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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

One tiny trump 8


One tiny trump 7、の続きです。

今回、によるやや残酷な描写が含まれます。


One tiny trump 8 ~FF7 Another Story~


数時間前にも聞いた、海岸の波の音。

彼とキスをしながら。
その熱は未だ身体を温める。
だから私は怖くない。

"ひっくり返せる"

お気楽にもそう思ってた。
しかし開けてみたら敵に筒抜けだった、私の切り札。
それは今、逆に私の首を絞めていた。
それでも私は感謝する。
これのおかげで、今から大切な物を取り戻せるから...

「彼の右手を返して」

「よかろう。お前は約束を守った。
ただし、例の物をこちらに見せるんだ」

白マテリアをセフィロスの目に入るよう掲げる。
瞬間、彼は何らかのマテリアを取り出し魔法を詠唱した。

きっと今、クラウドの右手は無事解放された。
何故だかわかる。
この男は嘘はつかない。
信じられないくらい、真っ直ぐだ。
汚れを知らない子供の様に。

「さあ、それを渡して貰おうか」

素直にマテリアを彼に手渡す。
とうとう私の手から離れていってしまう、小さな切り札。
彼女と、彼女のお母さんの大切な形見の品。

そして私に視線を戻す、その男。

「私を殺すんでしょ?」

「わかるか?お前は危険だ。
ホーリーを知った者を生かしておきたくはない」

彼はいつかの様に、私の喉元にその長い刀を突き付けた。

「怖いか?」

「怖くないわ。
ただ、一つだけお願いがあるの」

「言ってみろ」

「殺すなら、誰の目にもつかない場所で殺して?
ここには一滴の血も落としたくない」

きっと彼は私の死に直面したら、その歩みを止めてしまうだろう。
それじゃ駄目なの。
あなたは、今私の目の前にいる男を倒すのよ。
そして私がいなくても、生き抜いて?

セフィロスは少しの間考え込んでいたが、やがて言った。

「良いだろう」

瞬間、辺りの風景が変わる。
そこは深い森の中だった。
暗闇に光るのは、その男の碧い瞳だけ。
私はそれを有り難く思う。
その瞳は私をあの人で一杯にしてくれるから...

ゆっくりと目を閉じた。

「こちらも一つ聞きたい」

目を開ける。

「お前は何故、死ぬのが怖くない」

「嬉しいから。
彼の体が元通りになって。
未来に希望を繋げられて。
...愛する人が、少しでも長く生きながらえて」

セフィロスは眉をしかめたままこちらを見つめていたが、すぐに冷たく言い放った。

「くだらんな」

次の瞬間、体を鋭い痛みが貫いた。





俺の計画は、寸分の狂いもなく進んでいる。

今、俺を止められる力を持つ者は、この世にはいない。
唯一の脅威は、メテオを妨害する力のあるホーリーだ。
だがそれも今は俺の手中。
後はメテオを発動するのみ。

俺の計画は、寸分の狂いもなく進んでいる。

しかしそれなら何故俺の心は晴れない。
見ていると、無性に苛つくこの女。
俺は女を斬りつける。
少しでも多くの苦痛を与えるために、急所を外しながら。


(抱きしめられた事は、ある?)

「あぁっ!!」

悲痛の声をあげろ。


(可哀想な...人...)

「くっ...!」

泣き叫べ。


(怖くないわ)

「うぅ...」

命乞いをするがいい。


(嬉しいから。
彼の体が元通りになって。
未来に希望を繋げられて。
...愛する人が少しでも長く生きながらえて)

「...っ...!」

孤独と絶望を感じながら。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」

俺は肩で息をする。
気付けば、女はもう血まみれで虫の息だった。

斬っても、斬っても...満たされぬ心。
ふとその女を斬りつける手を止める。

...そうだ。
この心が晴れる、良い方法がある。


ティファ、お前はまだ殺さない。

お前の死は無事メテオを呼んだ祝いに捧げよう。

クラウド、お前の目の前で。





One tiny trump 9、へ続きます。


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