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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

From the Heart


ACわりと直後。ユフィのお節介その1。







心配してくれるのは有難いし、結果オーライな事も確かにある。

けど、これだけは確実だ。


...あいつはいつだって、やり方が強引過ぎる。


From the Heart


「だから前もって連絡ちょうだいってば」

「なんか他人行儀じゃん?そーゆーの」

「......常識でしょ」

日曜日の昼下がり。
照明の灯らない店内は薄暗いが、一面の窓から差し込む日差しは充分に代わりの役目を果たしている。

「これね、クラウドも大好きなんだよ」

あたしが要求した “前に食べたフワフワのオムライス” のための卵を器用に割るマリンは、ボウルの中身をかき混ぜる戦友と違いご機嫌だ。

「出かけちゃってたらどうしたのよ?
それに言ってくれればお昼だって一緒に食べられたのに...」

「はいはい、次からは気をつけるって~」

そう適当にやり過ごすあたしに反省の色はない。

“例の件” でわかったのは、抜き打ちチェックが必要だってこと。
クラウドが失踪したなんて大事件が起きたのに、ティファは何も言ってこなかった。
それに...

周囲をチョロチョロせわしなくする男の子にチラリと目をやる。

...なんか知らない内に一人増えてるし。

まっこの子に罪はないし、あたしの手裏剣を憧れの眼差しで見つめるなんて可愛...「変なの。やっぱ剣の方がカッコイイや」

「んだとぉっっコラ!!」

「ユフィ、汚い言葉遣いはやめて。
...すぐ真似するんだから」

だけどあたしの剣幕に一瞬たじろいだ少年は、何が面白いのかすぐに目を輝かせ更にちょっかいを出してくる。

「ほら、ヘタに触ると危ないよ!
これは修行した人だけが扱える、紛れもない武器なんだから」

変なの!と繰り返し手裏剣を突っつくデンゼルの相手をしながら、先ほど店の入口をくぐった際のやりとりを思い出す。



“休みの日まで仕事!?”

これだから言わんこっちゃない。

“午後には戻って来るわよ~
そしたらコレを使わせて貰うつもり”

臨時休業の札をヒラヒラとかざすティファに、とりあえずは一安心。
どうやらあの一件で少しも成長してない訳ではなさそうだ。
.........“家族としては” ね。



「はい、お待ちどうさま!」

気付けば子供達は今度は手持ちのマテリアに興味を移し始め、あたしは目の前に置かれた絶妙な匂いを発する黄色い物体に思考を止めた。

「んっ、んぐ!やっぱり美味しい!!」

「ありがと。
ねぇ、そんなに慌ててかきこまなくても...」

コトンと脇にさりげなく置かれた水からは微かにレモンの香りが漂い、相変わらず完璧だと思う。
添えてあるサラダの盛り付けも、ドレッシングも。
この日常生活において類稀なる才能を発揮する友人が、とある部分に重大な欠陥を持つのは結構知られた話だ。

お昼ご飯を半分かき入れお腹も落ち着きを取り戻した頃、それとなく探りを入れてみる。

「二人でどこか行ったりとかって、しないの~?」

「やめてよ、子供たちの前で...」

「昨日は珍しく一緒に出掛けたと思ったら...
嬉しそうに “お一人様一本限り” の大根抱えて帰って来たからな」

「色気ないよねぇ...」

隣でマテリアをカチャカチャする子供二人のマセた発言にあんぐりとなるが、ここぞとばかりに畳み掛ける。

「お帰りなさいのチューとか、しないわけ?」

「おかっ...!ってそんなこと、する訳ないでしょ!!」

「無理無理」

「クラウドもあんなだしねぇ...」

やれやれとマテリアをほっぽり出し、再び手裏剣をいじり出す二人を後目に呆れ声を出す。

「...あんなこと言ってるし、別に二人は気にしなくてもいいんじゃないの?」

「だって、嫌がられるかもしれないし...」

...要は自分に自信がないわけね。
さっきから同じ所を繰り返し布巾でなぞるティファに先程までの威勢はない。

昔から謎だけど、その魅力の割にティファは奥手だ。
でもそれって言い換えれば...

「なんだ、結局自分が傷つきたくないだけじゃん」

あのヘタレが一緒に住むところまでこぎつけたんだから、ティファも少しは気持ちを汲んでやればいーのに。
あいつの素性を一番理解してるのはティファなんだからさ。
それにあたしはエアリスの想いを知ってるから、なおさら二人には中途半端は...

カラン...

「「あっ!クラウド、お帰り~!!」」

クラウドは両脇に飛びつく子供達の頭に手を添えながら、あたしには「来てたのか?」と眉を少し上げるだけの愛想のない挨拶をしてくる。

「クラウド、おかえりなさい」

ティファもカウンターを回ったところで、ふと散らかされたままのマテリアが目に飛び込んだ。

「ああ、ただいま。
三人とも、待たせて悪かったな。
ん?ティファ、どうしたんだ?」

ティファは迷いなくクラウドの首に手を絡め、引き寄せるとニッコリする。

「クラウド、ただいまのキスは?」

「......は?」

クラウドは目を見開き、デンゼルは椅子から転げ落ち、マリンは持っていた手裏剣を放り投げた。

「あ!コラ!!アタシの手裏剣~!!」

慌てて手を伸ばすと握っていたものが滑り落ち、それはコロコロとクラウドの足元に転がってく。

「...ふぅん」

それを拾い上げまじまじと見ると、クラウドは冷たい視線をこちらに投げてきた。
そこから逃げるよう、慌てて背を向ける。

「えっ...え?私いま、何した!?」

我に返ったティファはしばし呆然としていたが、やがて一目散に二階へ駆け出してしまう。
取り残された四人の間に気まずい空気が流れた。

「お~ま~え~は~......」

背後に殺気を感じた次の瞬間、ゲンコツが振り下ろされた。

「...いったい何しに来たんだよ!!」

「わー!!ごめんって!ごめんなさい!!」

続く攻撃に備えようと手で防御するが、クラウドは力なくカウンターに座りこんでしまう。
ピクリとも動かないその様子を見て、恐る恐る伺った。

「...とか言いながら、まんざらでもなかったんじゃないの~?」

するとゆっくりと顔を上げ、ギロリと睨みつけられた。
そして溜息をつき苛立った声を出す。

「あんな無理やりやらされた事で喜ぶ奴がいると思うのか?」

まぁ確かに。でも...

「あながち無理やりってわけでもないんだけどな~...」

「...え?」





「ティファ、俺だ。入るぞ?」

同時に響いた、カチャリと扉が開く音に肩を揺らした。
頭から布団を被ったまま声を荒げる。

「ごっ...ごごごごごめん!クラウド!!
私どうしちゃったんだろ、あんな思ってもいないこと...」

しかし体は再び独りでに動きだし、布団から抜け出すと腕は側に立っていたクラウドに巻き付いた。
クラウドは目の前に片手を持ってくる。

「さっきのは全部コレの仕業だ。だから何も気にすることない」

...“操る” のマテリア?

事態を把握しホっとするが、今自分がとっている体勢が落ち着かない。
するとクラウドはマテリアをポンとベッドの上に放り投げた。

「ここから先は?ティファはどうしたい?」

「...え?」

背中に手を回され、真っ直ぐに見詰められる。
だけど私は硬直したまま動けない。
そのまましばらく時間が経った。

「ごめん...何やってるんだろ、俺。
ティファがそんなこと思う訳ないよな。
ユフィの奴、そそのかしやがって...」

ゆっくりと私の腕をほどきにかかるクラウド。
触れ合っていた部分に空気が入り込み、その冷たさに寂しさを覚える。

“傷つきたくないだけじゃん”

自分の気持ちを押し殺すのが最善だと思ってた。
相手が望んでると明確な事だけを受け入れて。
でも、それって逃げてるだけなのかな。
幸せになろうとする努力を怠って...

「...ん?」

やんわりと彼の手を振りほどき、そっと引き寄せる。

「クラウド、キスしたい...」

本当は、いつだって...





「おい、どうしてくれるんだよ!
今日はせっかくのピクニックだったんだぞ!!」

膨れ面であたしの椅子をグラグラ揺らすデンゼルを余所にマリンを見ると、こちらはなんてことない顔だ。

「下りて来ないってことは~...?」

天井に視線を移すと、それに合わせて目配せしてくる。

「うまくいってるのかも、ね?」

となれば...!と勢いよく立ちあがり二人の手を引いた。

「さっ、デンゼル。アタシが手裏剣おしえてあげるから、三人で遊びに行こ!」

「三人でって...二人はどうするんだよ!?」

「いいのいいの!
ユフィお姉ちゃん、私もシュシュシュ習いたーい!」

マリンもデンゼルの体をズルズルと引っ張った。

「げー!やだよ俺、シュシュシュなんてカッコ悪い...」

「んだとぉっ!?」

「さっきからそれ、父ちゃんにソックリー!!」

「ゲゲッ!!マリン、冗談やめてよ!」

慌ただしく扉を閉め、二人の手を取り駆け出した。
背後に映るティファの部屋の窓を仰ぎ見て、笑いを堪える。

(さってと~、帰った時にはどんな顔して出てくるかな?)


これだから、お節介はやめられない♪


******************


From the heart=心から




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