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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

One-Night Insider

ニブルヘイム事件中。
ザックスが無印版チャラ男で、ザックス→ティファ表現あり。
ギャグ風味です。






One-Night Insider


ベッドに踏ん反り返り、片手に携帯電話を弄ぶ青年と、それとは対照的に熱心に筋トレに勤しむ少し年下の少年。

「くっそ暇だな、おい」

誰に言うでもなく、宙に放られた愚痴。連日宿屋で待機とされても、クラウドにとっては腐っても故郷であるそこはまずまず居心地の良いものだったが、活動的なザックスにはさぞ酷であろう。今朝からザックスはしきりにメールのやり取りをしていて、今もその指はせわしなく動いている。さして興味もなかったが、寡黙な少年は珍しく自らの得意分野ではない話題を振った。

「...彼女か?」
「んー?ティファ」

クラウドの姿が忽然と消えたためザックスが訝し気に下を覗き込むと、いつの間にか金髪の彼は床に崩れ落ちている。

「どうしたクラウド」
「な、何話してるんだ?」
「別に。雑談」

つまらなそうに携帯を放り投げ大欠伸をする横顔を、クラウドはモンスターでも見る様に眺める。ここに来てまだ数日だろ、知らぬ間にちゃっかりメアド交換を済ませ頻繁に連絡を取り合うまで、どうやったら発展するんだ...

自らの尻ポケットにある携帯に登録された連絡先は、開かずとも一瞬でリストアップが完了する。母さん、ザックス、一般兵2、一般兵3...うら若き十代の少年の交友関係としては味気ないことこの上ない。ちなみに一般兵1とは勿論クラウドのことである。

到底真似の出来ないフットワークの良さに、クラウドは軍の階級以上に越えられない壁を目の前に厚く感じる。再度響き渡った受信音に寝かせた携帯を覗き込み、ザックスは「おっ」と今日初めて眉を上げた。

「晩飯、誘われちゃった。親父さんがいなくて寂しいんだって」

セフィロスが神羅屋敷に立て籠もって以来、村の長は率先して現場で張り込みを続けている。

「“兵隊さんも是非どうぞ” だってさ。どうするクラウド?」

返事のわかりきった質問をする意地の悪いニヤニヤ顔に、クラウドは「行けるわけないだろ...」と俯き期待通りのリアクションを取る。

「だよなぁ。お前、アイツに顔も見せらんないのに飯どころじゃないよな」

追い討ちをかけるように、ザックスは恨めしくこちらを見上げる哀れな少年の首に腕を巻きつけ「お前も当然気付いたと思うけど、あの子...結構胸大きいよな」と小声で囁いた。「!!!」クラウドは顔を真っ赤に染め口をパクパクさせる。

「一気に楽しくなってきた」

ついには口笛まで吹き始めるザックスの胸ぐらを掴み、普段は従順なクラウドはいつになく楯突いてくる。

「いっ...行くな!」
「はぁ?俺が行きたいんじゃない。“ティファが” 来いって言ってんだ」
「ザックスは彼女いるんだろ?」
「ああ、大勢な」

口下手な彼は言葉に詰まるが、首元を締め上げる腕に渾身の力を込め威嚇した。

「なんだよその顔。別に飯を食いに行くだけで、ティファを食っちゃおうなんて言ってないぜ」
「く、食っちゃ...」

その言葉の意味するところをありありと思い浮かべた多感な年頃である彼は力を失いよろめく。その隙にザックスはクラウドの両手を払うと問答無用で背を向けた。

「でも、一応シャワー浴びてこっと♪」

無情な台詞と共に閉められたバスルームの扉にフルフルと震える手が伸ばされるが、やがてそれは虚しく床に落とされ、次の瞬間クラウドは頭を抱え込みフローリングの上をのたうち回った。
うわぁぁああああ!!駄目だろティファ!!!夜遅くに男と二人きりになんかになっちゃ!それもよりによってこんな危険な男!!!

この二年で初恋の人が予想を上回り美しく成長していたこと、二人の背丈が残念ながら同じくらいであったこと、守ってあげるべき彼女が格闘の腕を磨き戦闘能力にも大差が見られないこと...向かい風に煽られまくり、俺はいよいよ自分の正体を明るみに曝す勇気を失った。今やヘルメットを被ったあげく顔を下向け、気配をひた隠しながら任務が迅速に終わりを遂げるのを祈るのみの無様な有様である。

俺がくだらない見栄さえ張ってなければ、この手でティファを守ってあげられるのに...

「ごめん...」

あぐらをかいた無力な膝の上に、両腕がパタリと落とされた。



「うっめーーーー!!」

類をみないオーバーリアクションにエプロンを外しながらティファはクスクスと上機嫌だ。神羅兵の分も考慮して三人前、次から次へと口に詰め込む大食漢に、作り過ぎたかもという心配は杞憂に終わりそうである。

「なぁ、ティファってなんでこんなに料理が上手いんだ?」
「うち、お母さんいないから。料理は長らく私の担当なの」

「へぇ...」宿屋の食事の味付けにも飽きてきた頃だ。食卓に並んだ豪華な力作に舌鼓を打つ。退屈で堪らなかった一日が一瞬で色付いたうえ、夕刻に交わした滑稽な問答がツボに入りっぱなしだった。クラウドの奴、俺の冗談を一々真に受けて赤くなったり青くなったり随分と忙しかったな。女の子なんか興味ないとか言ってたけど、興味あり過ぎだろ。

「ああ、ティファにも話せたらなぁ」
「なに?何の話?」

思い出し笑いで肩を揺らすザックスは、うっかり表に漏れてしまった心の声を慌てて取り消す。

「ごめんごめん、こっちの話!」
「なぁに?教えてよ」
「そうだな...何年か経ったら必ずな!」
「えー!何それ、意味わかんない!!」

「きっとすぐだから、我慢しててくれ」と頭をポンポンすると、ティファは触れられた事に照れながら「わかった、良い子で待ってる」とはにかみ見上げてくる。その微笑みに図らずともドキっと胸は高鳴った。

(お兄ちゃんって、もしいたらこんな感じかな)
(3つ差か...ギリギリ有りだな)

互いに頬を赤らめながらも、心の中には随分と温度差があるものである。

(馬鹿だなクラウド。俺じゃなくても、モタモタしてたら他の男に取られるぞ)

初印象こそ暗かった少女は、改めてその笑顔を眺めると顔立ちの造形は素晴らしく整っていて、これから益々美人になるに違いなかった。加えて、ミッドガルのちょっと可愛い女の子達は折角の綺麗な肌に不要な厚化粧を施したり、チヤホヤされて若くから男遊びに興じたりと自身で自らを貶める勿体無い娘も少なくない中、目の前の少女の魅力は一味違っていた。男と手を繋いだこともなさそうな駆け引き知らずの無垢な瞳、十分な魅力を放つ癖に石鹸の香りが漂う穢れのない身体。閉鎖的なこの村でこそ守られてきた賜物だった。

(なんか、ムラムラしてきた...)

まさか本気で友人の想い人を手籠めにしようなんて計画していた訳ではないが、彼も健全な齢十八の男子である。腹が膨れてからは、ティファのミニスカートの裾ばかり眺めていたのもいけなかった。

「ティファ、今日のお礼がしたい。ちょっとだけ目ぇ瞑ってみな?」
「...なんで?」

流石に警戒をしてツイと身を引く彼女。勿論そんな生っちょろい拒絶では押しは揺らがない。

「コレはだな、ええと...都会で最近流行ってる...そう、ゲームだゲーム!目潰りゲーム!」

我ながら無理があるなと苦笑しつつも、それらしく聞こえるよう目一杯取り繕う。

「そうなの?ふ~ん、変なの!」
「いいからいいから。な、ちょっとだけ!」
「ん...」

ティファは両手を膝に揃えてアッサリと目を閉じてしまう。

(あ~あ。何で信じちゃうかねぇ、こんなコテコテの嘘...)

目前に差し出されている唇は形が良く柔らかそうで、疑いの欠けらもなく閉じられた瞳から伸びる睫毛が際立って長かった。

(ヤバい...めっちゃ可愛い!)

クラウド、悪いな...
ティファもクラウドの事を気にしてそうだったけど、今夜俺のテクニックに首ったけになってしまうかもしれない。いただきます!心の中で丁重に手を合わせ、そっと目を閉じ彼女に近づきあわや唇同士が触れ合うかと思われたその時、ザックスは自らの喉仏に冷んやりと尖った何かが当てられるのを感じ取った。そろりと首を90度回転させると、そこには顔面に静脈を浮き上がらせた村長が佇んでいる。

「キ サ マ は こ こ で 俺 の 娘 に 何 を し よ う と し て い る?」

「...パパ?」目を開けたティファから慌てて離れるが、父親のナイフは鼻先に突きつけられたままである。今にも振り落とされん勢いでギラリと光るそれに、ザックスは場違いにも今まで自分を数多の機会救ってきた開き直りでこの場を乗り切ろうと試みた。

「ははっ。こ、こんばんは...」
「神 羅 の 輩 は...ど い つ も!こ い つ も!」

当然そんなものに効き目がある訳はなく、鋭利な刃物はソルジャーと言えども柔らかい肌にめり込んでいく。

「ティファ!お前もだ!!俺のいない間に家に男を連れ込んだりして、いったい何を考えている!!」

家主が勢い良く振り返る弾みに凶器が鼻を掠め、ザックスは「ひっ」と縮み上がった。ティファは突如飛んだ罵声にビクっと縮こまるが、「お前は明日から一週間外出禁止の携帯没収だ!!」との厳しいお達しに「は?なんで!?私、怒られるようなこと何もしてないわ!!」と負けじと声を張り上げる。

「とっとと出てけっ!!」

子犬と呼ぶには盛りのつき過ぎた青年は、お尻を蹴られて追っ払われ超特急で逃げて行く。息を荒げながらその様子を見届けると、ティファの父はすぐ近くの暗闇に潜んでいた影に気付く。

「その、お前...」

エホンと咳払いをし、幼い頃から冷たい態度で接し続けた少年を初めて褒めてつかわす。

「...よくやった」

クラウドは深く頷くと、無言のまま暖かい光の漏れる隣家の扉に消えていった。

相変わらず何を考えているのかサッパリわからない、そしておそらく我が娘にただならぬ執着を抱いているだろう彼はやはり油断ならないが、密告者との間に一夜限りの停戦条約を結んだことは実に英断であった。仮眠中に急遽叩き起こされて半死半生の部下を屋敷に待たせている彼は、最近武術を身につけ反抗心も増してきた手強い娘から直ちに携帯電話を取り上げるべく、指をポキポキと鳴らすのであった。


******************


奇妙な利害一致が今ここに...


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