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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

過ち、その後に


レノ視点。
イリーナも出てきます。
ちょっぴりレノイリ?

レノって、頭の中でもあの喋り方なのかしら?
さすがに違いますよね。


新羅の罪。
アバランチの罪。
今もなお苦しむ人々。








美味い飯。
美味い酒。
美人の店主。

三拍子揃ったこの場所が、今は無性に居心地悪い。
理由はただ一つ。

天然の碧さとは異なるあの瞳から、あからさまに発せられた拒絶の色。

「お客様は神様なんだぞっと」


過ち、その後に


「クラウド!」

普段はあまりない事なんだろう。
周りの客たちの物珍しそうな視線が飛び交う。
そう叫ぶ女店主の呼び声には耳も貸さず、そいつは店の奥の扉に吸い込まれ、再び出てくることはなかった。

「ごめんね。
クラウド、ちょっと機嫌が悪かったみたい」

「あんたが気にすることじゃないんだぞっと。
少なくとも俺はここに、あいつと楽しく飯を食うために来たんじゃない」

それはそうかもしれないけど...でも、本当にごめんなさい。
最後にもう一度謝罪の言葉を述べると、自らの仕事へ戻る店主。

こいつら、相変わらず社交性のレベルに差があり過ぎるな。
はたからみると、ちぐはぐこの上ないカップルに突っ込みを入れていると、少しだけ気が晴れた気がした。

ティファにはああ言ったが、本当はもう少しマシな反応を期待していた。

仕事から帰り、店に俺の姿を確認するや否や、苦虫を噛み潰したような顔をして俺の前から消えたアイツ。
もちろん、俺の掛けた声に対する反応もゼロだ。

「...この先、許してもらえる日なんて来ないのかもな」

それくらいの事をやってきた。

世間の新羅やアバランチに対する認識は、いまだ冷ややかなものだ。
しかし、情勢の混乱の中で行われたあれらの行為には、社会的な制裁が与えられた訳ではない。
誰もが冷静な判断力を失っていた時代だったんだ、との解釈だ。

お陰で俺は、今日も美味い飯に好きなだけありつける。

「はい」

目の前に置かれた皿は...あれ、こんなの頼んでないぞ。
オーダーミスか?

「サービス。
まだ入るでしょ?よかったらどうぞ」

「あんた...気を使い過ぎだぞっと」

「お金をいただいているお客様に、嫌な思いさせたまま帰っていただく訳にはいきません」

仕事ですから!
と、いつか俺がウータイで変態オヤジに言った台詞を使い回す。

...この店は、アイツのやらかした失態をいったい幾ら負担してるんだ?
噂によると、お気に入りのバイクの代金も、ここの飯代をあてがったと聞いた。

とことん甘やかされてんな。
同じ男の身としては、あまり面白い話ではない。

...何が良かったんだ?顔か?
急に目の前の美しい元宿敵が、相当な駄目男好きに見えてきて、思わず同情の眼差しを向ける。

他にも山ほど選択肢に恵まれてそうだがな。
例えば俺の相棒とか。
...顔で選んでるなら駄目かもしれないが。

「本当に嫌いな人だったら...きっと店にも入れさせないわ。
時間がね、必要なだけだと思うの」

彼は色々消化するのに時間がかかる人だから。
そう付け加えるティファに、取り繕う様子はない。

「ズルズルズルズル...だっけ?
全く、誰がアイツの重い図体おぶってここまで運んで来てやったんだぞっと」

いけね、ルードがお前を運んだこと、バラしちまった。
そう言うと、それは知らなかったわ、とティファは声を立てて笑った。

「勘違いするな」

声の主は誰だかすぐにわかった。
もう今日は拝むこともないだろう、そう思っていたがな。

「あの時の事は感謝している。伝えていなくて悪かったな」

そう言いながら、俺の座っているテーブルまで来ると、ティファに視線で指図する。「仕事に戻れ」と。
「ごゆっくり」俺に微笑み、カウンターへ引っ込むティファ。

「それと...俺は別にアンタの事を責めている訳でもない」

でも、テーブルに座る気はないみたいだな。

「俺だって爆弾のスイッチを自らの手で押して、関係のない人を殺した犯罪者だ。
ソルジャーと自称して、セフィロスに黒マテリアを渡したのだって、笑えない」

「ふぅん、それは意外だったぞっと」

じゃあさっきの邪険な態度はなんなんだ?

「ただ、全てを認めたからって、アンタと馴れ合う気は毛頭ない」

まぁな。誰と仲良くするかなんか、結局は好みだ。
気が合わないんだったら残念だったよ。

「...うなされるんだ」

そこまで冷静な顔で淡々と語っていた奴だったが、急に蹴っ飛ばされた仔犬みたいな表情になる。

「...お前がか?」

「なんで俺が。ティファだ」

カウンターに目をやる。
こちらの会話は聞こえてはなさそうだ。

「ティファは、アンタには何でもないように振舞ってるんだろ?
でも、きっとアンタを見たら絶対に思い出している。
プレートの下にぺちゃんこになった友達や、会ったこともないデンゼルの両親の事も」

...わかってるよ。

「許すとか、許さないとかの問題じゃない。
ただ、ティファの心に土足で入って来て欲しくないんだ」

そこまで聞くと、俺はスーツのポケットに生身で入れている金を適当に掴むと、勢いよくテーブルの上に置いて立ち上がった。
これだけありゃ、足りてるだろ。

「苦しんでるのは自分だけ、とか思ってるんじゃねぇぞっと」

忘れてないさ。
だから今日も俺は仕事人間だ。
忘れてたら、ここにだってきっと来やしない。
何でもない風に接してやるのが、俺なりの償いの方法だ。

「...また来るからな」

そう捨て台詞を吐いて、出口へ向かう。
と、耳には奴の舌打ちと、残された者達の会話が入って来た。



  え、レノ帰っちゃったの?
 
  大丈夫だ、金は受け取った。
  これは...俺が全部食う。

  何が大丈夫なのよ!
  営業妨害反対!!


...くそっ。
そう言えば食い忘れた。


夜中に突然泣き出すティファ。
きっとアイツは、そんなティファをずっと抱きしめてやるんだろう。
さっき見せた仔犬の顔で。
ほんの数ミリだが、ティファがアイツを選んだ理由がわかったかもな。


と、そこで自らの腹が豪快に鳴る...
携帯を取り出し、迷わず着信履歴の一番上を押した。

「飯食いにいくぞっと」

「は?
え、先輩。大分前に出て行きませんでした?」

「食おうと思ったら、店の店員に食われたんだぞっと」

は?何ですかそれ?
と、素っ頓狂な声。

「おい、イリーナ。
お前はなんで今も新羅で働く?」

「いきなり何言ってんですか。
今日の先輩、変ですよ」

良いから答えろ、先輩の命令は絶対だぞっと。
そう言うと、イリーナはしどろもどろ話し出した。

「そりゃ、新羅に名誉も権威もなくなった今となっては...自分の...尊敬する人達が、まだそこにいるからしかないですよ...」

ツォンさんとかツォンさんとかツォンさんとか!と、まくし立てる。

「...最後のは余計な一言だぞっと」

「...本当の事ですもん。
あ、でも一応先輩もその中に入ってるんですからね!」

だから、信頼を失わないためにも、しっかり仕事してください。と、また余計な一言。

「15分待ってやるぞっと。
いつものところな」

「ちょっと先輩!私まだ仕事があ...!」

耳元で叫ぶイリーナを無視して、一方的に電話を切った。
多分掛け直してはこない。


何が正解かなんて、今だってあやふやだ。
でも、俺が今日も止まらない理由は、これだけあれば十分だ。

...まぁ、というか、単純に一度やると決めてやり始めた ‘仕事だから’ な。


******************


ヒットラーが自害した時、その部下達は途方に暮れたんじゃないだろうか。
一人の過激な独裁者が罰せられるのは当然ですが、では、その下で働いていた部下達は、どこまで罰せられる?
生きていくために、お金のために、あるいは洗脳されて、従わざるを得ない時だってあるでしょう。

ティファがやった事も簡単に許されることではないのはわかるのですが、私にはどうしても気の毒なのです。
15歳で親を切られ憎しみに駆られ、アバランチ以外に居場所を見つけられなかったであろう彼女が。



ルーファウス「どうした?盛大なクシャミだな。
噂でもされたか?」

ルード「......」
(...レノ?)


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