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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Darkness Beyond


DC ED直後。Vin×Luc+仲間。
未プレイの方はネタバレに注意です!







幾度となく繰り返された行為にも関わらず、目蓋は無遠慮に差し込んだ陽光から暗闇に慣らされ弱った瞳を咄嗟に庇う。同時に周囲に響き始めた鳥の囀(さえず)りと滝の滴りの協奏は清涼感に溢れ、この地が全ての惨劇の発端となった事実は嘘のようだった。
暫く歩みを進め、そこに人影を認める。その者は足音を聞きつけ、慌てて目を逸らし背を向けた。

「メッセージは、無事届いたみたいですね」

その台詞に、ゆっくりと思い起こす。私達が最後に交わした約束。そして今、彼女と交えた会話。

「ああ」

幼さの残る顔が満足したようにこちらを向き直り、私達はそこを後にした。

今一度背後の闇に向かい、感謝の言葉を投げかけてから...


Darkness Beyond


汗と煤(すす)にまみれた男達の気怠く粗野なやり取りに遠くで混ざるのは、それとは相入れない転がるような声と、食器のぶつかり合う軽やかな音。今回の騒動にも関わらず、運良く一枚も割れずに済んだ大判の窓ガラスには、陽の光が燦々(さんさん)と降り注いでいる。

「おい、ティファ!何でもいいから早く出してくれ!!
腹が減ってもう我慢なんねぇぜ...」

イライラと壊れんばかりに椅子を揺する巨体がカウンターへ投げた要求は、ティファと愛娘が同時に張り上げた声により敢え無く却下された。ぶつくさ言いつつも大人しく引き下がるバレットを眺め、時は三年前に遡る。あの頃と何も変わっていない。こういった場を仕切るのは大概女達で、力仕事以外ではロクに役に立たない男達は机にふんぞり返り出てくる物を待つのみだ。

“いや~、随分とまた派手に暴れはりましたね”

最初に出迎えられた、この事件の一番の功労者を見下ろし安堵する。

“あんなビル、残っていても良い事はなかろう”

一時通信が切れ身を案じたが、どうやら無事だったようだ。それもそうやね!と同意し一回転する姿に、ふと気になる質問を投げ掛けた。

“リーブ、それは...何体目だ?”

真新しい縫いぐるみは得意げに目を細めると器用に指を曲げ、数字を示す。

“あれからまた色々とありまして、7号です”



一週間という長い間を空けシェルクと共に現れた私に、仲間達は何も問わなかった。

「ヴィンセントはここね!」

姿を見つけるや否や駆け寄ってきたマリンにマントを引っ張られ、小さなものを寄せ集めて出来た、フロアの中央にあるテーブルに一つ残った空席に通される。普段は整然と並んでいるだろう机と椅子は今はかなり乱雑に配置されていた。厨房ではティファが忙しく手を動かしており、既に良い香りが立ち昇っている。

「お疲れさん」

首にかけたタオルで顔を拭うシドからは、いつものヤニの臭いが漂った。

「昼間から飲み会か?何かある度に飲んでばかりだな」

「いいじゃねぇかよ、全員集まるのは一年ぶりだ」

一年...自らの時の流れに対する感覚の鈍さを再認識させられる。

「そうだよ!もうすぐまた約束の日じゃない。もしかして、忘れちゃった?」

リーブを背に乗せ厨房とフロアを往復し、子供達やユフィと戯れていたナナキが二人の間に鼻を突っ込む。

「今こうして顔を合わせているのだから、改めて会う必要もない」

「......!
ヒドいや...オイラ、すっごく楽しみにしてたのにさ!」

ナナキは膨れ面をして文句を垂れる。

「ケッ、男同士でコッソリ会うなんて気色悪い約束しやがってよ!
生きてる内は全員に声かけりゃいいじゃねぇか」

ナナキから事情を伺ったシドは相変わらず歯に衣着せず悪態をつく。その時、肩に何かが軽くぶつかった。

「あ、ごめん!」

足りない椅子を運んでいた少年の顔をまじまじと見つめ、私は的外れな質問をする。

「...デンゼルか?」

それに対し、バレットの図体の陰で腕を組み身体を休めていたクラウドは眉をひそめるが、すぐに「ああ」と思い付き腑に落ちたようだ。

「大きくなっただろ。あれから10センチ伸びた」

マリンも大人びたと思ったが、一年前に痩せぎすでそばかすばかり目立っていた少年は、大分その様相を変えていた。

「毎日外を走り回ってるからな。...それに、少し鍛えてる」

そう言いすっかり父親の顔をするクラウドは、良い遊び相手を得たようだ。見ず知らずの子供の面倒を見るのは容易ではなかろうが、女ばかりでは肩身の狭そうな彼は意外と重宝しているのかもしれない。

「やめて下さい!」

先程から何やら言い争いをしているシェルクが、ユフィに肩を押される形で目の前に現れる。

「ねーねーヴィンセント~、ちゃんと見た?
この服、ティファとアタシが選んだんだ!可愛くない?」

「あの格好で出歩くと街の住人が驚くと言うので従っただけです。可愛いとか可愛くないとかは関係ありません」

そう背後のユフィにつれなく言い放つシェルクは、今日の陽気に映える華やかな色を身に纏っていた。

「そうだな。前のものよりずっといい」

一瞬何を言われたのかわからなそうにするが、すぐに顔を赤くして回れ右をする彼女は、それを見て密かに笑みを浮かべるティファに呼び止められる。

「シェルク、手伝って!」

「手伝うって...私が? 何を...」

「はい! 運んで?」

湯気の立つ大皿を手渡され慌てふためく微笑ましい姿に、再び懐かしい感覚に包まれた。今回、シェルクを通し私の中に流れ込んできた沢山の想い。
眠りにつき、目を背けた事もあった。しかしふとした瞬間に、それは昨日の事のように鮮やかに蘇る。

――ねぇ、あの場所...覚えてる?

瞳を閉じる。
風が、舞い上がった。





...さん

護衛さん

「護衛さん!」

意識の遠い所で繰り返される声に、薄っすらと瞳を開けた。

「こんな所で寝てちゃ、風邪引きますよ?」

こちらを覗き込む顔に驚き、跳ね起きる。彼女はここの研究員の一人だった。肩書から想像していたのと全く異なる容姿が印象深く、良く覚えている。

「風が...とても気持ち良かったので、つい...」

覚醒したての覇気のない挙動に、彼女はおかしそうに吹き出した。

「あなたって...本当にタークス? 随分と隙だらけだけど」

口に手を当て肩を震わせる姿に、茶化して答える。

「まぁ...そんなだから、こんな冴えない任務に回されたのかもしれない」

その台詞に含まれた皮肉を汲み取ったのか、一転ジロリと睨まれた。

「悪かったわね。冴 え な く て!」

物騒な話題が流れ去りそうな雰囲気に息をつく。今まで遂行してきた仕事を省みれば、それはごく普通のものと比べかなり特殊だろう。何人殺したかはもう数えていない。人の命を断つ際に、その者の善悪を問う作業もとっくにやめた。そうでないと自分の精神がもたない。ただそれが必要とされる任務である事実だけが意味を持ち、タークスにとってはそれ以上も以下もない。

「まぁ、確かに...ここは風が気持ちいいわよね」

地に腰をつけたままぼんやりと考えに耽るこちらを余所に、彼女は明るく続けた。

「でもね。そこは、私の指定席なの」

「...え?」

「一緒に食べる?」





――お腹の子を実験に使うなんて!

青いな...
かつて自らの口から飛び出た衝動的な台詞をせせら笑う。 どんなに人の道を外れた事も、社の利益のためにはやり過ごせる境地に至っていたはずだ。
簡単な話だ。それがあの日から心を占める女性の身体だという理由だけで、私はああ振舞った。

――私は...あなたに生きて欲しかったんだ

ルクレツィア...許して欲しい。
君の真意に辿り着くまで、私はこんなにも長い時間をかけてしまった。

本当に、何から何まで一方的だ。そう心の中で笑い、金属音に軋(きし)む左手を握りしめる。この身体に巣食う最も凶悪な異形の正体は、彼女からの渾身の贈り物だったという訳か。

固く閉ざされた瞳から滑り落ちた涙。君は私の言葉で少しは楽になれたのだろうか?

――ごめんなさい...

再三繰り返される謝罪に、私もいつも似た台詞を返してきた。だが違う。本当は、伝えるべき気持ちはそれではなくて...

――でも、こんなんじゃ...違うよね?

脳裏に浮かぶ不安に満ちた顔を宥めるよう、優しく語りかける。

そうでもないさ。
私は生きている。それに...

周りを取り囲む幾つもの笑顔一つ一つに視線を巡らせる。哀しい記憶に混ざり合い、少しずつ嵩(かさ)を増していく温かい思い出。それだけじゃない。凍てついた少女の時が再び刻み出した事や、子供の健やかな成長を喜んだり...あの旅を経てこの身に生じた微かな、しかし確実な変化を噛み締め、続く台詞を紡いだ。


それに...笑うことだって、ある。


******************


“謝るのは私の方だ” ではなく、“ありがとう” と。

DCは名言の宝庫ですが、気落ちしたリーブにヴィンセントがかけた台詞が一番嬉しかったです。




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