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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Lost Chocolate


12' バレンタインSSです。
一緒に住んで初めての冬設定。


Lost Chocolate=消えたチョコレート








貰ったものは、たぶん二つ。

心の込もった手作りのお菓子と...


“俺は特別”


そんな想い。


Lost Chocolate


滅多に冷蔵庫を開けない俺は、その中に気を払う事もない。
しかしその日はなんとなく目に付いた。

風呂上がりの水を求めて扉を開くと、ハムやチーズに隠れ、片隅に不自然に居座る大きな何か。
ティファは隠し事が下手だ。
あたかもそこから彼女の “見ないで” との主張が聞こえてくるようで、ついつい包みを覗き見る。

「あ...」

すっかり忘れてた。
頭に浮かぶのは、昨年、旅の途中のその日に馬鹿騒ぎをしていた仲間達の姿。
そして近々手に入るだろうプレゼントを見越しほくそ笑むが、同時につまらなくなるのはこの量だ。

(どうせ店の客にも配るんだろうな)

だが客商売の彼女にその文句を言うのは不条理というもの。

(同じのじゃないといい...)

そう願い、それをそっと元の位置へ戻し、扉を閉める。





「あ!クラウドだ!!」
「おっかえり~!」

飛んで来たのはいつもと違う声。

「何してるんだ?」

カウンターには一人と一匹。
休みに顔を見せる事はあるが、営業中は珍しい。

「チョコレート目当てで来たんだよね?」

マリンが楽しそうにカチャカチャと皿を運びながら目配せする。

...そうか、今日は例の日か。

「お先に頂いてるよん♪
ほら、これなんてマリンの描いた似顔絵つき~」

そう言いチョコレートにかぶりつくユフィの口からはみでているツンツン頭は......俺の顔か?

「ティファ、クラウドには渡さないの?」

ナナキの発言にドキリとした。

「え!?ええと...
クラウド、今と後とどっちがいい?
あ、お帰りなさい!」

カウンターの中の挙動不審な態度を笑うと共に、自分にも用意がありホッとする。
予想通り、周りの客のテーブルにも小ぶりな箱。
俺だけ何もないのは何だか癪だ。

「ただいま。......今がいい」

奥から戻ったティファが綺麗にラッピングされた箱を差し出す。

「はい」

「...ありがとう」

包みを開くと中には綺麗に並んだ様々な種類のチョコレート。

「さすがティファ!プロ級だね、美味しそ~」

ヨダレを垂らすナナキから箱を遠ざけ、隣に聞いた。

「こういうのって、作るの難しいのか?」

「作ったことないからわかんない」

...だよな。

「けど、ティファならお茶の子さいさいなんじゃないの?」

客の会計をするティファを待ち、尋ねる。

「食べてもいいか?」

「もうクラウドのだよ」

おかしそうに笑われ照れ臭く手を伸ばすが、ふと近くの会話が気になった。

「クッキーとは珍しいね!でも美味いよ」

「ごめんなさい、チョコレートを切らしちゃって...」

(切らした?)

視線をずらすと周りの客達の手には茶色いクッキー。
という事は、チョコレートが使われたのは3人だけ。
でも...

(そんな量じゃなかったぞ)

厨房に戻り、再び調理に取り掛かる背中に問いかける。


なぁ、他には誰にあげたんだ?



疑問を残しつつも、ユフィからの物の何倍も手の込んでそうなそれを、出先で満足気に眺める。
甘い物はあまり得意ではないが、工夫されているようで食べ易かった。
普通のより色が黒い気がするし、ブランデーが入ってたり苦い粉がかかってたりする。

(疲れがとれる気がするな)

1日1粒、小腹が空いた夕刻に食べ続け、それはあっという間になくなった。





「マリン、お片づけありがとう。もういいよ」

「うん!」

休日の夕食後、テーブルに遊び道具を並べる姿を後目にカウンターでくつろぐ。
すると目の前でティファが何かを取ろうと戸棚に背伸びをした。

「っと...」

しかし僅かに手が届かず、足元がよろける。

「取ってやろうか?」

「え!?ううん、大丈夫!平気!!」

慌てて首と手を勢い良く振るティファ。

「遠慮するな」

俺がやれば一瞬だ。

しかしティファは何が欲しかったか忘れただの、食後に動くのは良くないだの難癖をつけ俺を追いやろうとする。

...ティファは隠し事が下手だ。

(怪しい...)

ムキになり、抵抗する手を払いのけ棚を覗きこんだ。

(.........な 、何だ? コレ...)

棚の手前には何やら茶色い塊がぎっしり詰まったタッパー。

「わーわーわー!!」

変な声を上げるティファを無視して蓋を開けた。
途端に広がる甘い香り。

...これは......チョコレート?

「あーあ。ティファ、見つかっちゃったね」

騒ぎを聞きつけ、マリンも寄ってきた。
ティファはそれを剥ぎ取り、しどろもどろ口を開く。

「実は私...毎年ケーキやクッキーばかりでチョコレートを作った事がなくて...」

「たくさん失敗しちゃったんだよねぇ」

マリンが先を補足する。

失敗? ティファが?

改めて目の前のチョコレートに目を凝らす。
確かに形がいびつだったり、所々白くなってたりした。
そう言えば前回はケーキを振舞われた気がする。

「チョコレートってそんなに難しいのか?」

「シンプルなのなら簡単かもしれないけど...
売ってるのに負けたくないじゃない?」

既に腹の中へと消え去った、文句の付け所のない選りすぐり達を思い出す。
同時に彷彿するのは、普段2つ3つの料理を何なく平行させる彼女が台所で手を焼く姿。

「二人で協力して早くなくしちゃおうと思ったんだけど、マリンはビターチョコが苦手だし...」

「そんなに食べると太るぞ」

続く台詞を言い当て、ひるんだ瞬間すかさずそれを奪い返した。

「これは俺が食べる」

「やだやだ、返して!!」

「俺にはこれを食べる権利も義務もあると思うんだ」

だって、俺のために作られたものなんだろ?

伸ばした手を降ろし、こんな事なら捨てればよかった、とティファはしゅんとする。

「来年までにはもっと上手くなっておくからね」

「そんな必要はない」

すぐさま言い返し、有無を言わさず二階へ持って行く。

これを全部食べ終えたら言おうかな。



なぁ、ティファ。

これに懲りずにこれからもチョコレートをくれないか?
それも俺だけに。

失敗作も含めて、責任もって全部食べるから。


******************


チョコレート音痴にしてしまいました。
たまにはキッチンで苦戦してるのも可愛いかなと。
お菓子より料理の方が得意そうだしね。

仲間達へのチョコが手抜き?
いやいや、本命が特別なだけですよ!



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