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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

prithee... 3


prithee... 2、の続きです。







歩き慣れた廊下は、心なしか少し狭く感じた。


家族も友人の目も、何も怖くない。

誰に何て言われたっていい。

この先にいる、あなたさえ手に入るなら...


prithee... 3


「おはようございま~す!」

「おはよう!」

「あれ?先生、今日なんか可愛い!
もしかしてデート?」

「え?...そ、そんなんじゃないって!」

簡単に言い当てられドキっとする。

(高校生の言う事に何動揺してるのよ...)

あれから半年。
実習先の正式な教師となった私は毎日を忙しくしている。
幸運というのは忘れた頃に舞い込んで来るものなのだろうか?
先日、社会人になりすっかり見なくなった携帯電話を開き心臓が飛び上がった。

“ティファ、あれから元気にしてるか?
久しぶりに飲みに行かない?”

(これって、デートなのかな...)

少なくとも私にはそうだ。
思い出す時間は減ったけど、他に好きな人が出来た訳でもなく、たまに無性に恋しくなる。

(あまり期待しないようにしなきゃ...)

彼の中では完全に終わった話だからこそ、気軽に誘ったのかもしれない...

「先生、ボールとって」

「は? え、きゃ!!」

足元がグラつき地面に手を着いた。

「はは、サッカーボールにつまずくって凄いな...」

乾いた笑いを浮かべるのは、私に教師になる決心をさせたあの “問題児” 君。
彼はボールを拾うついでに小声で囁く。

「3つ隣の駅だから」

「何が?」

「俺の新しい職場」

「!?  もう!私をクビにしたいの?
絶対に行かないんだから!!」

叫ぶ私など気にせず、笑って仲間の元へ去っていく。

“俺、レギュラーになれたんだ”

ここに戻ってすぐに報告してくれた。

(本当は煙草は辞めたかったのよね?)

あの一件に関して考えがまとまった訳ではないが、一人の生徒が笑顔を取り戻せた事に満足する。





「あの先生、大学のミスコンにノミネートされてたんだって。
兄貴が同じ大学で教えてくれた」

「「へ~」」

「でも出るの断ったんだって」

「「へ~~」」

「綺麗だけど、目立つの苦手そうだもんな」

先生はすっかり学校に馴染み、いまや男女問わず話題は絶えない。
真面目でやや堅苦しく友達感覚とはいかないが、怒る時は怒り、裏表がないのが生徒に受けた。

「先生、昔バレー部だったんでしょ?昼休み一緒にやろうよ!」

「いいけど...4年ぶりよ?手加減してね」

進路の関係で文系科目を減らした俺に最近めっきり接点はなく、俺より先生に詳しい奴は増えていった。



「亡くなったお母さんが学校の先生だったから、教師目指したんだって」

...ここにもか。

そうニコニコ報告するのはエアリス。

「腹が一杯にならねぇなぁ。
...よし、いちごミルク買ってこよ」

「...似合わないもの飲むな、気持ち悪い。
俺、ブラックな」

「それが先輩に物を頼む態度か?」と首根っこを揺さぶり席を立つザックスは、エアリスと寄りを戻す気配はない。
二人共相当モテるのに、別の相手との噂もなかった。
エアリスは横目でザックスを追い、視界から消えると口を開く。

「ね、クラウド。
今日、部活の後...ちょっと時間貰える?」

「ん? ああ、いいよ」

今度の練習試合の事だろうか。
深くは考えなかった。



コーヒーを飲んでも覚めない眠気に、5限はサボる事にした。

(やっぱりいない、か)

授業が倍増し、生徒の名前を覚え切った先生が屋上に現れる事もなくなった。





まだ半分寝てる頭を抱え教室に戻る。
途中、黒髪の後姿が咳き込むのを見かけた。

(5限はここで授業だったのか)

教壇には黒板消しのクリーナーと格闘する新米教師。

「日直は?」

「あ、こんにちは!
忘れて帰られちゃったみたいで...」

「下手くそだな。かして、やってやるよ」

あーあ、白い服なのに汚しちゃって...
しっかりしてるのかドン臭いのかわからないな、この人。

黒板消しを奪いとり、代わりに磨いてやる。

「ありがとう!さすがね~
私も昔は上手かったはずなのにな。
次から、サボられたら君に頼むね」

「いや、日直に頼めよ...」

本気の様な冗談の様な事を言われ呆れるが、何故か気持ちは軽い。

(一日に二回も話したの、本当に久しぶりだ)





「部室行く?」

薄暗い校庭でエアリスに聞く。

「んーん。人もいないし、ここでいいや」

彼女は辺りを見渡し首を振った。

「クラウド、なんで私がザックスとまた付き合わないのか、不思議に思ってるでしょ?」

「まぁ...そうだね」

校内で1、2を争うお似合いカップルだった。
今も容易く彼女に近づく男がいないのはそのせいだろう。

「半年は、言わないでおこうって、決めてたの」

「何を...?」

話が掴めない俺に構わず、少し俯き黙り込む。
しかしすぐに意を決し顔を上げた。


「私、クラウドの事が、好き」





「せっかく洒落た店にしたのにチョークの粉つけて来るとはな」

そう茶化す目は笑っている。
本気の文句でないのを知りつつ膨れ面を返した。

彼との久々の食事は楽しかった。
お互い就職したてで話題も尽きない。

「ねぇ、そっちはどうなの?
何か会社での失敗談、聞かせてよ!」

「失敗談、か...あまり笑えないかも。
それよりさ...」

苦笑いをして話を変える。

「やっぱり、ティファはいいな」

頬に手を当てられ体に電気が走った。
こちらを見詰めゆっくりと続ける。

「失って初めて有り難みがわかったっていうか...」


「あのさ、俺たち...やり直さないか?」





「先生?」

背後からの声に肩が揺れた。

“3つ隣の駅だから”

そこは彼が住む場所だった。
大きな駅ではない。
いつか鉢合わせするかもとは思っていたが...

「彼氏?」

「あ...う、うん...」

隣からも「学校の子?」と聞かれそちらにも頷く。
クラウド君は「ふぅん」と興味なさそうに背を向け歩き出した。
私達も進行方向へ向き直る。

「“先生” だって」

「だって、先生だもん」

返事はあの後すぐにした。
心境の変化はわからない。
あまり職場の話をしたがらなかった彼は、仕事が上手くいってないのかもしれない。
そんな時だけ頼ってくるのは少し虫が良く感じたが、弱気な時に人恋しくなるのは当然だ。
何より私は...まだ好きだった。





俺はエアリスの事が結構好きだと思う。
明るくてポジティブで...
優等生だけど真面目臭くなく、誰とでも分け隔てなく接する彼女を尊敬してた。
だが告白に即答しなかった訳は...

「クラウド」

数日後の帰り道、予測した人間から声がかかる。

「ザックス...」

「今日、バイトないだろ?飯でも食ってくか?」

そう言う顔は、いつもと何ら変わりない。



「俺に気なんか遣うなよ」

ファーストフードであらかた飯を終え、ドリンクのおかわりから戻ると切り出された。

「お前らがひっつこうが、お前は変わらず俺の “トモダチ”。
それに俺は、まだまだ諦める気はないから」

「...別れた理由を言わなかったのは?」

気にしてたからなんじゃないのか?

「俺の口から言ったって、二人とも喜ばないと思っただけだよ。
エアリスはハッキリ言う奴だから時間の問題だと思ったしな。
現にこうして告白の報告までされた訳だし」

きっとザックスは本心で言ってる。
つまり俺が気にする事は何もない。
だけど...

“彼氏?”

“あ...う、うん...”

告白された瞬間に浮かんだ顔...
しかし慌てて首を振る。

(何考えてるんだ、俺は。
あの人は7つ上の...しかも教師だぞ?
それに男持ちだし...)

「とにかく!...ちゃんと考えてやれよ?」

ザックスの声で我に帰る。
彼には悪いが...気持ちは決まっていた。



返事は次の日した。
呼び出され、緊張した面持ちのエアリスに伝える。


「なぁ、俺たち...付き合おうか」





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