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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Friend-zone

『涯』、続きの一歩進んだヴィンユフィ。
クラティはほぼなしの、ティファとのガールズトークです。







Friend-zone


ちゃんと食べてるんだろうかと心配になるほどスリムな身体。お昼がまだだと申告してくるものだから、作り置きのミートソースを温め茹でたてのパスタに和える。食事に専念する姿を前に手持ち無沙汰に頬杖をつき、「元気ないなぁ」と嘆くと、フォークを操る手が僅かにピクリとなった。

「何でも話してごらんなさい、お姉さんに」

わざとらしい笑顔に詰め寄られユフィはたじろぎ警戒する。

「いきなり何?そのお姉さんっての。上から目線反対!」
「あら、お姉さんじゃない。四つも歳上なんだもの」

実際のところ、目に見えて彼女の元気がない訳ではない。だが長年の付き合いから察することの出来る、らしくないしおらしさ。きっとその原因は今も気付かず指先が弄んでいる真新しい鎖。それが彼女の手首に捧げられた記念すべき日をティファは知っていた。





『...何が欲しいんだ。マテリアか?駄菓子か?』

再三に渡るプレゼントの催促に折り返しがありしめしめとなった。『えっと、じゃあ...』顎に人差し指を当て考え込むアタシはこの瞬間までは今まで通りだったハズだ。当然アタシとソイツの関係も。ほぼ無意識に飛び出た要求は、今思えばなんて不用意だったんだろう。

ーー体に身につけるもの!!

迎えた誕生日当日、セブンスヘブンのカウンターに並べられた色とりどりの包装紙にニンマリする。開ける寸前まで最高潮だったテンションはクラウドやシドが包んだやたらとかさばるだけのガラクタにだだ下がるが、他の贈り物に埋もれて最後に姿を現した細長い箱にはキラキラと光るブレスレットが収められていた。

“手首が細いからな。似合いそうだと思った”

そんなオマケまで添えられて。それ以来、三日に一度は欠かしていなかった電話を掛ける手は途端にぎこちなくなる。

別に自分の感情を見て見ぬフリしようなどという気はなかった。ヘタれマントが再び表舞台に顔を出すようになったことは嬉しかったし、友情しか持たない相手に抱擁を許すこともない。ただ、向こうが気持ちに応えてくる日は来ないと思ってて、それにどこか安心もしていた。絶妙にキープされていたバランスは少なくとも彼女の側では葬り去られ、何を考えているのかわからない男の思考は益々読み取り不可となる。

ヴィンセントが、アタシを?
紅い布を翻し振り返った瞳は、険しく歪んでいく。

「勘違いをさせたのならすまなかった」

泰然とした口ぶりには容赦の欠けらもない。

ーーお前のことは、妹としか思えない

「ユフィ、もういらないの?」

ティファを置いてきぼりにし白昼夢を見ていたユフィは正気を取り戻すと悪夢を追い払う様にパスタにがっつき直す。

「また触ってる」

人の気も知らないで愉快そうな顔が恨めしい。この類の相談が出来るのはティファぐらいだったが、好き放題根掘り葉掘りし発破をかけた過去に決まり悪くなる。ティファがエアリスに臆して消極的だったり、イイ感じになった後もグズグズしていた理由も今なら理解出来た。とはいえあれ以降何か仕掛けてくる訳でもない二回り以上年上の強敵にやきもきし、このわだかまりを誰かに発散したいのも事実。

鬱々としだすユフィとは間逆のご機嫌顔は、同じく時を二週間前に遡り始めた。



“余計なお世話かもしれないけど...”

言葉少なにブランデーを傾ける無表情からその真意を図りかね、大切な女友達が無用に傷つくのを阻止すべくついつい牽制口調になる。

“あれを貰って期待しない女性はいないわ”

出会った頃は少女と呼ぶのが相応しかったユフィも来年には成人する。自らが使用した彼女を指し示す単語に時の流れを噛み締めていると、毅然とした瞳はいつになく柔らかい雰囲気を纒う。

“安心しろ。泣かせなどしない”

その分別ある男が無責任な発言をする人間ではないと知るティファは、包容力ある返しに顔をほころばせた。

「ああっ、言いたいっ!」
「あーーーもう!!」

ティファが回想に身悶えるのと、精彩を欠いた自分にイラついたユフィが爆発したのは同時だった。

「...どしたの?」
「こっちの台詞よ」

手詰まり状態に手を焼いたユフィは、「なぁんかさ、メンドーだなって思うワケ!」と投げやりにベンチシートに仰け反った。的を射た表現に違いないそれを、ティファは懐かしいものを見るように暖かく見守る。

「そうね。面倒臭いよね、恋愛って。両思いになった後だって、色々と面倒だわ」
「...そうなの?」

先人からの絶望的なアドバイスにユフィは気を萎えさせる。

「彼のお誕生日には何かあげたの?」
「何も。おめでとうって言っただけ。オッサンの好きなモノなんてわかんないし」

あらあら...“わかんない”ってことは、悩んだ挙句のギブアップかしら?「それじゃ今月のクリスマスにはとっておきのお返しをしなきゃね」との助言にユフィは脳内でカレンダーをめくり日付の近さに怯みだす。

「勝負は来年でいいかも。もうちょっと気持ちを探ってから...」
「いいからいいから。12月24日は一年で一番勝率が高いのよ。それにこういうのは善は急げだって」

我ながらどの口が善は急げなどと言ってのけるのか甚だ可笑しかったが、渦中の人物に大まかに意思確認を済ませずみのティファは強気だ。「そうなの?」とウブな反応を見せ、「どんなのなら効くと思う?」と前のめった首にふと疑問を抱く。

「そうねぇ...じゃあ、キスしてあげたら?」

ボロネーゼの巻かれているフォークがガシャンと派手な音を立て落下し、「き、き、き、き、き...」と声が震えた。五回、六回、七回目...あ、八までいった。ユフィの発する「き」の回数をカウントしながらティファは次の反応を待ちわびる。

「出来るわけっっ、ないだろっっ!!」

なるほど。まだそこまではいってないのね。

「ふぅん。じゃ、ギュってされたりはしちゃった?」
「なっ、なんで!?!?!?!?」
「ふむふむ。それは済んでるんだ」
「すっ、済んでるって...あっ、ハメられた!!」

こ...これは楽しい!
赤面し瞳まで潤ませだす普段は小憎たらしくもある友人の新たな一面に、ティファは嬉々として目を輝かせる。

「あ~ん、ティファが今になって仕返ししてくるよ~~!」
「仕返しじゃないわよ、手助けだって。ユフィには何かと感謝してるんだから。そうよね、ファーストキスは向こうからして欲しいよね。キスは頬っぺにするだけに留めて、肝心の贈り物は何にしようか?」

何故か頬にキスすることは決定事項になっている流れにユフィはまた目を白黒させて口をパクパクする。



時を同じくして居住区から店に続く廊下の壁に張り付いた男が一人。

ヴィンセントと、ユフィねぇ...
あのじゃじゃ馬娘が乙女の顔をしだしたり、ティファもキスしろだとかノリノリで、ただでさえ知人同士の恋愛話は気恥ずかしいというのに調子が狂う。“両思いでも面倒” あたりから出るに出られなくなった。悪かったな、面倒臭くて。

「クラウド、向こう行かないの?」

訝しそうにマリンに覗き込まれハッと我に返る。柄にもなく野次馬根性を発揮してしまった己の盗み聞きがバレると、慌てて低い肩に手を置き回れ右させた。

「マリン、上に戻ろう」
「えぇっ、おやつ~~!」
「とっといてあげるから。なっ」

今度ヴィンセントに会ったら突っ込んでみようか.........いや、無理だ。

慣れない試みを三秒で諦めたクラウドが機転を利かせたお陰で赤マントの討伐作戦はめでたく纏まる。翌日から始まった実行までのカウントダウンにパニックを起こしたユフィが店に飛び込んで来る様は、すっかり今年のセブンスヘブンのクリスマス前の風物詩となった。


******************


ユフィ、お誕生日おめでと~~!

Friendzone=友達以上恋人未満
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