忍者ブログ

Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

注文の多い来店者

ティファ誕を書いてませんでしたので、これをもってプレゼントとしようと思います。
今年もクラウドがわちゃわちゃしているだけでティファの出番はあまり無しです。



「あ!ねぇ、ティファ見て。お花屋さんあるよ!」

繁華街の外れ、年季の入った建物の一階にその店はあった。真っ白のペンキで塗られたレンガの外壁に蔦がはう、雰囲気のある花屋目掛けて脇目も振らずに駆けて行くエアリス。無邪気な姿を微笑ましく見守るティファも、「ちょっと寄ってもいい?」と旅のリーダーに許しを請い後を追った。

「凄い...ほとんどわかるんだね!」

店頭に並べられた花を指差し次々と名前や花言葉を当てていくエアリスにティファもキラキラと目を輝かせる。「ねぇ、これは?」淡い紫色の、ふっくらと釣鐘の格好をした花が目についたティファがエアリスに問うた。

「ええと、カンパニュラは...」

「う〜んと、何だっけ...もう、ど忘れ!」エアリスは知っているはずの花言葉がなかなか出て来ずもどかしそうにする。

「“感謝”...」

しゃがみ込んだ二人の背後でポソっと呟かれた声にエアリスとティファは一斉に後ろを振り返った。クラウドは慌てて手で口を塞ぐ。「わぁ...クラウド、正解」エアリスは胸の前で手のひらを合わせ感嘆の声を上げる。隣で不思議そうに首を傾げるティファと、気まずそうなクラウドの目が合った。

「もう行くぞ」

クラウドは顔を背け元の道へと戻っていく。残された二人は顔を見合わせ肩をすくめた。店を後にしようとした時、とある花がティファの目に止まる。

「ねぇ、エアリス。あのお花...」

言いかけ、既に背を向け歩いていくクラウドの後ろ姿を見つめる。「ううん、何でもない。行こう」思い直しエアリスを促すと自分自身も前を向いた。


注文の多い来店者


花は衝動買いをされることの少ない商品だ。もちろん店頭で急に気が変わったり、一部の愛好家にとってはこの限りではないが、一般的には客は明確な目的を持って来店する。なので、この一度は見向きもせずに店の前を通り過ぎた男が思い立ったように足を止め迷いなく軒先まで戻ってきた時、店員が殊更上機嫌な声を上げたのも至極当然のことであった。

「いらっしゃいま...」

男が背中に背負った物騒な大剣が目に入るまでは。

「...せ...」

前のめりになった上半身は急には止まれず、愛想笑いと共に「どれに致しましょうか?」と惰性で常套句が滑り出る。その金髪の男はこういった場には不慣れそうだったが、販売員をチラリと一瞥し「構わないでくれ。自分で選ぶ」と強気に言い放ち店先に並んだ花達を吟味しだした。

「では、お決まりになったらお声かけくださいね〜」

正直関わり合いたくない類の客だった。これ幸いと抜き足差し足で距離を取るが、こちらを気にもせず男は眉間に皺を寄せ真剣そのものである。物珍しい光景を興味深く盗み見していると、男は意を決したように一輪の花をバケツからすっと抜き取った。花びらが大きく単独でも見栄えがするものである。

「ありがとうございます。50ギルになります」

眠気に襲われる昼下がりの暇潰しが早々に終わりを遂げてしまうのも厭わず、きな臭い客を追い払おうと早口になる。だが財布に手を伸ばしかけた男は「あ...」と風采に似合わない少々間の抜けた声を出し手を止めた。

「その花...花言葉はわかるか?」

男の口から飛び出たこれまたそぐわない単語に一瞬ポカンとなる。受け取った一輪を改めて眺めた。花屋であれば誰もが知っている有名な種である。

「“真実の愛” ですね」

言い終わると共に男の顔は赤く染まり、見るからに狼狽し始めた。「そっ...それはやめておく。...あっちは?」男は花弁の細長く、しかし放射状に広がった様が華やかな別のものを指差した。花占いで良く使われるタイプだった。

「“可愛い人”」

男は更に動揺し慌てふためく。そして何を思い出したのか真っ赤な頭をブンブン振ると片手で目元を覆いガックリと項垂れた。コミカルな仕草に先程まで全身に張りめぐらされていた緊張感が緩んでいくのを感じる。

「...もっと普通のやつはないのか」
「ああ、そういうことですね」

店内にあるショーケースを開き、要望に合いそうなものを手早く見繕った。

「はい、“友情”」

だが一瞬固まった男はみるみる機嫌を崩し、「いや、違う」とそっぽを向いた。

「じゃあ...“感謝”?」
「...それも違う」
「“門出、別離”」
「やめろ」

ことごとくぞんざいに否定されイライラしてくる。なんとか営業スマイルを維持して「すみませんが、相手様とはどういったご関係?」と言葉足らずな男の真意を読み解こうとするが、肝心の本人は深く腕組みをして考え込んでしまった。

「...説明出来ない」

真顔で返され暫し沈黙が場を支配する。面倒臭いな...と内心溜息をつくが薄々理解してくる。そこそこ年齢もいってそうなクールぶった外見は、内面とは幾分ちぐはぐのようである。「相手は女の子なんだよね?お花、なんであげようと思ったの?」たかだか一輪の花の売上には既に興味はない。もはや営業トークの枠を超え、ただの彷徨える男子への慈善カウンセリングだった。

「前にあげたら喜んでた。すごく悲しいことがあったから励ましたい。だから...」

辿々しい説明をウンウン相槌をつきながら聞いてやる。ふと思い付き、嫌な予感に襲われた。この手の恋愛音痴が陥りがちなパターンって...

「ちょっと待って。それ、本当に喜んでたの?あなたの早とちりじゃ...「いや、嬉しくて花言葉を調べたと言っていた」

男はムキになり食い気味にまくし立ててくる。「他の男からは受け取らなかったしな。俺があげたのは大事にしてたのに」遂には空中を見つめニヤニヤと得意気に語りだし一人の世界に浸り始める。せっかくの割と整っている顔がニタっと歪み、ウッと声が出そうになるのをなんとか押し止まった。う〜ん、これは...“片想い” のお花なんて勧めたらキレられそう。男に隠れて笑いを噛み殺す。

「“あなたの傷を癒します”...これは?」

スッと目前に差し出された花に男は前に向き直る。我ながら機転の利いたセレクトに得意になるが、パッションピンクの小ぶりな花を食い入るように見つめる男の反応は斜め上をいく。

「イメージと合わない」

ピキっとこめかみに青筋が走ったのがわかった。「なんていうか...もっと大人っぽくて綺麗な雰囲気なんだ。もしくは可愛らしい中にも品があるというか...」尋常ではないこだわりを見せる男はこれだけの情報を醸しておきながら未だに自分の感情の正体に気付いていないようだ。

「なんで!?これだってすっごい綺麗だし可愛いよ!!」
「違うもんは違う」

頑なに折れようとしない男は自らの気持ちも認めようとはしないだろう。子供さながら駄々をこねられ呆れ果てるが、花でもって大切な人を元気付けたいという真っ当な想いは応援したい。他に打つ手は持ち合わせていないであろう男に代わりなんとか頭を働かせてやる。

「“笑顔”」

しかめ面をしていた男はピクリと片眉を上げる。「...なんて意味のお花もあるよ。それなんか良いんじゃない?もう少し落ち着いた色で、あなたの好みにも合うと思う」興味を持ち始める男だったが、残念ながら現物を見せることは出来ない。

「でもごめん。今日は入荷がないの。また明日来てくれないかな?」
「無理だ。明日にはもうここを経っている」

想定外の主張をしだす男にまた肩透かしを食らう。

「それじゃお花なんて渡せないじゃない!お水につけておかなきゃならないのよ?」
「そうなのか?適当に持ち運べるもんだと...」
「無理無理、一日で萎れちゃうわ。お花が可哀想!」
「そう言えば水に浸けられてたような...」

なんとも常識外れな発言を連発させる男は明らかに気落ちしてしまう。なんて手のかかる...だがこちらも乗り掛かった船だ。今や弟にしか見えなくなった大の男を元気付けるために明るい声で持ちかける。

「アクセサリーにしたら?そこの商店街の入口から2、3軒目にあるから。お友達がやってる店なの。すっごく可愛いよ!」
「アクセサリーって...それこそ嫌がられないか?」
「もう、あげたいの?あげたくないの!?」

ハッパをかけられ男は目の奥に力を取り戻すと小さく頷き店を去る。厄介な客を知人の所に送り込んでしまったと申し訳なさが募るが、新たな店でも彼がてんやわんややらかしてくれるだろう様を思い浮かべると笑いが止まらなかった。



“ティファ”

声をかけられるのと同時に左手首に手が添えられた。

「これならなくならない」

ぎこちない手付きで、それでもしっかりと金具で止められたのはレザーのブレスレットだった。真っ白な肌に映える数色が重なった革のリングには、花をモチーフにしたシルバーのチャームがついている。驚き目を見開いたティファは腕を高く掲げしばらくまじまじと見つめた。やがて大きな瞳がじんわりと滲みクラウドはあたふたと慌て出す。

「な、泣くなよ...」
「あはは、嬉し涙だって」

言った通り、目尻を拭うティファの口元には笑みが浮かんでいる。すぐに止んだ涙にクラウドはホッと息をついた。「うん...もうなくさない」ブレスレットをもう一方の手で大切そうに包み込むティファにクラウドも自然と頬が緩んだ。

「なんてお花だろう」

腕をかざす度に揺れ動く小さな飾りをティファは興味津々に見つめる。クラウドはギクリと肩を揺らし、「さぁな。花は詳しくない」と目線を外した。バツの悪そうな態度をからかったりはしない。「安心して。もう調べたりしないから」と悪戯っぽく舌を出すティファにクラウドは何とも言えない顔で後頭部の髪をかきむしった。

“好きにしろ”



「約束、したもんね」

グローブを外した素手の手首にこっそり口付け、後ろ髪を引かれる思いで花屋を後にする。ふと視線を感じ振り返ると、店舗の奥で作業をしていた店員が拳を握りしめ小さくガッツポーズをしていた。彼女はティファに気付くと慌てて咳払いをする。

「......?」
「またのお越しを!」

満面の笑みと共に振られた手。知らんフリを決め込む男だったが、心の中はお見通しだった。


******************

For Midgar, Midgar, I left MY ONE TRUE LOVE behind...♪

ミッドガルブルースの英語の歌詞は必見ですよ!



PR
  

最新記事

(12/31)
(12/31)
(08/11)
(05/03)
(05/03)
(05/03)
(05/03)

WEB拍手

Copyright ©  -- Minority Hour --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]