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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Crimson Labyrinth 3 (fin.)

Crimson Labyrinth 2、の続きです。
完結です。最後までご閲覧をありがとうございます。



Crimson Labyrinth 3 (fin.)


昨日と同じ早朝の集合時間。道具屋で調達した備品を配るクラウドの手はとある人物を前に途端にぎこちなくなる。早々にその前から立ち去ろうとするが、そんな思いには気付かない彼女はグッと握り拳を作ってみせた。

「クラウド、今日でバッチシ決めようね!」

清々しい気合い入れに反し、クラウドの虫の居所は悪いままだ。

「長引いた方が良いんじゃないのか?ティファは」

想定と異なる反応にティファはキョトンとする。だが「ヴィンセントから格闘技も教えて貰えるもんな」とクラウドが続けると「ああ」とティファは腑に落ちた。

「でもそれはこの町を離れてもきっと大丈夫だし」

遠回しな皮肉が全く伝わってなさそうなニコニコ顔が癪に触り、クラウドは畳み掛ける。

「なんなら今後もアイツと組ませようか?頼り甲斐あるし、気も合いそうだしさ」

吐き捨てるように言うと、不穏な空気を察しつつも特に彼が機嫌を崩す心当たりもないティファは抑揚なく同意する。

「クラウドがそう思うなら、そうすれば?」

クラウドは自らの首を自分で締めていることに気付かない。あっけらかんとした返しに頭がカッとなり、無言で彼女に感じ悪く背を向ける。その際、ティファは振り返ったクラウドの肩ベルトに気になる点を見つけた。

「あ、ねぇ。クラウド」
「なんだよ。もう行く」
「ねぇってば、ちょっと待って!」

呼び止めようにも耳も貸さずクラウドは洞窟の入口へと歩いて行く。昨夜と比べ態度の豹変した後ろ姿にティファは頬を膨らませた。

「...もう!なんなの!?」



昨日探索を進めた地点までは足並みを揃え全員で進んで行く。深い水溜りをまたぎ、クラウドが後方に注意を呼び掛けようとした時だった。

「掴まれ」
「...っと。ありがと」

暗闇に繋がれた二つの白い手が浮かび、思わず瞳を逸らす。そうだよ、どうだっていい。誰と誰が同じチームになろうが。ティファもヴィンセントも悪くない。それなのに、どうして俺はこんなに苛ついてるんだ...

正確に書き記した地図のお陰で皆は最短距離で目的の地点へと辿り着いた。

「これか...」
「ああ」

地に残されたままのドス黒い染み。行く手は丁度三方向に分かれており、誰からともなく視線を絡め頷き合う。「それじゃ皆、後でな」クラウドはそう言いメンバーをグルリと見渡すと、黒髪の幼馴染と目が合った。

恨めしそうな目付きに心が痛むが、彼女も負けじとプイとそっぽを向いてくる。引っ込みのつかなくなったクラウドは勢いよく体の向きを変え、ぬかるんだ左側の道へと進んでいった。他の仲間達も方々へと散って行く。



「ぅお〜〜〜〜い!!」

山頂でヤッホーをするようにユフィが大声を張り上げると「うるせーーぞーー!!」と遠く離れた右手から怒鳴り声が返って来る。エアリスがクスクスと肩を揺らした。

「おい、敵だ」

前方にゆらりと蠢いた影。斧を操る半人半妖の、しかし意思疎通はままならない攻撃的な怪物がこのエリアを牛耳っていた。先制を取ろうと素早い動きで先陣を切ったクラウドは、先頭の一体を大剣で叩き切り、その勢いのまま群の中央を分断し敵の隊列を乱していく。後方から魔法と手裏剣の援護が続いた。

「がっ!!」

胸を直撃した斧の衝撃は耐えられる程度だ。だが上半身を襲った違和感に青ざめる。長きに渡り酷使され続けた防具は今の一撃で破壊され丸腰が晒されていた。横にいた一体の攻撃が脇腹に直撃する。

「ぐはっ!!」
「クラウド!」

異変を察知したエアリスがすかさず回復魔法を詠唱するも、倒れ込んだクラウドに斧の嵐が容赦なく振り落とされようとする。

「シドぉおお!!!」

ユフィが上げた絶叫を最後に、クラウドの意識は途絶えた。



蛍光灯を囲み、こちらを覗き込む面々。クラウドは急速に意識を取り戻しガバっと起き上がる。思考がしっかりとし、問題なく体が動くことを見届けシドは煙草を片手に宿屋の部屋を出て行った。

行方不明の男はあの後無事見つかった。幸い全員が一所に居合わせたため、仲間達は手分けして気絶しているクラウドとその男を担ぎ出す。今朝ティファはクラウドの防具の留め具が壊れかけていたことを伝えたかったようだ。ティファは念のためユフィに伝言をしたのだが...

「良く気がつくな〜って感心してたら、言うの忘れちゃった!」
「...エアリスに伝えなかった私が悪かったよ」

ユフィに白々しい目を向けるティファがクラウドの顔色を恐る恐る窺う。

「...機嫌、治った?」
「あ、ああ...ごめん。俺、どうかしてた」
「ホントだよ」
「なんかムシャクシャして...なんだったんだろ...」

謝罪するクラウドの肩に「なかなか楽しませて貰ったが...」と重々しい金色のガントレットが置かれる。

「今後はこのチーム割りは御免被りたい」

そしてくつくつと忍び笑いをし、ヴィンセントは扉を出て行った。

「羨ましいなぁ、今度は私も別行動にしてもらおっかな?」

エアリスがおでこをツンと小突いてくる。「おめぇ、普段防具の整備は怠らないじゃねぇか。珍しいな」と不思議がるバレットのズボンを咥え「クラウド、本気?オイラでもわかるよ」とナナキがその巨体を部屋の外へとズルズルと引きずり出す。その背に跨ったヌイグルミが「クラウドさんて何歳です?え、21!?よっぽど実のない青春だったんでしょうね...」と憐れみの眼差しを送ってきた。

「なんだ?」
「さぁ...」

取り残されたクラウドとティファはポカンと顔を見合わせる。後頭部をグシャリとやり、クラウドは決まり悪く呟いた。

「編成、元に戻してもいいか?」

眉を上げ、怪訝そうにこちらを見つめてくるティファ。

「なんだか落ち着かない」

ますます髪を掻き、消え入りそうになる声にティファは口元に手をやりながら可笑しそうにクスクスする。

「私も。なんだか落ち着かない」

日も跨がぬ内に相反する真逆の提案を立て続けてしまった不可解な自分。でもきっと心から望んでいたのはどちらか一方に違いない。明日からまた変わりのない平和が得られることに安穏としてしまうクラウドがこの感情の正体を知るのには、もう少し時間が必要そうだ。


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