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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

One tiny trump 6


One tiny trump 5、の続きです。

少しばかしの、ティファ攻めによる性描写が混じります。
今作品中、性描写はこれで終わりです。
極々軽いものなので、R18扱いとはしません。


One tiny trump 6 ~FF7 Another Story~


天井には煌(きら)びやかなシャンデリア
ステージには華やかな横断幕
テーブルの上には何種類もの料理とシャンパン
ごった返す、俺とは一生縁のなさそうな着飾った人間達

そんな中、場違いにも俺は黒いスーツを着せられ、仏頂面でその大きなホールの壁にもたれ掛かっていた。




今日はルーファウスの社長就任記念パーティーらしい。
こんな時に?
そう呆れたが、前々から企画されていたそれ。
いきなり中止をしても訝(いぶか)しげな目で見られ、一般市民の不安を煽る。
それを気にしての決行だった。

あれ以来俺達はセフィロスを探しているが、幸か不幸か奴はまだ見つかっていない。
そうなると当然やることもなかった。

俺達もパーティーに参加して良いと言われ、仲間達は呑気に会場で飯と酒にむしゃぶりついている。
ユフィとティファも久しぶりに着飾ったのが嬉しいのか、キャーキャー騒いでいた。
しかし俺はそんなノリに便乗出来る気分ではない。
いや、皆が楽しそうなのは良いんだ。

俺には、ティファがわからない。

今日のティファは少しおかしかった。
無理やり笑って空回りしているような、何か辛い物を見て見ぬふりしているような...

俺はその時にはもう確信していた。
ティファは何かを隠してる。

もう一つ気分が晴れない理由はやはり...
視線の先には失われた右手。
現状世界で一番セフィロスに近かったのは俺。
守りたかった彼女との未来。
こんなんじゃ、守れない。

ふとその右手にそっと誰かの手が当てられる。
その先には、ワインレッドのシンプルなドレスを着たティファの笑顔があった。
彼女は俺の目を見て、力強く言う。

「大丈夫、クラウドは勝てる」

黙り込んだ俺に、続けてキッパリと言い放った。

「右手は戻るよ。絶対に戻る」

そこで俺はようやく少し微笑んだ。
ティファが言うなら、本当にそうな気がした。

「だから、クラウドも今日は楽しもう?
ご飯食べた?一緒に取りに行こうよ!」

彼女は強引に俺の腕に自らの腕を絡め、俺をホールの真ん中へと引っ張った。

「お、おい」

慌てる俺。
やっぱり、変だ...
俺達は、二人きりの時でも腕なんか組んだ事はない。





昼間とはその様子を大きく変える、深夜の街並。
規則正しく並ぶ白い街頭以外に明かりはない。
コンクリートを打ち付ける、どこか人工的な波の音。
少しだけ潮の香りがする風が、酒で火照った顔をかすめてく。


「ほら、しっかり歩けって」

「ん~~歩いてるじゃなぁい」

ティファは完全に酔っ払っていた。
俺は彼女の体を支えながら、今俺達が滞在しているジュノンのホテルへ向かっている。

人前だと言うのに、ティファがあまりにも俺に体を寄せるから、いたたまれなくなり彼女の腕を掴んで出てきてしまった。
背中には、俺達をヒューヒューとはやしたてる仲間の声。

「わっ!」

こちらがボーっとした隙に腰を抜かす彼女。
右手が不自由で、俺は彼女をおぶえない。

「ほら、ティファ」

腕を取り、俺の首に巻きつけた時だった。
そのままスルリと首の後ろに回される、もう一本の腕。
そしてグッと引き寄せられたかと思った瞬間、俺の唇は熱を持った彼女のそれに塞がれた。

『んっ...』

驚くが、俺もそれを受け入れる。
しかし次の瞬間、ティファは俺の唇の間に舌を割り入れてきた。

(!?)

そのまま彼女の舌は俺の舌を求め絡んでくる。

「んっ...うんっ...んっ...!」

夢中で甘い声を出し、動く事を止めない柔らかい唇。
淫乱な音を立てながら。
いつにない快感に恍惚としかけていたが、やっとのことで彼女を引き剥がす。

「ど...どうしたんだよ?ティファ...」

しかしティファは言い終わるか終わらない内に、また唇を寄せてきた。
再び彼女らしくないやり方で求められる。
俺は左手で彼女の肩をきつく掴むと、横を向き彼女からのキスを拒み、叫んだ。

「ティファ!ちゃんと俺の話を聞いてくれよ!!」

動きを止め、徐々に目を伏せるティファ。
そんな彼女の手を取り、海岸沿いのブロックに座らせた。
未だ俯くティファの肩に片手を置き、真っ向から見つめる。

「なぁ、ティファ」

「俺の右手の事、誰から聞いたんだ?
皆知らないって言うんだよ」

「え~っと、誰だったかなぁ?
ごめん、よく覚えてない。仰天しちゃって...」

彼女は俺の顔を見てくれない。
予想通りの反応に黙り込む。

視線の先には首すじに付けられた、まだ新しい切り傷。
ティファ、俺の目は誤魔化せないよ?
だって俺は剣のプロなんだ。
その傷は、モンスターにやられた傷なんかじゃない。

でも...

「俺は信じてる」

ティファは驚いたように、伏せていた目を上げた。

「ティファは、俺には絶対に嘘は付かない」

きっと、いつか話してくれる。
打ち明けてくれる。

ティファは目に一杯涙を浮かべ、それをポロポロとこぼし泣き出してしまった。
そして再び俺の首に腕を回し耳元で囁いた。

......してるって言って?

「...えっ?」

戸惑い固まる俺に催促する。

「言ってよ」

「......どうした」

「聞きたいだけ」


"愛してる"


俺はそれを言う日を決めていた。

「...言わない」

「なんで...?」

彼女はしゃくりあげて泣いている。

「二人で生き残れるまでは、言わない」

キッパリと言い放つ。
彼女は腕を緩め、俺の顔を涙で溢れた瞳で見つめてくる。

「じゃあせめて、抱いて欲しい」

泣きそうになった。
もう今日のティファはどう考えたって、異常だった。

「嫌?」

嫌じゃないよ、嫌じゃないさ。
俺は君を抱いている時が一番幸せなんだ。
なのに、なんでこんな気持ちになるんだよ...

「一生のお願い...」

俺は抵抗を止めた。
ティファを部屋へ連れて行き、泣き止まない彼女を深く愛した。
左手だけで不器用な愛撫に、いつも以上に声を上げる彼女。

  クラウド、全然足りない......
  もっと...もっと......!
  ..........愛して.......
  クラウド、クラウド、クラウド...!

  ごめんね、ごめんなさい......





何時の間に意識を失ったんだろう。
次に俺の目を覚まさせたのは、右手に走る激痛だった。

「うわあああぁぁぁぁあああ!!!」

いきなり再生を始め、燃えたぎるように熱い手を押さえ自室を転がり出る。
何事かと部屋から起き出してくる仲間達。

「ティファは?ティファはどこだ!?
ティファがいない!!」

彼女は何時の間にか俺のベッドからいなくなっていた。
ティファの部屋へ走る。

もどかしいようにその扉を開ける。
ティファの部屋の白い壁には、恐らく俺の右手の血と肉で書かれたであろうどす黒い文字があった。


"誰にも何も言わず、一人で海岸へ来い。
夜明けまで待ってやる。
例の物を渡して貰おう。
クラウドの右手と引き換えだ"


「嘘だろ...」





ティファは、戻って来なかった。





One tiny trump 7、へ続きます。


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