみ見てる!皆が見てる!!!」

背中をバンバン叩く。

「..........構うもんか」

頬を私のそれに擦り寄せてきた。

「~~~~~!?!?!?!?」

「ティファ、帰って来てくれないか?
俺のために...」

「...えっ?」

「ティファがいないと俺...」

次の言葉に私も涙を溢らせ背中にしがみつく。


“生きていけないよ...”





fin.


******************


ユ「バカ!心配かけて...」
テ「ごめん... 置き手紙したんだけど...見当たらなかった?」

ニャーーー...

ユ&テ「「...ん?」」

ユ「オマエ...」
テ「...その口にくわえてるの」

ユ&テ「「こ~~ら~~!」」

.........ニャ!?

え、こんなオチ?


For my sake(セイク)=俺のために




PR
  

最新記事

(12/31)
(12/31)
(08/11)
(05/03)
(05/03)
(05/03)
(05/03)

WEB拍手

Copyright ©  -- Minority Hour --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]