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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

伝わるキモチ


AC後のfamily物です。
Cloud×Denzel×Tifa。
デンゼルが10歳、11歳、12歳?くらいですかね。
男の子の精神発育は、想像がつきませぬ。



「デンゼルー?髪まだ濡れてるよ。
こっちおいで、乾かしてあげる」


伝わるキモチ


脱衣所から漏れるティファの声。

久しぶりの休日。

二人にとっては何らへんてつもない会話だろうが、長く家を空けることの多い俺には違う。
今日も家族に変わりはないんだ、と感じられる些細なやり取りが何より俺を安心させてくれる。
自然と口元が緩んだが、デンゼルから返ってきた返事は予想とは異なるものだった。

「いいよ、後で自分でするから。子供扱いしないで」

そのままパタパタと二階へ上がって行く足音。

一瞬止まったが、そのまま惰性で進路を変えない足。
当然脱衣所から出てきたティファと顔を合わせることとなる。
若干の気まずさが二人を取り囲んだ。

「...聞いてた?」

誤魔化そうかとも思ったが、それは俺の得意分野ではないからな。

「まぁ、な」

「私、嫌われちゃったかな?」

「まさか。恥ずかしがってるだけだろ。
明るい子だけど年頃の男の子に変わりはない」

「そう...よね。そうだよね。
頭ではわかってるんだけどな、ちょっと固まっちゃった。
マリンは簡単なのにな」

「本気であんな事言ったんじゃないさ。
なぁ、あんまり気にするなよ」





結局その日は上手い言葉もかけてやれないまま二人眠りについた。
肩にティファの重みを感じながら考える。
デンゼルは俺への態度には最近もこれといった変化はない。
仕事から帰ってくると笑顔で飛びついてくるし、休日だって構って欲しそうだ。
つまり先程のアレは、思春期の少年が女親に対して見せる反抗期のような、異性を恥ずかしく感じるようなものなのだろう。

何も心配するようなことじゃない、極々自然なことだ。
教会の前で初めて会った時は、小さくて今にも消え入りそうな「子供」だった。
時間が経つのは本当に早いものだな。
そこまで考えて、血の繋がりのない息子の成長を嬉しく思うと共に、心の隅になんとも言い表し難い感情が沸き起こり胸がチクリと痛んだ。

何故だ?ティファが悲しそうな顔をしていたから?
いや、違う。この気持ちはむしろデンゼルの...

落ちていく意識の中に浮かんで来たのは、もう何年も前に死に別れた母親の顔だった。





「デンゼル、マリン、ありがとう。
そろそろお風呂に入って寝る準備ね」

あれから何日か経った後のセブンスヘブン。
食事のオーダーのピークが去った後程なく、ティファは二人の子供を居住区に引っ込める。

「クラウドも、ずーーっと座ってないでお皿洗いくらいするんだよ!」

茶々を入れるマリン。

「するさ。
料理と接客はからきしだけど、皿洗いだけは得意なんだぞ」

「皿洗いだけはって...頼りになるんだかならないんだか」

笑うデンゼル。

「クラウドは外でちゃんとお仕事して来てるんだからいいのよ」

一日の最後に執り行われる家族全員での談笑。
続くはティファのお休みなさいのキスだが...
満面の笑みでティファからのキスを受けたマリンと違い、デンゼルの表情は複雑だ。

「なぁ、ティファ。
こういうのもうやめてよ。恥ずかしいよ。
...お休み」



「おっなんだ?
デン坊も一丁前にかっこつけるようになったか?」

いらないなら俺が貰いたいぜ、と茶化す客に必死に愛想笑いで返しつつも、ティファの顔は今にも泣きそうだ。

...まぁ、やられた方はたまったもんじゃないだろうな。

さて、これに関しては何もしないつもりだったがどうしたものか。
兄弟もおらずそもそも男心に鈍いティファ。
デンゼルもマリンも、本当の親元から離れてここで暮らすのにストレスがない訳がない。
それでも皆お互いを想って頑張ってる。
では俺は?

少し前の俺なら何もしなかっただろうな。
でも、それでいいのか?
見てるだけで一体今まで何回失敗してきたんだ。

「悪い、ティファ。
今日早めに風呂もらっていいか?」

返事を聞く前に立ち上がっていた。



マリンが先に入ってるのだろう。
デンゼルは一人子供部屋にいた。

「たまには一緒に風呂入るか?」

「何、突然」

「深い意味はない」

「...さっきの事、怒ってるのか?」

「怒ってなんかない」

「でもティファにひどいこと言った」

俯くデンゼル。

その言葉には応えず、ゆっくりデンゼルが座ってるのとは向かいのベッドに座り込んだ。

「なぁ、デンゼルは...最後にお母さんと何を話したかって覚えてるか?」

「えっ?...そりゃあね。
でも、学校で何があったとか、ご飯が美味しいとか、本当にくだらないことだったよ。
何で?」

「そうか。...それは羨ましいな」

「だから何で?」

「俺は母親と死に別れる前、“別に”とか、“興味ない”とかしか言った覚えがない」

「...」

「つまり、デンゼルは俺の百倍出来た子だ。
俺が怒る筋合いはないよ」

「...」

「それでも、もっと色んな事を話せば良かった。
ありがとうと伝えるべきだったと思ってるだろう?」

「...思ってるよ。当たり前だろう?
今でも毎日思ってるよ!
あんなに...あんなに良くしてもらったのに俺は何も伝えなかった。
ひどいことだって沢山言った!
本当に馬鹿だった!!」

内に溜め込んだものを吐き出すよう、デンゼルは顔を歪めて泣き出した。

「デンゼルのお母さんにはデンゼルの気持ちは伝わってるよ。
俺にはわかる。
きっと俺の母さんもそうなんだ。
でも...それでも後悔は消えないよな?
ただ俺は、デンゼルには同じ後悔はこれ以上して欲しくないと思っただけなんだ」

わかってるよ、わかってるよ、と繰り返したままデンゼルは泣き止まない。

泣かせるつもりはなかったんだけどな。
でも、自分の前で涙を見せてくれるその姿を、素直に愛おしいと思った。
まだ柔らかい癖っ毛の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。

「顔がぐちゃぐちゃになっちゃったな。
マリンに見られたらかっこ悪いから、さっさと風呂入って綺麗にするぞ」





店を閉めて寝る準備を整えたティファは、ベッドに入る前に必ず子供部屋を覗く。
俺も一緒に行くこともあるけど、今日は何となくやめておいた。
瞳が固く閉ざされているのを確認し、優しくデンゼルのおでこに触れるティファ。

「...ティファ?」

「ごめん、起こしちゃったね。
もう行くから、ゆっくりお休み」

「違うんだ。
...なぁ、ティファ。
お休みなさいのキスだけど、誰も見てない時だったらしてもいいよ」

少しの間、驚いたように目をまん丸にしていたティファだったが、その顔はみるみる明るくなっていく。

「本当?嬉しい」

「ちなみに、いつまでする気?」

「デンゼルがお嫁さんを貰うまで」

「うへぇ」

マリンを起こさないよう気遣いながら、子供部屋に二人の控えめな笑い声が響いた。





「ねぇ、クラウド?」

「ん?」

俺の肩に頭を乗せながらティファが言う。

「もしかして、デンゼルに何か言ってくれたの?」

「別に。ただ一緒に風呂に入っただけだ」

「じゃあそういうことにしておく」

クスクス笑うティファの吐息が首筋にくすぐったい。

「なぁ、ティファ」

「ん?」

「もし。もしもだぞ。
将来もしマリンが俺の事毛嫌いするようなことが起こったら...ちゃんとフォローしてくれるか?」

「うーん...
...考えとく!」


家族の形が変わるのは怖いことじゃない。
何度でも向き合えばいいんだ。
ほんの少しだけど、昔の嫌いだった自分を変えられた気がした日だった。


******************


若いママ、ティファとストライフ家の一番でかい子供クラウド(笑)の子育て奮闘記を書いたつもりです。
何故か風呂場描写が多くなってしまった。
デンゼルも、いきなりあんな若くて綺麗なママが出来たら照れ臭ろうて。
小説やACを見る限り、彼は割りと男勝りですし。
でも、何だかんだ言って、男の子って最終的にはお母さんにつくものです。

個人的な話ですが、二年前に事故で母を亡くしました。
母の携帯の着信を見る限り、最後に話したのはおそらく私。
なのに、あろうことか私はその電話で喧嘩したんです。
母は私を恨んでなどはいない。むしろ笑い飛ばすであろう。
わかってはいますが、彼女が最後に聞いた言葉が私の酷い言葉だったなんて、今でも許せないんです。


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