Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Calling 2
Calling 1、の続きです。
こんなにも、確かに見えるあなたの気持ち。
それなのに私の瞳は何を必死に探しているの?
Calling 2
「ありがとうございました。
...おやすみなさい!」
怒涛の一日だった。
客が多かった上に、今夜は子供達はバレットのところにお泊まりだ。
朝から二人のリュックに荷物を詰め、一人で店を開け、クラウドが帰って来てご飯を用意をして...
それでも、私はこんな日を好む。
仕事を持つ身の人になら、少なからず同意してもらえるだろう。
手持ち無沙汰に時計と睨めっこをしてるより、やることに追われ、気が付いたら全て終わってるくらいの方が清々しい事は多々ある。
入り口の鍵を閉め、店内を振り返った。
途端に沸き起こる緊張感。
‘一週間ぶりなのに?’
(やだ、私...一週間ぶりだから何だっていうの!?)
顔が赤いのを彼に悟られないよう俯き店内へ戻る。
「洗い物、助かっちゃった」そう早口で伝え、シンクにいる彼と背中合わせに立った。
(本当は、顔が見たいんだけど...)
しかし、こちらがお見送りをしている間にだいたいの事は片付けてくれたのか、いざ調理台を見渡しても仕事はなかった。
目の前のピカピカの鍋一式に、手持ち無沙汰を告げられる。
クラウドは意外と要領が良い。
(さっきはビックリしたな)
一瞬の出来事だったから、誰にも見られなかったに違いない。
基本的にクラウドは人前で私の体に触れてくるような人ではなかった。
それ故に先程の行為からは、彼の確固たる意思が感じられるようで...
キュッ...
シンクを流れる水の音が止んだ。
空気が動く。
「クラウド?ありがとう。先にお風呂...」
先手を打とうと慌てて動いた口は、次の瞬間その機能を停止する。
背後から巻き付く彼の腕。
それだけならまだいいが、その手は迷う事なく私の胸元へ進み、強い力でそこを揉みしだきだした。
「今日、営業中...ずっとこうしたかった」
(ちょっ...!!)
ダイレクトな物言いと、キスから始めてくれるいつもの彼とのギャップに戸惑う。
右手が襟ぐりから服の中に差し込まれた。
下着も通り越し、彼の指が胸の谷間に浮かぶ汗で滑る。
「く...クラウド!?
ちょっと待って!私今日すごい汗かいて...」
さすがにシャワーくらいは浴びさせて...
「今、ここでしたい」
(ここでって......ここ!?)
お風呂に行くことも許されない上に、彼の口から出た衝撃的な要求に唖然となる。
私達はまだベッド以外の場所でその行為をした事はなかった。
(ど...どうやってするんだろう...?)
そんな的外れな疑問に思いを馳せている間にも、クラウドは胸をまさぐる。
今度は左手が服の下から入り込んできた。
胸の中心を少しキツくつねられる。
「んうっ...!」
不本意にも声が出た。
久しぶりだ。
しかもすごい力。
「ティファ...もっと言って」
顔がかぁっと赤くなる。
背を向けてはいるが、ここは明るすぎだ。
「...っ!」
クラウドの舌が耳に入り込んだ。
鼓膜に響く、唾液の音。
彼は私がこれに弱いのを知っている。
「ね...ねぇ、クラウド...
お願い、ベッドがいい...」
もっと穏やかな気持ちで愛し合いたいよ...
いつだって私が本気でする頼み事は聞いてくれる彼。
私はまだ望みを捨てないでいた。
しかし次の彼の発言は、思いも寄らないものだった。
「...濡れてたら、ここでするから」
容赦なくスカートをたくし上げ内ももに手を這わせ、人差し指を下着の隙間から無理やり差し入れて来る。
結果は明らかだった。
(そういうのとこういうのって、違うのに...)
恥ずかしさに顔を赤らめながらも、気持ちの擦れ違いに唇を噛み締める。
私が求めているのは身体の快感ではなく、心の快感だ。
抗議は止まないが、何を言っても無駄な様子に全てを委ねることにした。
「はっ...!はぁっ...はっ...!」
額に落ちる、彼の汗。
辺りに充満する、甘ったるい空気。
さっきまで背中にひんやり冷たかった調理台には、もうすっかり私の熱が移ってしまっている。
汗で身体が滑って、心地悪い。
激しく私の中を行き来する彼。
私は電気のついた中、中途半端に服を脱がされた体を手で覆うのに必死だった。
そんな私をからかうようにクラウドは言う。
「良い眺めだな」
(や...やだ!!!本当に今日はどうしちゃったの?クラウド...)
しかし改めて見上げた瞳は歪んでいる。
無意識に彼の頬に手を伸ばした。
「クラウド...辛そう...」
ハッと我に返り、動きを止める彼。
何かあったの?
「今日...」
「...ん?」
「いや、何でもない」
「? 言ってよ...」
「大した事じゃないんだ」
(私にとっては大事になってるのよ!)
「なら、もういい...!」
腕を使って腰を引き、彼から逃げるそぶりをした。
慌てる彼。
「...今日...カウンターにさ、居た客いるだろ」
若くて、茶髪で、割と男前の。
と続ける。
最近良く来るあの人の事だろうか?
「うん...」
「あいつは...ティファの事が好きだ」
「...は?」
思い返してみる。
確かに最近良く顔を見せる。
しかし彼は言っていた。
“家に帰り辛いからだ” と。
それ以上に私には、彼が私に関心を向けているとはとても思えなかった。
目も合わない。
話しかけてもこない。
もっと積極的な客は山程いる。
「...何でそう思うの?」
「ティファの目を盗んで、ずっとティファを見てた」
「...気のせいじゃない?」
「胸も見てた」
「やだ!馬鹿言わないでよ!!」
...これって、ヤキモチ焼いてくれたのかしら?
そう思うと体の中心がほっこり暖まる。
あまりないことだ、正直嬉しい。
彼の頬に手を当て直す。
「私、あの人の名前も知らないんだよ?それに...」
他の人が入り込む隙間なんて、全然ないんだから。
そう微笑むと、彼は表情を緩め「うん...」と言い続きを再開させた。
私もやっと、そこから愛を感じとり始める。
「さっきは言うこと聞かないでごめん」
そう謝罪し、あの後彼はもう一度私を愛してくれた。
今度は私の望んだ方法で。
暗闇に響く深い寝息。
そうだった、カウンターで眠りこけてた程だったのよね。
それでも求めてくれた。
一時期では考えられないくらい、今、私と彼の距離は近い。
しかし...
(...今日...カウンターにさ、居た客いるだろ...)
クラウドの口から出てくる人は、出来たらあの人であって欲しくなかった。
あの人は、私に余計な気持ちを思い出させる。
彼が “家出” から帰って来た時、正直私は今のような未来を期待してはいなかった。
結果的には正解だったのかもしれないが、あの後帰って来た彼に、私は極々普通に接した。
責めることもなく。
泣くこともなく。
逆に、特段喜ぶこともなく。
あたかも何事もなかったかのように。
それが良かれと思いやっていた訳ではない。
向き合うのが怖かっただけだ。
私が彼に与える事の出来なかった癒しを、彼は他の女性に求めていた。
それはまだいい。
彼の中で私と彼女の役割は違う。
でも私からの電話が鳴っていた時、あなたは何を思っていたの?
あの人の手の中で震えていた携帯電話。
あの向こうにいたのは、少し前の私だ...
ううん。もう、やめよう...
今が良いなら、それでいいじゃない...
それを最後に、意識を手放した。
Calling 3へ続きます。
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