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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

俺の宝物


チビクラ、チビティファ@ニブルヘイムです。






あの高い太陽まで届くんじゃないかと思わせる、止む事のない声。

川辺に散らばった、色とりどりの靴。

キラキラと跳ね上がる水滴の中で、一層キラキラ輝く君の笑顔。

その隣にいるのは俺じゃない。

離れた橋の上にいる俺に、君は気付きもしなかった。


俺の宝物


「ティファ、本当にごめんね。
母さんが心配するから俺、そろそろ...」

私は当然笑顔で返す。

「ううん、もう一人で平気!
本当にありがとう、こんな遅くまで...」


「きっと見つかるよ!また明日ね!!」そう土手の上から手を振る最後の友達に手を掲げ返すと、再び薄暗い水面に視線を落とした。

なんてバカしちゃったんだろう。

ママの宝石箱からこっそり持ち出したネックレス。
それを付けたまま川遊びをしてた私。

「そろそろ帰る?」

誰かがそう言った時、それは首にはかかっていなかった。

パパはママに沢山プレゼントをしてたから、ママの宝石箱はネックレスで一杯だった。
でもママはベッドの上から決まって私にお願いをする。

「ティファ、あのネックレスを持って来てくれる?」

それを手に取り、愛おしそうに弄ぶママ。
ふざけて私に付けてくれる時もあった。

「どうしていつも、そのネックレスなの?」

ずっと不思議だった。
細いシルバーのチェーンに、小さな石が付いただけのシンプルなそれ。
ママの宝石箱は、もっと華やかでキラキラしたネックレスで溢れてた。

「パパから初めて貰ったものなのよ」

ママは本当に幸せそうに、私の頭を撫でながら答えた。

きっと今ママは天国で悲しい顔をしてる。
それに私は知ってるんだ。
パパがしょっちゅう寝る前に、あのネックレスを手に取っている事を...

涙が溜まった目を腕でこすった。

「何してるんだ?」

驚いて振り返った先には、お隣の一つ上の男の子。
彼に話しかけられるのは珍しい事だった。
しかしそんな事を気にしている余裕もない私は、ポツリと言う。

「ネックレスを探してるの」

クラウドは表情を変えずに靴と靴下を脱ぎ、戸惑うことなくじゃぶんと川へ入って来た。

「色は?...どんなの?」

「細くて銀色で...」

言い終わるより先に、私より10m程下流へ向かい、膝に手を付き水の中に目を凝らし始める。
慌ててその背中に言った。

「いいよ!クラウド。探さなくって。
それにもう遅いから、ママが心配するよ?」

彼はそのままの体勢でぶっきらぼうに言った。

「俺ん家、母さん仕事してて遅いから」

何を言っても聞かなそうなその態度に、諦め作業を再開する。
それに一人より二人の方が、ずっと心強かった。





「無理だよ。
かなり遠くに流されたかもしれない。
もう暗いし、諦めた方が良くないか?」

30分程経った時、クラウドは近くまで来てそう言った。

「うん...」

そう言いつつも私の手は水の中の石ころをひっくり返す。
クラウドはそれをじっと見つめ、やがて聞いた。

「...そんなに大切な物だったのか?」

目に再び涙が滲んだ。

「ママの宝物だったの...」





結局ネックレスは見つからないまま、門限を破ったことに腹を立て私を迎えに来たパパにより、私の探索の手は止まる。
パパはそこにクラウドの姿を認めて、益々機嫌が悪くなった。
何故かは知らないけど、パパはクラウドが好きじゃない。
一緒に遊ぶなとしょっちゅう言われていた。
私はそれが不満だった。
クラウドは、パパが言う程悪い子じゃない。
だけど私が挨拶をしても、すぐに逃げて行ってしまうクラウド。
パパとの約束を破る心配をする必要はなかった。

「クラウド、本当にありがとうね。
クラウドももう、お家に帰ってね」

パパに手を引かれながら、まだ川の中にいるクラウドに手を振った。

今夜はパパが、あのネックレスを手に取りませんように...

そう必死に願いながら。





真っ黒な川の中を見て舌打ちする。
こんなに暗くちゃダメだ。
見つかる物も見つかりゃしない。
それにそろそろ俺も時間切れだ。

俺は川から上がり靴下で足を拭くと、裸足のまま靴を履き全速力で駆け出した。





「ご馳走様!
今から宿題やるから邪魔しないでよ。
今日、たくさん出されたんだ」

夕ご飯を超特急でお腹にかき入れお皿を乱暴に洗うと、俺は自分の部屋に立てこもった。
ドアの前でじっと聞き耳を立てる。
母さんはご飯を食べた後、決まって大音量でテレビを観るんだ。

(聞こえてきた!)

それを見計らい、そろりそろりと忍び足で部屋を出る。
まず向かったのは廊下の収納だ。
確か前に停電になった時に...あった!
そしてそのままお風呂場へ向かいタオルを一枚掴み首に巻く。
最後は玄関だ。
先程まで履いていた靴をむんずと掴む。

部屋に戻り頭を巡らせる。
これで完璧かな?
そうだ...
机の引き出しから取り出したのは、元々何が入ってたかはもうわからない小さな袋。
その袋にキュッと音をさせながらマジックで字を書いた。

丁寧に。
おまじないをするように。

そして部屋の窓枠に手と足を掛けた。





一時間後、俺は半ば飛び上がりながら土手の上をはしゃいで走る。
右手を固く結び、左手で懐中電灯の光をブンブン振り回し、地面と夜空を交互に照らしつけながら。


...やった!

あった!!

...ティファ、あったよ!!!

神様、ありがとう!


だってティファの母さんの宝物は、ティファの宝物。
そしてティファの宝物は、俺の宝物。





満面の笑みで窓から自分の部屋に侵入した俺は、次の瞬間凍り付いた。
俺のベッドの上には、こめかみに青筋を立て腕組みし、般若の顔をした母さんが座っていた...


「あんたが宿題なんて、たいがい怪し過ぎるんだよ!」

俺は蛇に睨まれた蛙の様に、部屋の隅に縮こまる。
そして母さんは俺の手足が湿っている事に気が付くと、更に声を荒げた。

「あんたまさか...川へ入ったのかい!?」

...最悪だった。
夜の川へ入るのは、家でも学校でも厳しく禁じられている。

「黙りこくってないで、正直にお言い。
いったい川でこそこそ何をしてたんだい」

母さんは俺の首に巻きついた汚れたタオルと懐中電灯を交互に睨みつける。
直感的に思った。

(言ったら、ティファが怒られる!)

俺の母さんは、いわゆる肝っ玉母さんだ。
隣の家に怒鳴り込むくらい、平気でやるだろう。
そしてティファは叱られるんだ。
母さんからだけでなく、ネックレスを持ち出した事がバレて、あの厳しい父さんにも...

歯を食い縛り、その睨めっこに耐えた。
やがて母さんは諦めて言う。
俺の肩に両手を置いて、目を見つめながら。

「...悪い事は、してないね?」

負けじと母さんの目を真っ向から見つめ返し、深く頷いた。
そのまま母さんは、「これだから男の子なんて生むもんじゃないね」とぶつくさ言いながら部屋を出て行く。

「早くその汚い足、お風呂で洗っちゃいな!」

と怒鳴るのも忘れずに。
体から力を抜き胸に手を当て、ほうっと大きく息を吐いた。





私は今、隣の家の前で待ち伏せをしている。
今日の自分のお菓子の袋を手に握り締めながら。





ネックレスは見つかった。
重い足取りで今朝郵便受けに新聞を取りに行った時、その下にあった小さな袋の中から。
それを手に取り、天国の方角を笑顔で仰ぐ。
それに運良く、パパは昨日はネックレスを見なかった。
「今日は一緒に寝よう?」そう駄々をこね、必死に私の部屋にパパを連れ込んだから。

その袋には “To Tifa” とちょっと癖のある黒い文字だけが書かれ、差出人の名前はなかった。
だけど想像はつく。
思い浮かぶのは、暗い川の中でも光り輝いていた金色の髪の毛。

きっとクラウドだ。
クラウドがあの後、見つけてくれたんだ!





「...知らない」

けれど、学校から帰って来たクラウドは私の質問に対して素っ気無くそう言った。

「え、でも...クラウドしか...「知らないって言ってるだろ!」

大きな声を出し、家の中へ入ってしまう。
自分の手の中の “お礼” を見つめながら、溜息をつく。

(絶対、クラウドだと思ったのに...)

私はクラウドが良くわからない。
嫌われてるかと思ったら、ネックレスを一緒に探してくれるし、そうかと思ったらまた今みたいに逆戻りだ。

(勘違いだったのかな...)

次の日私はあの日川辺で遊んだ仲良し三人組に教室で同じ質問をする。
しかし三人が三人共、首を横に振るだけだった。





よし、誰にもバレてない。
順調だ。
部屋の机に片手で頬杖を付き、一向に進まない宿題を前にノートに落書きをしながらほくそ笑む。
でも...

きっとティファはあの “手柄” をあの三人組の誰かの物だと勘違いするだろう。
それに自分が彼女にとった冷たい態度。

(何も、あんな言い方する事なかったんだ...)

母さんの信用を失いながらも、必死に探したティファの宝物。
その努力に反し、俺とティファの距離は開く一方だ。

ふと窓の外に目を向ける。
聞き慣れたピアノの音が流れて来た。
その音色に向かって訴えかける。

(ティファ...
夜の川は怖かったし、水は冷たくて手と足がちぎれそうだったんだ...)

唇を噛み締めながら窓の外を見つめ続けた。





それから数週間経った頃だろうか。
あれ以来しぶとく俺に説教を続けていた母さんの腹の虫も収まってきた頃だった。
俺は外で母さんと一緒のところを偶然ティファに出くわす。
俺をそっちのけに、挨拶と雑談で盛り上がる二人。

「こら、クラウド。
あんたまたそっぽ向いて、何を不貞腐れてるのさ」

母さんが頭を小突くから、嫌そうにその手を払いのけた。

「その点、女の子はいいねぇ。
ティファちゃんみたいに素直で」

ティファは口に手を当てて笑ってる。
調子に乗ってお喋りな母さんは続けた。

「こないだだってこの子ね...」

嫌な予感がする。

「夜遅くに懐中電灯とタオル握り締めて、こっそり部屋から...「母さん!!」

慌てて母さんを遮った。
そして「もう行こう!」とその手をグイグイ強引に引っ張り体を引き摺る。

「いきなり何だい、あんたは!
ティファちゃん、ごめんね。またね!」

文句を言う母さんはこの際お構いなしだ。
視界の隅に、いつもと変わらない笑顔でこちらに手を振るティファの姿がチラリと映る。

気付いてませんように、気付いてませんように...





数日後、ノックの音と同時に母さんが部屋へとやって来る。
そしてニヤニヤしながら言った。

「このかっこつけがねぇ...」

そのままの顔で小さな袋を差し出した。

「夕刊を取りに行ったら、見つけたんだよ」

その表には、綺麗な水色の文字で “To Cloud” とだけ書かれていた。

「あんた、青が好きで良かったんだよね?」

そう確認すると、部屋をさっさと出て行ってしまう母さん。
「男の子も悪いもんじゃないね」と、ご機嫌で言いながら。

その姿が消えたのを確かめると、急いで袋を開けた。
中からは、俺の好きな青い車のキーホルダー。
ビックリしてふさがらない口を開けたまま、それをキュッと握り締める。





窓からは聞き慣れた軽快な曲。
俺が尋ねたら、きっとティファは俺と違って素直に答えてくれるだろう。
だけど俺はそんな事はしない。
だって満足してるから。
前よりほんの少しだけ近くなった、俺とティファとの距離に。

そのキーホルダーは今日も筆箱にくっ付いて揺れる。
見られたら恥ずかしいから、鞄にはつけなかった。

俺の大好きな青い車。

ティファの宝物を見つけたお礼に、ティファが俺にくれた物。


それは今日も、俺の大切な宝物。


******************


タオルを首に巻く、田舎少年クラウドが書きたかったのです。
なんか可愛くないですか?



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