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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Calling 4


Calling 3、の続きです。






鳴らない電話。

屍の様に横たわるそいつは、俺の唯一の友達だ。


Calling 4


「ティファ...さん」

彼女の名を呼ぶのは、これが初めてだった。

話があります。
営業後に時間を貰えませんか?

「今日は無理だけど...明日の晩、少しだけなら」

今夜はアイツが帰ってくるんだね。
それでも、 俺のために時間を作ってくれる余地があるなんて嬉しいよ。

話は店の外でした。
告白なんていつぶりだろう。
もう夜中だ。
時間をとらせちゃいけない。
端的に伝えた。

“あなたの事が好きです”

「初めて見た日から」

あなたの心に誰がいるかも知ってます。
でも諦められません。
俺がそこに入り込める可能性は、1%でもありますか?

「...彼女は?」

「え?」

「彼女は知ってるの? あなたの気持ち」

「いや、まだ...」

「それって...失礼じゃないですか?
...私にも。彼女にも。
だって私に断られたら、あなたは何事もなかったかのように彼女の元へ帰るんでしょう?」

「あ...」

...図星だった。
顔が赤面する。
瞬間、俺の中で何かが弾けた。

「言ってたじゃないか、そういう男が好きだって」

虚ろな眼差しの彼女。

やめろ。

止まれ。

「あの金髪の男だろ?
君からの電話に出なかったのは」


「あいつだって...俺みたいな最低野郎に決まってる!!」


俺は卑怯だ。
すがりついたのは、一見完璧に見えた奴と彼女の間に唯一存在するだろう “弱点”。
俺にとっては、最大の強み。

期待通り、あの特徴的な紅い瞳にみるみる溜まる涙。

「何も...」

大粒の雫が瞬きと共に滑り落ちた。

「彼の事...何も知らないくせに、いい加減な事、言わないで!!!」

彼女は背を向け店の中へ走り去る。

お...

...終わった。

その場にしゃがみ込み、頭を抱える。
何もあそこまで言うことなかったんだ。
俺はただ、チャンスさえ貰えれば...

(失礼じゃないですか。
...私にも。彼女にも)

ああ、本当にその通りだよ。
ハッキリ言うんだな。
それでこそ、俺の好きになった人だ。

“二兎を追う者は一兎も得ず”

順序が逆になったけど、それ相応の罰を受けるよ。
携帯を取り出しメールを打った。

“別れよう”





毎晩飲んだくれ、公園のベンチで眠る。

恋人の出勤が俺より一時間早いのが幸いだった。
彼女が家を出るのを見計らって部屋に入り、シャワーを浴び職場に向かう。

携帯の電池は、彼女からの何度目かわからない着信に耐えられず、切れた。
そのまま鞄の底に沈んでる。

彼女は鋭い。
きっと誤魔化せない。
だって何て言う?

“好きな人が出来たから別れてくれ? ”
“その人には振られたから、寄りを戻そう?”

彼女はこのまま俺を忘れる方が幸せだ。
かといって、パタリと電話がかかって来なくなるのも精神的にキツかった。

しかも...俺の心は未だにあの人の泣き顔で一杯なんだ。

(謝らなくちゃ...)

性懲りもなく、俺はまだまだ奇跡が起こるのを信じてた。





あの日から、一週間が過ぎた。

今夜は土砂降り。
いつものベンチは使えない。

駅前のカフェを追い出され、改札へ続く階段に腰掛ける。
ふと目に飛び込んでくる公衆電話。
財布に忍ばせていた一枚のカードを取り出した。



『俺です』

明るい声で応対した彼女は、相手を知ると押し黙った。

『この前は...酷い事を言ってごめんなさい』

彼女もやっと喋り出す。

『いえ、私こそ取り乱して...
もう気にされないで下さい』

『あの、また店に行ってもいいですか?
俺...彼女とは別れました』

『それはもちろん結構ですけど...』

次の言葉が怖かった。

『私があなたの気持ちに応えることは、ありません』

『...絶対に?』


『絶対に』


いつも物腰柔らかな彼女は、語気を強め言い切った。





どうやって電話を切ったか分からない。
元いた階段でうなだれる。

頭には二組の幸せそうなカップル。
どう見てもお似合いだ。
俺はそこにはいない。

俺は一人、か。

「見つけた」

聞き慣れた声に肩を揺らす。

「帰ろう?」

温かい口調が濡れそびれた冷たい心と体を包むが、顔は上げられない。

「何がいいんだよ...ここまでされて」

「そうだね」

彼女は淡々と続ける。

「他の人が、好きなのよね?」

知ってたのか?

「でも、望みがないのよね?」

もう話すこともないな...

「...じゃあ、何で探した?こんな最低男」

「確かに最低だよ?
これからだって、心から許せるかどうかはわからない。
でも...
それでも、今まで与えてもらった物の方が多いもの...
簡単に忘れるなんて...出来ないよ!」

...与えたもの?

「もう、なくなっちゃった?」

「...何が」

「私が、あなたに与えたもの」

そんな訳ないさ。
そうだったら、彼女と会った瞬間別れてる。

「会わせる顔がない」

俺は突き放すでもなく、媚びるでもなく、はぐらかす。

「絶対、連れて帰るから」

彼女は力強く断言する。
おそらくうなだれた俺を真直ぐ見据えて。

「これからも、あなたに与え続けて...
きっとその人を越えてみせる」

「...無理だったら?」

「その時は......
潔く、こっちから振ってやるわ」





女って、どうしてこんなに強いんだろう。





Calling 5に続きます。





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