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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

One tiny trump 3


One tiny trump 2、の続きです。
まずはそちらをお読み下さい。


One tiny trump 3 ~FF7 Another Story~


(クラウド...)

...ティファ?
彼女は満面の笑みで手招きした。

(遅いよ!こっちだってば!!)

ああ、すぐ行くよ...
しかし足は進まない。
なんなんだ?動いてくれよ、俺の体。
もう見えなくなってしまう。
ティファ駄目だ、そっちは行っちゃいけない...
そっちには...
聞いてるのか?止まってくれ。
おい、ティファ!

「ティファ!!!」

俺は跳ね起きる。

.........ここは?

目の前には無機質な白い壁。広い窓。
その向こうには黄金色の空。
どうやらかなり背の高い建物の中のようだ。

「よう、やっと目が覚めたか?
安心しろ、ティファは無事だ」

野太い声に安堵する。
状況は全く掴めないが、その声の主は嘘をつく奴じゃない。

「ここはどこだ?バレット。
あれから何が起こった?」

バレットは俺の寝ている寝台に近づき、チッと舌打ちする。

「俺の一番気に食わねぇ場所だよ...」

そう言われ、窓の外を見やるとそこには夕日できらめく広い海。
まさかここは...

俺達は新羅のジュノン支社にいた。
セフィロスが消えたのは良いが、意識の戻らない俺にうろたえる仲間達。
すぐに手当をしないと命が危ない。
そこで動いたのはケットシーだった。
新羅とは和解はしていなかったが、星が消えようとしている今この状況下では、既に敵対もしていなかった。

「だからボク、社長に言ってやったんですわ。
今この状況で、セフィロスを倒せる可能性が最も高い男をむざむざ死なせていいもんですかね~て。
案の定、飛行艇すっ飛ばして迎えにきはりました」

相変わらずユラユラ揺れながら得意気に言うぬいぐるみ。
本体もこのビルにいるようだが、今は会議中らしい。

可能性が最も高い男、か...

自らの右手に目を移す。
夢だったら...そう願ったが、やはり俺の手はなくなったままだった。
それに気が付きケットは穏やかな口調で言う。

「クラウドはん、落ち着いて聞いて下さいね?
クラウドはんの体には、ジェノバ細胞による再生能力があるから、それくらいちょちょいのちょいで治せるんです」

では何故治らない?

「セフィロス...」

「ええ、今はあきまへん。
あいつが何かクラウドはんの手に良からぬ事をしてはります。でも...」

ケットは先を続けられなかった。
でも...?
あいつさえ倒せれば?
ならばそれをどうやって達成する。
俺はもう剣も握れないのに...





『クラウド、クラウド、クラウド...』

電話をかけた相手は泣いていた。
逆に心配をかけてしまったな。
取り越し苦労で本当に良かった。

ティファは無事だった。

結局コスモキャニオンでは何も手掛かりは得られなかったらしい。
彼女は申し訳なさそうに言うが、俺は最初から期待していない。
そのままそれを伝え、自分の体の事もやや脚色を加えて説明した。

『特殊な体のおかげで、いつかは治るらしい。
今がピンチなのは変わらないけど。
なぁ、だからそんなに泣かないでくれよ』

『............本当に?』

疑わしそうに聞くティファ。

『ああ...』

奴を倒せれば、ね。
俺は話を変えた。

『ティファ、無事で良かった。
...早く会いたい』

言いながら顔が熱くなる。

最近の俺は少し変だ。
以前はこんな事、口が裂けても言えなかったのに。
てっきりセフィロスはティファ達に接触しに行ったんだと、焦ったせいもあるだろう。

『うん、私も。もうすぐ会えるよ...』

未だ涙が混じった鼻声。

ティファは知らない。
俺は子供の頃からずっとティファが好きだった。
だけど、口で何かを伝えるのが苦手な俺。
小さい頃も喧嘩ばかり。
あの日だって...

殴られるだろうな。そう思ってた。
そしたら誤魔化そう。
悪い冗談だって笑い飛ばして。
ならば嫌われることもないだろう。
だけど彼女は俺に抱かれてくれた。
そして...

好きになってくれた。

俺にとってそれは、奇跡のような出来事だった。
そして今、手に取るようにわかる彼女の気持ち。

俺は運命を呪う。
あんなにまで望んだ彼女との未来がこの手の中にあるのに、今まさにその命を終わらせようとしているこの世界。

まだ間に合う。

この手で、守りたい。





電話を切り、最上階の社長室へ向かう。
こいつに頼むのが一番手っ取り早いだろう。
それにあまり他の人間に話すべきではない気がした。

俺には行きたい場所があった。
あと半日もすれば、ティファ達がここに辿り着くその前に。
ドアをノックし、部屋へ入る。

「もう歩けるのか?流石だな」

「役立たず、だけどな」

右腕をかかげ皮肉を言う。

「万事休す、か。何か策はあるか?」

ルーファウスは俺から視線を外し、ブラインドの隙間から海を眺める。

「飛行艇を貸してくれ」

奴は振り向いた。

「忘らるる都へ行きたい」


「そこにセフィロスが探している、何かがある」





「俺もついてくぜ」

バレットはそう言ってくれたが、遠慮した。
チラリと目に入ったのは、そのただれた厚い手のひらだ。
屈強なこの男でさえこの有様だ。
加えて俺は左手とマテリアでしか応戦ができない身。
仲間には少しでもその体を休めて欲しかった。

丁重に断り、デッキへと向かう。
そうだ...

「バレット、ありがとう」

振り返り、バレットを引き留める。

「あん?」

「ティファに俺の手の事を伝えてくれて」

俺からは言いづらかったんだ...

「俺が?俺は誰にも何も言ってねぇよ。
ティファとは話してもいねぇ。
俺の電話を取ったのはレッドだった」





前に来たときは気付かなかった。

そこは、びっくりするくらい音のない場所だった。

(星の声を聞くためか?)

湖のほとりに座り、今は亡き彼女に話しかける。

(教えてくれ、俺はどうしたらいい?)

目当ての物は見つからなかった。

'渡して貰おう'
何を言ってるのかわからなかった。
しかし...

'あの女の死体はどこだ?'
そう言われた時、一つだけ思い当たる物があった。

(ね、マテリア持ってるんだね。わたしも持ってるんだ)
(わたしのは特別。だって、なんの役にも立たないの)

実は俺は彼女の体を抱きかかえる時、それを探したんだ。
深い意味はない。
ただ、母親の形見だと言っていた。
きちんとのけて置いてあげようと思ったんだ。
だけど彼女のリボンは解け、そこにマテリアはなかった。
奴に刺された衝撃で落ちてしまったのだろう。

(後でまた探そう)

そう思ったが、結局見つけることは出来なかった。
そして再び探しに来た今も、それは見当たらない。

湖の底に落ちてしまったのか。
もしくはあの後セフィロスが取りに来た?
それはない気がする。
奴に俺の発言を疑うそぶりはなかった。
そもそもセフィロスが探していたのが、あのマテリアだなんて保証はない。

ジェノバ細胞を通じ感じとっていたセフィロスの気配は、すっかり消えていた。
少なくとも奴はこの北の大陸にはいない。

八方塞がり、か。

そして...

(俺は誰にも何も言ってねぇよ)

ティファは...俺に嘘をついている?
それとも誰かが伝えたのか?
何かが府に落ちない。

いったい誰から聞いた。
俺の手の事を知っているのは俺達と...

そこまで考え、ハッと我に帰る。
何を考えてるんだ!俺は。
ティファは俺の一番大切な人だ。
一番疑ってはいけない人...

(なぁ、エアリス。何か教えてくれよ...)

最後にもう一度問うたが、当然返事は貰えなかった。


その後仲間に確認したが、あの日俺以外にティファと連絡を取った者はいなかった。





One tiny trump 4、へ続きます。


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