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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Glossy Juicy 〜前編〜

クラウドは、オトナのオモチャを手に入れた!

裏描写は後編のみです。

裏度数【★★★★★



Glossy Juicy ~前編~


「そういうことか...」

日が落ち薄暗くなった裏通りに灯る蛍光色の看板。その俗っぽいネオンを忌々しく睨み上げ、金髪の男は自らの発想の甘さに一人悪態をついた。しかしいくら嘆いても失われた時は戻らない。気を取り直し、掃除の行き届いていない曇ったガラス扉に手をかけ屋内へと足を進めた。

「あ、ちょっと待っててっす。こっちからも送りたいものが...」

出荷の準備をしていなかったのか、アルバイトとおぼしき若者はレジカウンターの奥に引っ込んだきりなかなか出て来ない。男がスタッフルームに姿を消したのを良いことに、クラウドは体は正面に向けたまま片目を開け、先程から内心気になってしょうがない真横の物体に横目を馳せる。視線の先にそびえるマネキンが身に纏っているのは...

レースで編み上げられたエナメル素材のハイレグ衣装であった。 それが手にしている鞭が目に飛び込んで来るに従い、喉仏は波打ち派手な音を立てる。

クラウドが佇む場所は、所謂そのような類のグッズを専門とする販売店であった。その店は荷物を届けようにも日のある内はシャッターが降りていて、だが一般的な飲食店と軒を並べていたため夜間しか開いていないと思い至らず何度も無駄足を踏んでしまった。

ここ数日頭を悩ませていた問題の解消と共に勢いよく足を踏み入れたものの、中々お目にかかれない品々に囲まれ否応にもそわそわしてしまう。多くは女性に対して使用する器具であり、ショーケース内にはマテリアなんてものもあった。

...デザイン自体は悪くないよな。
隣に飾られた斬新なコスチュームは彼女の容姿そのものには似合うのだと思う。願わくばそれを身に纏った姿を拝んでみたい。だが生真面目な恋人の内面を思う前に、クラウドは一抹の願望が叶う可能性を、谷間の覗く胸元をチラリと見上げ優越感に浸りながら棄却した。

(入るわけないし、な)

でも、上半身は無理でも、両脇が紐のごとく細くなった黒いショーツとその下に続く網タイツだけなら...

「SMっすか?」
「いや、服が気になるだけだ。それにどっちかと言うと縛られるよりは縛る方が...」
「あ~、そっちスね。だったらコッチが...」

いつの間にかマネキンに向かって前のめっていたクラウドはハッと我に返り、足元で棚下をゴソゴソやりだす男を慌てて止める。

「いや待て俺はノーマルだ。そんなことよりもさっさと荷物をよこせ」
「えぇ~~?別にアブナイ系ばっかでもないんスけどねぇ...」

客がいなくて暇なのか、あれよあれよと営業の餌食とされだす。しつこい押し売りを「興味がない」の一点張りで振り切った。正確に言うと人並みの興味はあったが、同居人はこの手の冗談が一切通じないのである。この店に置いてある商品を我が家に持ち帰ることは家庭の円満に大いに差し障った。

「しょうがないなぁ。ケチだと人生損するっすよ」

「はい」という声と共に集荷した段ボールにトンと筒状の何かが乗せられる。

「コレ、メーカーのサンプル。サービスっす!」

約四半世紀に渡る人生において色恋沙汰にとんと恵まれてこなかったクラウドではあるが、目の前でタプンと揺れる透明な液体に対する知識は健常な男子並みに持ち合わせていたようだ。もしかしてこれは...これを使えば...

(ティファを、ヌルヌルに...!)

しかしながら、即座に頭を振り冷静さを取り戻そうと試みる。こんなものでさえストライフ家にとっては十分に危険物であった。

「い、いや...」
「あ、旦那もしかして...ソッチはカラッカラっすかぁ?そっかぁ、ご無沙汰なら使い道ないスね」

見下す様に “NEO蜜蜂の館 10%OFFクーポン” と書かれた紙切れを代わりに差し出され、くだらないプライドがしゃしゃり出た。小汚い手を払い退け、押し問答を終わらせると捨て台詞を置いてその場を後にする。

「...相手には困ってない」



デスクライトの光が卓上に撒かれた伝票を照らす。伝票に対する売上金額がどうにも合わないが、よくあることだ。こういった時は日を改めて仕切り直しをするに限る。

椅子の背もたれにもたれ掛かり、苦手なデスクワークがもたらす苛つき以外の心の靄(もや)の正体を探りだす。数日前は随分と不快な目に合った。よくよく考えれば最後に差し出された割引券の方がよっぽど見られてはマズいものではあったし、どんな物を渡されたとしても帰宅前に処分してしまえば良い訳なので致命的なことなど起こり得ない。

苛々を募らせる理由などないはずなのに、何故か心に引っかかるものがあり気が晴れなかった。とにかく、あの店への配達依頼は金輪際入らないといい。その時、背後の扉をノックする音が響き、思わず肩を跳ね上げる。無論その相手は不躾に室内に侵入して来たりはしない。程なくしてそろりと開いた扉から顔が覗いた。

「手こずり中?」
「あ、いや...もう終わる」
「じゃあお茶淹れておいてあげる。コーヒーと紅茶、どっちが良い?」
「ありがとう。ティファが飲みたい方でいい」

早くに帰途に着いた晩は一日の出来事を互いに報告し合う時間を設けるのが習慣だった。無口な自分の打つ相槌であっても彼女が常に満たされた表情でその時を過ごしてくれることを知り、今や口下手な自分にとってもそれはかけがえのない時間である。

「じゃ、紅茶ね」

軽い足取りで部屋の入口へと引き返そうとする背中にふと物寂しさを覚え、服をツイと掴んで引き止めた。「ん?」と振り向いたティファの肩に手を置き体重をかける。こちらの意図に気付いた彼女は戸惑いながらも誘導に従い、座ったままのクラウドに覆い被さるよう唇を重ねてくれる。

「ん...」

柔らかな感触に、胸を占めるモヤモヤが軽くなった気がした。とその時、机の下にある棚から何かがゴトンと大きな音を立てて落ち、ゴロゴロと床の上を転がっていく。先に拾って隠すのも不自然で、クラウドは青くなり硬直していた。足元のそれを拾い上げ、まじまじと観察するティファ。

「何これ?」

お、終わった...

「クラウドの?」

液体の詰まったボトルを手になんて事ない風に聞いてくる。いつ雷が落とされるかとビクビクしつつ、とりあえず差し支えのない事実を伝えた。

「い、いや...客からもらって...」
「クラウド、男の人なのに?ああ、女の人と住んでること言ったんだ」

物の正体を把握してもティファに動揺する気配はなく、彼女の理解が自分の予想とは違う方角に進んでいることに思い当たる。

(何と勘違いしてるんだ?)

「エステとかで使うやつでしょ?これ。マッサージする時に」
「あ、ああ...」
(...そうなのか?)

ティファにアダルト用品に関する知識がないのと同じくらい、クラウドにもその分野への知識などありはしない。どうやら真っ当な場面でもこれに似た品は使用される事があるらしい。よく見るとシンプルに “MASSAGE LOTION” としか書かれていないそれはピンク色だし女性物の化粧品のようにも見える。

ホッと胸を撫で下ろしたクラウドは、夜が深くなろうとする時刻にも関わらず爛々と輝く瞳から熱い視線が注がれていることに気がついた。手にポンとボトルを握らされる。

「ね。ソレ、使ってみたい!」



「ねぇねぇ、早く!」

ティファはベッドにうつ伏せに寝そべり足をパタパタとする。対するクラウドは狐につままれたような顔で、厳密には使用用途の異なる商品を手に躊躇っていた。

(なんでこんなに乗り気なんだろう...)

目の前に横たわるティファは腰周りにバスタオルをかけてはいれど、パジャマにしているショートパンツ以外を脱ぎ去り髪まで結い上げている周到さである。当然「変なことしないでよね!」と釘は刺されたが、艶やかな背中やベッドとの間に押しつぶされている胸がタオルの隙間から覗き居たたまれずに視線が泳ぐ。

「クラウド?」

不審そうに振り返られ、意を決した。どうせ今更ありのままの事実を伝え直す勇気もないのだから。勝手などわからないが、粘度の高い液体を適当に塗りたくり背中に手を滑らせる。

「痛くないか?」
「全然痛くない。もっと強くてもいいかも」

(ここら辺、なんだよな?)

遠い昔、母親の肩を揉んでやった記憶を思い返し、首回りの固く凝った箇所や背筋をほぐしてやる。

「気持ちいい、極楽~」
「昔ね、エアリスとユフィとも行ったことあるの。大きな街で、三人ともクタクタの時に...」

話を聞いているとティファの行動が腑に落ちていく。どうやらこれは女性にとって疲労回復に効果抜群で、ご褒美感覚で味わう極上の娯楽であるらしい。愛してやまないお茶の時間も忘れるくらいに。ならばと腕まくりをし、筋肉の張っている箇所を徹底的に探り出し指先に力を込めた。

「ん~、寝ちゃいそ...」
「別にいいぞ。寝てる間にタコみたいに柔らかくしといてやる」

「ふふ」と笑い声が漏れると同時に少しだけ緊張をしていた身体から更に力が抜けていった。上半身を終えふくらはぎを揉みほぐし、タオルで覆われた太ももに両手を滑り込ませた時だった。

「ひゃっ!」
「あ、悪い...嫌だったか?」
「ううん。ありがと、クラウド。もう十分」

シーツを汚さないよう下に敷いていたタオルで前を隠し、ティファは半身を起こす。

「なんか...」  

眠りかけていたのかトロンとした目をしたティファは右手のひらを頬に当て、ハァ...と息を吐く。頬は赤く瞳は潤んでいて、かつ胸を布で覆っただけの無防備な姿にドキリとなった。だが続いた台詞にサッと血の気が引く。

「カッカする、これ...」

1/3ほど中身を減らした容器の裏に書かれた小さな文字に恐る恐る視線を走らせる。確かに液体に触れている自分の手もピリピリと違和感を覚え始めていた。そして見慣れない成分表示の羅列の中程に驚くべき物質を発見する。

.........興奮剤...

「ティファ!ごめん!!」
「え?」
「あの...えっと、違うんだ...実はコレ...」  

しどろもどろになりつつも、洗いざらい真実を明かす。

「でも誤解しないでくれ。無理矢理渡されただけで、決して自分で買ったんじゃ...いや、そんなことよりすぐに拭き取るから...!」

あたふたとするクラウドに対し、男女の間でこういった道具を使用することがある事実に驚きながらもティファが気を害した素ぶりはなく、気遣うような笑顔さえ浮かんでいた。

「そんな平謝りしなくても。クラウド、別に知らなかったんでしょ?」
「そうだけど...結果的にティファに変なもの塗りたくったわけだし...」
「体に害があるものでもないんだよね?」

確かに先刻までの行為に悪気は一切ない。そこにきて初めて自らの深層心理に気づかされる。

「すぐに処分していなくて...」  

恋人が性に対してもう少し奔放だったらと往生際の悪かった自分を責める。未練がましく手元に残したりして。

「使ってみたいの?」
「あ、いや...」
「別に構わないけど...」

無邪気に傾げられた首をまじまじと見つめる。よっぽどへんてこな顔をしたまま止まっていたのだろうか。二人の間で静まり返った空気を次に割ったのはティファだった。

「えっ、え?私、変なこと言ってる!?」

その両肩をガシっと掴み、目を剥き思いの丈を端的に伝えた。

「変じゃない」





後編に続きます。



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