Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Healin' you
旧拍手。本編、戦闘後の一時です。
Healin' you
黄と緑の混ざり合う幻想的な光に照らされ、ティファはここ最近抱えていた小さな疑問への回答に声を上げて笑う。それを見てクラウドも口元を緩めおどけた風に肩をすくめた。
「そんなことがあったのね」
そう驚きつつも、改めて考えると確かにシドやバレットなら言い出しかねないかもしれない。
エアリスを主軸にしていた戦闘での回復は、最近は全員で分担していた。だがその作戦は一部の不評を買い、すぐに変更される事となる。
“何が悲しくて野郎なんかに回復されなきゃなんねぇんだよ...”
他にもナナキは爪が当たって痛いだとか思うままに難癖を付けられ、復帰後まもないリーダーはそれとなく女性二人を回復役に固定する。もっとも、地味だとかサポートは柄じゃないと不平を零し、新しく手に入ったマテリアにばかり興味津々なもう一人せいで、片方の回復マテリアは別メンバーに割り当てられがちだが...
「...怒ったか?」
下心とまでは言わないまでも、その男性本位な事情を内緒にしていた事に、クラウドはばつが悪そうにティファの顔色を伺う。ティファはその生真面目な様を心の中で笑い、まだ完全に治っていない腕の傷に手を当て集中し直す。
「別に?ちょっと呆れちゃうけど」
そういうものなのかしら?これだけ長い間寝食を共にしている仲間達だというのに、思いも寄らない事を考えているものだとティファは感心する。
しかし目の前の光が一番に連想させる人物を思い起こせば、確かに自分も彼女の高い魔力以上に、共に添えられた特有の声や笑顔、何より向けられた想いに最も癒されていたのかもしれなかった。ライフストリームの放出であるせいか、その神秘的な光は術者の感情をほのかに纏(まと)い、施される者に染み込んでいく。
「俺も、最初は馬鹿にしてたんだけど...」
そこで光を発する手を見つめ黙り込むクラウドに、ティファは急にその箇所から伝わる温度を意識して居心地が悪くなる。変なところで止めないでよ!
「おい、ティファ。なんか上手くいってないぞ」
「わ、わかってるってば!」
平静を装おうと努めるも、言う事を聞かずに狂う手元が恨めしかった。触れている部分を通して動揺が伝わらないかとティファは焦る。
「まぁ、いいけどさ...ゆっくりで」
...赤くならないでよ。元々マテリアの扱いに長けていない彼女の回復魔法は益々調子を乱した。
だけど決まり悪く逸らされたすぐそこの横顔に、切に願う。決して上手ではないかもしれないけれど、彼が傷を負った時、こうして側でそれを癒すのが今後も...出来たらずっと、自分でありますように...
ようやく塞がった傷口に、クラウドは下ろしていた腰をゆっくりと持ち上げる。
「ありがとう。...また頼むよ」
簡潔な礼にボソっと付け足された一言に、ティファは思わず顔を上げた。そして既に目的地へと体を向けた背中に僅かに頷き返す。
その小さな体温は、旅を再開した後も、しばらくの間そこに優しく灯り続けた。
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ヴィンセント「...私も隣にいるのだが」
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