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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

暗闇の彼方 ~Side Tifa~


約束後のティファ。
村の子がオリキャラとして出てきます。







あの夜から心を占める、大切な約束。

それは日々に力をくれる。

そんな彼と比べ、私に出来ることは何?


待ってるだけじゃ、ダメなんだ。


暗闇の彼方 ~Side Tifa~


パパに反抗したのは初めてだった。

「全く...女の子が格闘技だなんて...!」

ぶつくさ言われつつも承諾を得て、その腕に抱きついた。

村は年々錆びれてく。
山のモンスターの凶暴化のせいだ。

自営業や観光業に見切りをつけた子供達は次々と都会へ出て行く。
しかし私にはその気はなかった。
幼い頃から村のために奮闘するパパを見てきたからだろうか。
元々きらびやかな街にも興味がない。
それに...

仰向けに倒れ、山の麓に広がる花畑に背を預ける。

(こんなに綺麗なのに...)

――俺...春になったら、村を出てミッドガルへ行くよ

――...男の子達って、みーんな村を出てっちゃうね

つい口を突いた不満。
だって、寂しかった。

(でも!!)

勢い良く体を起こす。


私にはまだ、仲間がいる。





「まずは隣町でビラ配りかなぁ...
爺ちゃんの仲良しがいるから、看板も置いて貰えるかもしれない」

「そこで来てくれたお客さんを、私がガイドとして守ってあげればいいのよね!」

彼は村の宿屋の息子。
ここで家業を継ぐ気のある唯一の男の子だ。
互いに励まし合い、共に村の復興を企てるのは私達の日課だった。

「あ、いっけね。そろそろお客さんを迎えに行かなくちゃ。
じゃあまたね、ティファ」

うん、頑張って!そう手を振り背を向ける。

(...そうだ)

格闘技を習いだしたこと、報告してみようかな。





「ありがとうございました!」

お師匠様との鍛錬を終え、帰途につく。
ふと久しぶりに訪れた観光客の存在が気になり、麓へ向かった。

一面に広がる夕暮れの花畑に人影はない。

(もう宿に帰っちゃったのかな?)

引き返そうとした時、山の入口で物音がした気がした。

(まさかね...)

山には近づかないよう再三注意されてるはずだ。
しかし足は無意識に何かの気配へと向かう。

“この先危険。観光客は立ち入り禁止”

     ドクン...

看板の奥にはモンスターに襲われる男女の姿。

(どうしよう...)

修行を始めて半年。
相手にならない事はないだろうが、実践は初めてだった。
しかし人を呼びに行く暇などない。
手足がガタガタと震えた。

(落ち着いて。言われた事、思い出して!)

“体を武器として戦う際に重要なのは、ダメージを与える事より、受けない事だ”

“ティファ、お前にさして力はない。相手の力を利用しろ!”

(村を...守るんでしょ!!)

固く結んだ拳を見つめ、駆け出した。



焦らず攻撃を避け続け、隙を探す。
力もスピードも負けてたが、知能が低いのだろう。
繰り返される単調な動きに、ついに攻めのチャンスを見出す。

(お願い、効いて!!)

渾身の力を込めた拳に敵はひっくり返り動きを止めた。

(た、倒した...)

力が抜け、その場にへたり込んだ。





その後しばらく、武勇伝は村で語り続けられる。

“なんて無茶するんだ!!”

初めは怒ったパパも観光客に礼を言われ、まんざらでもなさそうだ。

だけど私の顔は日に日に曇る。
今朝も新聞を取った後、郵便受けを覗き込み溜息をついた。

(返事、来ないな...)

隣の家に視線を投げる。
何かあったのかな...
今度、おばさんに聞いてみようか。



「クラウド?
電話は繋がるし変わりはないみたいだけど...どうかしたのかい?」

安心すると同時に胸がチクリとする。

「そうなんですね。実は...」

手紙の件を伝えると、おばさんは呆れ顔を片手で覆う。

「あの、馬鹿息子は!!
私が言って聞くような子じゃないしね...
ティファちゃん、許してやってくれないかい?」

「いえ、怒ってる訳じゃ...」

寂しいだけで...

「何も話してくれないからわからないけどね...
多分あの子、まだソルジャーになれてないんだよ。
大見得きって出てったろう?
きっと恥ずかしくって、返事なんか書けないんだよ...」

(気にすることなんか、ないのに)

15歳のソルジャーなんて新聞に載ったためしがない。

“恥ずかしくって、返事なんか書けないんだよ...”

彼を最も知る人間の言葉に、心は少し軽くなった。





「さすがだな、ティファは。
木登りも一番最初に出来るようになったの、ティファだったもんな」

“今晩、少し話せないかな?”

そう言われ私は今彼と二人、夜空の下にいる。
しばらく雑談が続くが、やがて意を決したように切り出された。

「言い出しにくいんだけどさ...」

「...え?」

「爺ちゃん、自分の代で宿を閉める気らしい。
赤字続きで借金もあるみたいで...俺が継いでも食ってけないって」

「......そうなんだ...
それじゃ、どうするの?」

「俺もミッドガルに行くしかないよな。
そこでなんとか新羅に入社して...本当はここに残りたいんだけど」

(なら、諦めなければいいのに...)

しかし、明日には出る、そう言う彼の心はとうの昔に決まってたのだろう。

(これからは一人、か...)

途方に暮れる私を余所に、彼は生唾を飲んで続ける。

「ティファ、あのさ...ほっぺでいいんだ。
...最後に...キスしてくれないか?
俺......ずっとティファのこと...!」

寝耳に水の要望に動揺するが、頭をよぎるのは星空に夢を誓う真っ直ぐな青い瞳。
見返りを何も求める事なく、約束してくれた。
そして...きっと今も必死に頑張ってる。
弱音を吐く事もなく、一人で。

「“最後” なの?」

「...え?」

「夢が叶ったら...
夢を叶えて、また会えた時にしない?」

それじゃダメかな?と伺うと、放心していた彼は我に帰り肩を落とした。

「そ、そうだよな...やっぱり、ダメだよな...」

「そういう意味じゃなくて...」

「いや!もう良いんだ。気持ちはわかったから...」

私の言葉を遮って、彼は大きく首を振る。
誤解をされたままさよならは嫌だったが、聞く耳持たない様子にそれ以上何も言わなかった。

「俺、戻るね。おやすみ...」

「うん、おやすみなさい。
明日の朝はお見送りに行くからね」



一人闇に沈んだ村の広場にとり残され、給水塔に向かう。
見上げた先は厚い雲に覆われ、月も星も見えない。
暗く、遠い夜空の彼方に想いを馳せた。
たいして親しくもなかった彼。
何故あんなにかっこ良く見えたか、わかった気がした。

難しい夢。
私と彼の願いが叶うかは、わからない。
だけどきっと努力する事が、最後まで諦めない事が大切なんだ。

いつかまた会えた時、必ず伝えよう。

“クラウド、頑張ったね!”

そしてその時、私も胸を張れるように...


ここで精一杯、毎日を行きよう。


******************


クラウド編もあります。




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