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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

3rd Gold Night ~後編~


3rd Gold Night ~前編~、の続きです。







彼女は私達に多くを与え過ぎた。

そして多くを奪い去った。

星の命と引き換えに失ったのは、彼女自身。

だから彼女は私達を幸せにし、不幸にもするんだ...


3rd Gold Night ~後編~


「そうだ」

クラウドの足がふと止まる。
そして “良いこと思い付いた” そんな風に微笑んだ。

「ティファ、ゴンドラ乗らないか?」

その提案に素直に従いつつも、私の心は今日初めて曇る。
彼は何故、ここにゴンドラがあるって知ってるんだろう...





木製の可愛らしい小箱。
それは私とクラウドが腰を降ろすと、二人の体重差でしばらく揺れ続けた。
一面の窓には色とりどりのネオン。
人工的なのにどこか幻想的なそれは、夕闇に映え美しさを際立たせる。
彼は窓枠に肘をかけ、ゆっくりと姿を変える景色に見とれていた。

「懐かしいな...」

その台詞でそれは確信に変わった。
答えを知りつつも問う。

「誰と乗ったの?」

「ん?ああ、エアリスと」

何てことない風に言ってのけるクラウド。
彼はぼんやりと、ゴンドラの外に移ろう光を目で追う。
七色に照らされた横顔に、願った。

クラウド?
ちゃんと私を見てよ...

だけどその後彼の瞳が私に向き直る事はなく、彼自身も遠くへ行ったまま私達はその時を終える。
ゴンドラが頂上に着くと彼は静かに口を開いた。

「ここで “本当の俺に会いたい”って言われたんだ」

「初めて来た時はケットに言われた。
“最も大切なものを失う”って」

目を伏せ、自嘲気味に笑う。

「一つは...戻って来たんだけどな」

ああ、そうか。
ここは彼と彼女の思い出の場所なんだ。

そこまで悟ると私の意識も虚ろになり、遠いあの日へ飛んだ。
クラウドが悲しそうに発した台詞を胸に...

“今ならわかるよ。
エアリスが言ってたことがなんだったのか...”





心をそよがすのは、甲板を突き抜ける風。

“ティファと一緒だからな”

一緒だから何なの?
私は気付きもしなかった。
彼女が見てた “本当のあなた” に。

“もっと明るくて強い”

買い被り過ぎだよ。
ただ醜い心をあなたから隠してるだけ。

“俺が、思い出させてやる”

ひどい女でごめんなさい。
思い出せない一番の理由は...

.........あなたなんだよ。





「ティファ?」

もう5、6回目になる彼からの呼び掛けに、私は頑なに応えない。
背後にこれ見よがしな溜息が聞こえた。

子供っぽい意地を張るには訳がある。
私は自分のためだけに腹を立てたんじゃない。
嫉妬と混ざり合うのは彼女への同情。
私を不快にさせたのは、彼女ではなくクラウドだ。

初のデートの最中に別の女性とのデートを思い出し、それにふける無神経さに。
そしてそれを全く悪びれもしない鈍感さに。

あなたが自分で気付かなきゃ意味がないんだよ?
私が言ったって、三人とも幸せになんかなれやしないんだから。

どうして私の気持ちに気付かないの。
どうして彼女の気持ちに気付かないの。

彼女は好きな人を気遣って、その命を落としたのに...





「父ちゃん、お酒はもうストップだよ!
この後もまだまわるんだからぁ!!」

必死に抗議するマリンをガシガシ撫で、「大丈夫大丈夫!!心配するな!!!」とバレットはユフィのグラスに酒をつぎ足す。
ユフィは私の白い目もよそに赤ら顔で上機嫌だ。

「今度はクラウドが面白いとこ連れてってくれるってさ!」

「...揺れない所ならな」

ナナキがユフィの吐く息に顔をしかめた。
それを見て昔と同じ溜息をつくが、渋々その手からお酒を取り上げるのはやめにする。
自分の思うまま事を進めるのが好きな彼女。
今日は柄にもなくマリンの従事を務め、くたびれたんだろう。
彼女は私達が止める隙もなく「あぁ、喉乾いたぁ!」と一杯目のビールを空にした。

先程からユフィの口は止まらない。
「乗り物酔いしない所ねぇ...」と首を捻り、いきなり叫ぶ。

「そうだ!
クラウド、マリン連れてティファとアレやってきなよ!」

隣のマリンの手をとり、その甲にふざけてチュッとした。
彼は料理を口に運ぶ手を休めることなく淡々と言う。

「なんだ、観てたのか」

「うぷぷ。
あの時のティファの死にそうな顔ったらさー」

「やめてよ、ユフィ」

うんざりしながら彼女を制す。

「死にそう......って?」

「とられると思っちゃったんだよね~?
このヤキモチ焼きさんは!」

「はぁ?」
「ユフィ? お願い、本当にやめて...」

泣きたくなった。
彼は平然と言い放つ。

「お遊びだろ、あんなの」

「うわ~~失礼な奴!!
エアリスが天国で泣いてるわ」

「なんなんだよ、さっきから...」

「あんたまさか、気付いてなかったわけ?」

そしてユフィはいとも簡単にバラしてしまう。
彼女の命を掛けた恋を。
長らく私を苦しめ続けるそれを。


「好きでもない人と、あんな事するわけないじゃん!」





“バレットとユフィと部屋に戻るから、クラウドはナナキと一緒にマリンをイベントスクウェアに連れてって貰える?”

相変わらず無愛想に言う私に、今度は彼が返事をしなかった。

あの後あんぐり口を開け硬直したクラウドは、ユフィの呆れ声で我に帰る。

“知らなかったのはクラウドだけだよ”

ハッと私に視線を送るが、マリンの世話をするフリをし、それをやり過ごした。
見ずとも感じる、険しい瞳。

お酒臭い寝息を立てるユフィに毛布をかけ、隣のベッドを見つめた。
本当はここで寝たい。
けれど楽しい旅の最中にそれをマリンに提案は出来ない。
重い足取りで隣の部屋へと向かう。





クラウドは一時間もすると帰って来た。

「マリン、楽しんでた?」

そう聞く私を無視し、背を向けベッドに座る私の正面に回り込み、自分のベッドに腰掛ける。
両手を組みしばらく下を向いていたが、やがて咎める様な眼差しを持ち上げた。

「機嫌が悪い理由は、さっきのか?」

顔を強張らせたまま動けない。
否定するべきなのだろうが、他に不機嫌の理由など用意できなかった。
彼が大きく息を吐いた。

「...くだらない」

辟易した様に吐き捨て腰を上げ、クラウドはシャワーへ向かう。
その背中に放った言葉には抑揚がなかった。

「親友と同じ人を好きになって思い悩むのは、くだらない?」

私は沢山苦しんだよ。
見せなかったけど、きっと彼女だって...

「ティファ?」

彼が振り返る。
私に表情はないが、スルリと一筋の涙が頬を伝ったのがわかった。

「彼女が凄く素敵な人だから不安になるのは、そんなにくだらないかな」

あなたが彼女の手を取ってそこにキスした時の、私の気持ちがわかる?
彼女の気持ちがわかる?

彼は何時の間にか私の前に戻り、無表情で私を見下ろしていた。
泣きながらも、睨むように彼を見上げる。

「私のこと、好き?」

彼は一瞬驚き、続いて怪訝な顔をした。

「...一緒に住んでる事で、答えにならないのか?」

感情の高ぶった口は止まらない。

「じゃあ...」

私とエアリスの...

「どっちが...大切だった?」

彼は微動だにしないまま、感情のない瞳で私を真っ向から見る。
やがて冷え切った声を絞り出した。

「なら...俺も聞きたい」

「ティファは俺とエアリスの...どっちが大切だったんだ?」

絶句している私に向かい、なおもゆっくりと続ける。

「俺はエアリスが大切だ。それは彼女が生きていようがいまいが変わらない」
「でもティファも大切だ。失いたくないから側にいる。それも彼女が生きていようがいまいが変わらない」

「それじゃ...駄目なのか?」

どんなに意地悪な質問を投げたって、彼の口から彼女を否定する言葉は出ない。
それを私も望んでいるはずなのに。
だって彼からの質問にも答えはない。

私に出来る事はただ一つ。
彼の中で永遠に咲き続ける彼女を、彼ごと愛すだけ。
そしてそんな私を彼に愛して貰うだけ。

それは簡単でいて、難しい。
私たちは女同士。
同じ人を好きになった。

それに彼女はもういない。
だから私は大切なあなたが、彼と一緒の私を見てどんな顔をしてるのか...
それを許してくれたのか...
もう、永遠に......わからない...





遠くに花火の音が聞こえる。

目の前には、悲しそうに私を見下ろす、彼女が会いたかった “本当の彼”。
彼の前には涙を落とし続ける私。
欠けているのは彼女だけ。
あの日から、大きくバランスを崩した私達。

今すぐあなたがフワリと舞い降り私達を優しく包んでくれたなら...
...私はもう、彼を丸ごと愛す事を迷わないのに。


でもどんなに願ったって...

そんな奇跡は、起こらない。


******************


嫉妬と共にティファを苦しめるのは、天国のエアリスが自分の恋が実った事を心から祝福してくれてるかどうか不確かな後ろめたさではなかろうか?
少なくとも私は親友兼恋敵を失ったらそう思います。

ティファはエアリスが生きてたら、彼女にもクラウドとの可能性があったと思ってる。
しかしエアリスは自分の想いを伝えるチャンスを逸した。
一方の自分には、まだそれがある。
この戦いはフェアじゃない。

その一方でクラウドは、エアリスがいないからティファを選んだなんてさらさら思ってない。
そもそもエアリスの気持ちにすら気付いてなかった。
だからティファの気持ちがわからない。

エアリスは恋愛以前に大切な人であり、クラウドは彼女を想う事に何の罪悪感も感じない。
そしてそんな自分をティファにも受け入れて欲しい。

よってエアリスにヤキモチを焼くティファにクラウドがブチ切れるという、問題作となりましたが...
でも皆さん(女性と仮定)だって、死んでしまった男友達(あくまで友情)についてしんみり彼に語ったところ、嫉妬で返されたら “いや、それ違うでしょ” と、気分が悪くなりませんか?

だからといって、ティファが悪い訳でもない。
ティファも頭ではわかっているが、やはり女の子。
彼がどんな気持ちで異性である彼女を思い出してるかわからない不安は、ティファをやっぱり苦しめる。
どちらが悪い訳ではないのに、分かり合えないのが男女の醍醐味。

クラウドに “女性として愛してるのはティファだけ” と言わせてしまえば簡単な気もしますが、彼の中で “人として” と “女性として” の間に大きな区別はない気がします。
勿論ティファは唯一 “女性として” 大切な人。
でもそれ以上に “人として” 大切な人。
そこにエアリスとの優劣はつけられない。

“大切じゃない物なんかない” からです。

例えしずかちゃんがスネオと結婚したとしても、ジャイアンもかけがいのない仲間。
のび太はどうなるのというかんじですが。

最初の二回はエアリスと。※
三度目はティファとのゴールドソーサーの夜。

※妄想内のみ。GAME中は100%ティファ。

それがMAME的クラエアティ。
二人が本当に理解し合うまでは、とことん切なく。
そしてそれを乗り越えさせるのが好きなんです。
簡単には幸せにさせへんで~

とは言え、エアリスはほとほと呆れ果てた笑顔で、イライライライラ二人をじれったく応援してくれているはずなので、後々救済作品も書く予定です。




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