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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Jelly × Jelly ll

お客様へのヤキモチ、ティ→クラ編。



Jelly × Jelly ll


帰宅してからたっぷり数時間、クラウドは彼女の不機嫌の理由に気付けなかった。いや、むしろ不機嫌である事にさえ気付いていなかった。

「はい、これ。また頼みたいって」

カタリと乾いた音を立てカウンターに置かれる小型の機械。本日配達途中に何処かで紛失した携帯電話は持ち主の留守の間に自宅へと無事に帰り着いていたようだ。

最初に異変に感づいたのは、懸念事も解消し憂いなく夕食を堪能し終えた時だった。毎食後、必ず伝えるようしている礼を言おうにも手が空かない振りでかわされとんと目が合わない。店を閉め寝支度を整えた頃には気のせいでないと確信したが、そうなると今度は身に一切の覚えがないクラウドが機嫌を損ねる番だった。

「俺...何かしたか?」

クラウドのしかめっ面に小さく息を呑んだティファは何も返さない。一晩寝れば虫の居所も治るだろう。そうふて寝を決め込もうとした時だった。幾分か落ち着きを取り戻したのか、このままではまずいと思ったのか、落とした視線を上げ物言いたげな視線を向けてくる。その先には夕刻客から彼女の元へ届けられた携帯があった。

「...部屋の中に入ったのは嫌だったわ」

目線の延長上にある私物と発言内容がスムーズにリンクしなかったクラウドは怪訝そうに眉を寄せる。やがてティファが何を指しているかを悟るが毅然とした態度も崩さなかった。

「何もしないでほっとけば良かったか?」
「.........」

穏やかではあるが譲らない口調にティファの感情は行き場をなくす。クラウドは親切心からか弱い女性の元に届けられた重たい荷物を運んであげただけだ。どちらかと言えば気になったのは、その彼女がちょっとやそっとじゃないくらい綺麗であった事と、いかに彼が自分に良くしてくれたかをそれとなくアピールされた事。あれほど見目の良い女の子と空間を共にすれば彼だって悪い気はしなかっただろうし、ついつい特別待遇をしてしまったのではなんて勘ぐってしまう。

なにも本気で彼に気がある訳ではないだろう。自負を高めるために日常の些細な機会に登場するくだらないマウンティング行為。つまり常時異性からチヤホヤされているその女もティファを見て余裕を失った訳である意味名誉であるのだが、そんな複雑な深層心理を読み取るには彼女はまだ若過ぎた。

「それは...もっと嫌かも...」

「ごめん。何言ってるんだろうね、私...」あれほど憤慨していた心は瞬時に萎縮しだす。それを見てクラウドもしっくりこない何かを感じる。それは若い女の住居に上がり込む事を咎められる以上に、ティファに取り憑いているだろう抜本的に誤った思い込みだった。

「あのな、客に男も女もない。顔すら見てない」

「...それとだな、見た目で好きになる訳でもないぞ」自然と付け加えられた一言は、類い希なる美女である彼女を前に説得力に欠けるが、事実だった。無論外見も重要な一要素ではあるのだが、それとは別次元のより強烈な何か。慈愛溢れる温厚さや高潔な内面、と言いたいところだがそれもこうして共に生活をしだした後になってひしひしと実感しだしただけな気がする。

「ティファだから...」

漏れ出た一言に尽きる気がした。二十年も昔、話した事もないティファの何をわかっていただろう。幼い時分の彼女は年相応に我が儘でもあったろうがそんな所さえ盲信的に惚れ込んでいた。何も自分より頭一つ上背のある娘を好きになる事もなかろうと自らを呪ったり、彼女の身長が止まるよう祈った回数は数え切れない。当然そんな奇跡は起こり得なかったがそれでも衝動が収まる事はないし、一方で明日唐突に彼女の身長が20cm低くなろうが容姿にちょっとした変化が起ころうが支障ないだろう。理屈じゃない。気付けば絶え間なく目で追って、何気ない挙動に一喜一憂して...

「...私だから?」

言葉足らずな表現をティファは可笑しそうに笑う。なんともチンプンカンプンな説明であるが、言いたい事はわからないでもない。荒削りだがストレートな愛の告白に彼女は少しだけ元気を取り戻したようだ。

「俺も何言ってるんだろうな」
「ううん、嬉しいよ」

肩で大きく息をついたティファは平常通りの表情を取り戻す。「私、心が狭かったね。ごめんなさい...もう気にしないから」半ば無理やり気持ちを切り替えただろう物分かりの良い態度にあまのじゃくは一抹の寂しさを覚える。そして猛烈な違和感に襲われた。俺はこの人にこんな顔をさせたい訳じゃない...

「やめた。今後は女の部屋には上がらない事にする」

決めてしまえばそこに何の問題があろう。本当に困ったなら他にいくらでも解決方法はあるし、実は有り難迷惑な恐れさえある。忘れ物を届けた女の挙動にみる限り思わぬ面倒に繋がる可能性だって否定出来ない。何よりそんな簡単な事で愛する人の気が休まるなら安い事はない。

「う、うん...でも本当に困ってる人は助けてあげて」一転恐縮しだすティファは「けど、ちょっと安心しちゃう...」と恥ずかしそうに俯き頬を染める。その反応に満足し、ここぞとばかりに交換条件を差し出してみた。「あのさ、うちにもよく来るだろ。酒屋とかが...」決まり悪そうに切り出された内容にティファは目を瞬く。

「大丈夫だよ、私力持ちだもん」
「それでも放って置けないのが男だ」
「心配しないで。ちゃんと断ってるから」

やっぱりそんな所は重々抜かりない。気を良くしたクラウドはティファを引き寄せ自らの胸を枕にさせ寝床に倒れ込んだ。一件落着しつつも引っ掛かるのは一時前の言い回し。

「ティファより可愛い客なんていなかったと思うけど...」
「しっかり見てるじゃない」
「...俺なりの褒め言葉だ」
「怪しいなぁ」

頬を膨らませる彼女に湧き起こる充足感。俺も捨てたもんじゃないみたいだ。思いも寄らない所から発生した揉め事には全面的に折れる結果となったが、気分は上々だった。


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