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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Tears


ザクエアと言っても、Zack→AerisCloud⇄Tifaです。
ライフストリームイベント中、エアリス視点。







長い間、手離したままだった意識...それをふと取り戻した。
何故その瞬間だったかは、すぐにわかる。

ずっと、あなたの事だけを考えていた。
あの瞬間も。その前も。その後でさえも...
だからあなたが私の近くに来た事に、気付かないわけ、ない。

あと、少し...もう少し!

必死に伸ばした手がなすがまま漂う彼に届いた時、体は愛しい人のそれをすり抜け、愕然となる。

輪郭がほの見える彼と違い...私にそれはなかった。


Tears


相変わらず強い人だな、と思う。
いくらソルジャーが普通の人間とは違うといっても、古代種でない彼がここで存在を保ち続けるには、相当に強固な意思が必要だろう。

“私のこと、そんなに心配だった?”
何でもない風に茶化してみようかとも思った。
だけどそれは冗談めかすには酷くそぐわない気がして。口にした瞬間、感情の波にさらわれ何も考えられなくなってしまいそうで...グッと、口をつぐむ。
私は今目の前で繰り広げられている真実を、最後まで見届けたかった。
しっかりと自分を保ったまま。

お喋りのはずの彼は、何も発さない。
ただじっと、私を包みこんでくれていた。

私に起こったこと。
彼に起こったこと。
そして、二人に起こったこと...

あまりにも衝撃的なそれら全てを、私が少しでも穏やかに受け止められるよう...そんな風に。

心は意外にも、波立ってはいない。
それはきっと、無駄じゃなかったから。
二人が命をかけて守りたかった彼。
その彼はもう...大丈夫。



“やっとまた...会えたな”

未だ残る頭痛に顔をしかめつつも、瞳には確かな光が宿っていた。その真正面で、ティファはしばらくの間それに見入る。
やがてクラウドは、あ...と小さく声を漏らし、自分が陥った状況にあたふたしだした。ティファの瞳にみるみる溜まる涙、その一粒が決壊して零れ落ちる。

「...バカ!心配かけて!!」

バカ!と繰り返しポロポロ泣き出すティファにクラウドは益々慌てふためいた。なす術もなく宙を彷徨う両手に呆れ果てる。そういう時にするべき事は一つでしょう?
格好良くて、何でもクールにこなすクラウド。その癖女の子の扱いはてんでダメ、気持ちも全然察せない。私の良く知る彼のままで、つい笑みが零れる。
だけど次に彼がとった行動に、胸はチクリとなった。決心する様に一度拳を固く握りしめ、クラウドは迷わず震える肩に手を伸ばす。そしてビクっと揺れる身体を気遣いながらも力強く引き寄せた。
二人の間で窮屈そうに折り曲げられていた細い腕もクラウドの背中に回り、服にキツくしがみつく。ライフストリームに溢れ出す、二人の想い。

  ありがとう...
ごめんなさい、私...   
信じて...待っていてくれて
もう、二度と...        
俺は弱くて、目を背けてばかりで...
 ...二度と会えないかと!  
だけどもう、見失わないから
もういなくならないで  
本当の自分、本当に...大切なもの
私は...あなたを何よりも、誰よりも...!
今度こそ、守らせてくれないか?  
俺は...
続く台詞に、無意識に体が強張った。
既にそれは感じ取ってはいたが、直接耳にするのはやっぱりちょっと...心構えがいる。
ティファを抱きしめるクラウドの腕に、更に力がこもった。


俺は...ティファが好きだ


逞しい肩に寄り掛かる顔は、最後に見た時よりも少し女らしく、自分の気持ちに正直だった。
それを見つめる瞳は深い海の様に優しい。
二人はピッタリ身体を寄せ合ったまま、ただ互いの息遣いだけを感じ続ける。

「好きなだけ泣けよ。俺がしたみたいに。
...辛い時はお互い様だろ?」

押し黙っていた彼がようやく口を開く。
体はないのに、泣くことは出来るなんて...

ねぇ、ずっと私を想ってくれてたんだね。
必死に帰って来ようとしてくれたんだね。
そしてそれは今も...変わらないんだね...


――私達、うまくいくはずだったんだよね?


「ごめんね、ザックス...
私、クラウドが好き。大好き...」

奥底に秘めたあの想いが、私とは違う女の子にしか明かせないものであっても。
勇気を出して彼女に伝える事でしか、彼自身を取り戻せなかったとしても。
その子をやっと胸に抱けた顔が、あんなに幸せそうでも。

「知ってる」彼は落ち着いた抑揚のまま続ける。

「俺はエアリスに生きて欲しかった。クラウドと一緒に...」

本当に。
そう囁く彼が嘘をつく人でないのを、私は一番知っている。
私を取り巻く温もりが、一段と増した。

「だけど今だけは、こうして抱きしめられる事を喜んでもいいか?」

止まる事を知らない涙の理由。
きっとそれは、悲しみだけじゃ...ない...

「まだ、ね。
やらなきゃいけないこと、あるの...」

手伝って貰える?かすれた声に、ザックスは予想通りの返事をくれる。
懐かしい笑顔に胸が締め付けられた。私は一人じゃない。
この星の行く末、私達の未来、滲む視界で何も見通せないけど...今はこの、頼もしい腕に遠慮なく力を借りよう。
彼と彼の大切な人達のため、私が出来ること。まだ、終わってない。

二人は帰ってく。
みんなが待つところ。
私がもう永遠に、行けないところ。

“全部終わったら、また...”
地上の光を目指し、遠く霞んでいく後ろ姿に語りかける。

その時はまた、二人に向かって微笑むから...


******************


誤解したまま離れ離れになった初恋の人に五年ぶりに、しかも別の人に恋に落ちた後に再会というのはどういった心境なんでしょうか。
エア→クラを簡単になかった事にするのも嫌だしザックスが報われないのも嫌なので、私のザクエアは一度ザックスが盛大にフラれてから始まります。
涙の似合わぬ彼女ですが、自分の死の直後くらいはね...
エアリスデートもティファに語らせたし、私は女の子を泣かせるのが好きなようです。




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