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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

腕の中の白い羽

セーフな気もしますが、事後なので念のためアウト。

裏度数【☆☆☆☆】



腕の中の白い羽


肌の敏感な部分をくすぐる吐息に、ティファは居心地悪そうに身をよじった。そして全身の力を抜きまどろみ始める体にやや焦った声をかける。

「ねぇ...ほんとにそのまま寝る気?」

クラウドはくぐこもった声を漏らし身じろぎするが、顔は持ち上げないままだ。

「落ち着くんだ...」

...私は落ち着かないんだけど。
だがしっかりと閉じられたままの瞳に諦めを覚え、何も言わず軽く溜息をつく。

「ひゃあ!!」

すっかり柔らかく戻った胸の先端を口に含まれ、つい大声が出た。

「なんだよ、さっきまでしてただろ」

安息を邪魔する騒音に文句を言い、あたかも自分の所有であるかの様にクラウドはそこを口内で弄び続ける。

「そんなこと言ったって...」

慌てて抗議しようとしたティファは、覗き込んだ先の、ふてぶてしい態度とは裏腹な表情を見て思い留まる。

ずるいなぁ...
普段自分に腕枕をしてくれるより頭二つ分ほど下方で横たわる顔は屈託がなく、それはティファの抵抗する気を急速に削(そ)いだ。

なんか、赤ちゃんみたい...  
自分の中に沸き起こる珍しい感情を楽しみながら、細められた蒼眼を見つめる。観念し、洗いざらしの無造作な髪に腕を緩く巻きつけると、クラウドは満足げに口角を僅かに持ち上げ、ティファの背に手を回し豊かな膨らみに鼻を埋めた。



“クラウド...どうかした?”

営業中、心ここにあらずな様子で食事に手をつける彼にかけた台詞を思い出す。クラウドはそれにハッと肩を揺らし我に返った。そしてすぐさま端的な返事が反射的に用意される。

“何でもない”

予想した通りの返答に肩を落とす。続く台詞を探すもそれは頭に上手く浮かんではくれず、気遣わしげに添えられた微笑にティファはとりあえずのところそれ以上の詮索は控える事にする。彼は内に秘めたわだかまりを他人にぶつけて解消するタイプの人間ではない。

一度止めた水洗いを再開し、ティファは未だ目の当たりにした事のないクラウドの家の外での日々に思いを馳せる。エッジに居を構えてから、更には配達業を始めてから格段に広がった彼の世界。時には彼女の入り込めない領域にまで。

一日の大半をそこで過ごす彼は毎日少なからずの人間関係を築き、彼なりに対処していくのだろう。そんな中で思いがけず何かしらの憂いを抱える日だってあるに違いない。普通よりやや傷つき易い心を持つ彼だからこそ、尚更。

ティファは鎖骨にこそばゆい金糸を見つめ、その奥深くに封じ込められているだろう凝り固まった何かに目を凝らすが、当然そんな努力は実を結ばない。

話して貰ったって、無駄なのかもしれないけど...
深みにはまり始めた思考は更に悪化の一途を辿る。過去にクラウドがやっとの事で明かしてくれた告白はどれも極めて男性的で、今でさえティファは当時の彼の心理を真に掴めた自信がない。

“誰に、だって?...わかるだろ?...ティファにだよ”

そもそも彼女にとって一人の人間を “認める” とか、“認めない” という概念は存在せず、そんな自分が無意識に長年誰かを苦しめていた事実は全く存外で...幼い頃の更に無頓着な自分では、益々彼の思い違いを解くのは絶望的だった気がする。

“俺には...誰も助けられないと思うんだ”

仲間や家族が守る対象なのはティファも変わらない。だが同時に支え合う存在なのに、クラウドはそれを許さず常に一方的だ。強さを取り戻し、無事家に戻って来てくれた今でも恐らくそれは変わってはいないのだろう。

再び脅威に脅かされた時、彼が今度こそ周囲の人を...自分を頼ってくれるかどうかティファには確信がなく、それは心に深刻な影を落とし続ける。

「人一倍弱いくせに、全部抱えこんじゃうんだから」

不意に口をついた不服の呟きに、眠りに落ちかけた彼はピクリと眉を揺らすだけで反応しない。そんな彼女を慰めるのは、クラウドが零した小さな言葉のみだ。

“落ち着くんだ...”

ねぇ、私は今、少しでもあなたの心に触れられてるのかな。そのあどけない姿を曝すのは私にだけで、この腕の中があなたの最も安らげる場所だと自惚れてもいい?

長く尾を引き始めた呼吸に合わせフワフワそよぐそれは、無理に握りしめた途端すり抜けて何処かへ飛んで行ってしまいそうに儚い。だけどいつからか、静かに腕を広げているとそっと舞い降りてくれるようになった。

その平穏を妨げないよう、より深いものになるよう...ささやかな願いを込め、ティファは繰り返し透き通る黄金色を梳(す)く。どうか明日も、眩い光を放つこの繊細な羽が、ここで身を休めてくれますように...

一定間隔で上下する屈強な肩の心地よいリズムに引きずられ、自らも目蓋を落とした。無垢な寝顔から漏れ出る穏やかな息吹を胸に感じながら...


******************


白い羽は国によっては “臆病” という意味を持つそうです。



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